2017年02月11日

暗示的知識と明示的知識の定義


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implicit knowledge(tacit knowledge, intuitive knowledge)は「暗示的知識(暗黙の知識、直観的知識)」と訳されます。

explicit knowledge(明示的知識)に対する用語です。

その定義を、Jack C. Richards & Richard Schmidt, Longman dictionary of language teaching and applied linguistics(Pearson, 2010, p.274)より備忘のため書き留めておきます。

なお、訳文は高橋貞雄・山崎真稔・小田眞幸・松本博文 訳『ロングマン言語教育・応用言語学辞典』(南雲堂、2013年、p.220)によります。


knowledge that people can be shown (by their behaviour, their judgements about grammaticality, and so forth) to possess intuitively, but which they are unable to articulate. Implicit knowledge is constracted with explicit knowledge, which is verbalizable.

For example, native speakers of English intuitively know the regularities of article use (when to use the definite, indefinite, or zero article), but they are usually unable to say what any of those principles are. Foreign language learners of Englis, on the other hand, may have quite a lot of explicit knowledge about the rules for using English articles, while their unmonitored production may reveal that this explicit knowledge has not been internalized.


人が(その行動や文法性についての判断などによって)直観的に所有していると示すことができるが、それを口に出して説明することのできない知識。暗示的知識は、言葉で言うことのできる明示的知識(explicit knowledge)と対比される。たとえば、英語の母語話者は冠詞の使い方の規則性(定冠詞、不定冠詞、無冠詞をいつ使うか)について直観的に知っているが、その原理が何であるかについて通常は言うことができない。一方、英語の外国語の学習者は、英語冠詞の使用法の規則について明示的な知識を持っていても、指導を受けない状態での発話には、明示的な知識が内在化されていない(定着していない)場合が見られる。



(追記)

以上のほか、いわゆる第二言語習得研究の成果を網羅したハンドブックである The Study of Second Language Acquisition(Oxford, 2008, p.418)において、Rod Ellis は、

implicit knowledge について、

intuitive, procedual, systematically variable, automatic, available for use in fluent, unplanned language use

なものとし、

explicit knowledge について、

conscious, declarative, anomalous, inconsistent (ie. it takes the form of 'fuzzy' rules inconsistently applied), generally only accessible through controlled processing in planned language use

なものとしています。


posted by 石崎 陽一 at 22:07 | Comment(0) | 文法の学習・指導 | 更新情報をチェックする

英語教育における英語史の効用




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英語教育における英語史の効用について、Norbert Schmitt & Richard Marsden, Why Is English Like That?:Historical answers to hard ELT questions(The University of Michigan Press, 2006, p.D)より備忘のため書き留めておきます。


Perhaps you have found yourself confronted by awkward questions from your students such as:

● Why is night spelled with gh?
(中略)
● Why does English have so many synonyms like intelligent, clever, astute, and bright?

You may have found yourself at a loss for satisfactory responses, and you may have had to provide vague answers, such as "That's just the way it is." Luckily, there are historical answers to these questions.(中略)

We believe students long for good explanations for these quirks and exceptions [= the quirks and exceptions in English that can be explained on a historical basis] and appreciate it if you can give them concrete reasons for their existence. Pedagogically, the explanations are not guaranteed to help your students learn English any faster, but at a minimum, we feel that they can help alleviate their frustration with some of the seemingly unreasonable aspects of the language, and, as a result, maintain their motivation and interest. At best, the explanations may help your students to a more informed understanding of the English system and may actually facilitate their learning.



(追記)

渡部昇一・江藤裕之・平岡弘章『グローバル・エリート教育』(PHP研究所、2016年、pp.115-20)所収、特別鼎談〈教育・留学の意味を考える〉より、平岡弘章先生(清風中学校・高等学校副校長)の御発言を引きます。


アメリカで英語をネイティブに習っていたときのことです。

常々疑問に思っていたことがあり、ネイティブに尋ねてみました。

(中略)

すると、彼は半ばあきれたようにこう答えました。

「君は大きな間違いをしているようだ。今なら間に合うよ。幸い君はアメリカに来たばかりだし、そんなバカな考えは早く忘れてしまいなさい」。さらにこう続けました。「どうして空は青いんだい?」両腕をしかたなさそうに広げながら、「同じことだよ。説明なんてできない」。そう言って話は終わりました。

アメリカ滞在中にほかのネイティブにもいくどか同じ質問をしてみましたが、答えはほとんど同じでした。

冗談じゃない。日本で自分の専門分野で飯を食っている者が、その説明として「空は青いから青い」と片づけてしまえば、たちまちその職を失うことになるだろう。私の抱く疑問はそんなにおかしなものだろうか……。

(中略)

私にしてみれば、英語をより理解するためには、丸暗記でなく、少しでもネイティブに近い感覚で言葉の持つニュアンスをつかむことが必要だと考えていたからです。

(中略)

今の日本の社会で英語を習得するには、その英語を教える側の人間がよく理解し、その理解を深く噛み砕いて与えること。(中略)

教える側が英語をよく勉強していることこそが、日本の英語教育の要となります。(中略)あますところなく分析し、勉強し、自信を持って教えるべきです。(中略)

生徒が疑問に思ったこと、興味を持ったことに真摯に向きあい、それに応え、理解と興味を持たせるのが、教師の大きな役割だと思うのです。



posted by 石崎 陽一 at 20:33 | Comment(0) | 英語史的な説明 | 更新情報をチェックする

2017年02月10日

「自発使役」の意味を表す make


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make には「ある事柄が原因となって、別の事柄が自発的に(自然に)生じる」という意味を表す使い方があります。

このようないわゆる「自発使役」の用法について、久野ワ・高見健一『謎解きの英文法 使役』(くろしお出版、2014年、pp.3, 9-11)は次のような諺をはじめ、典型例をいくつか提示しています。


Absence makes the heart grow fonder.(離れていると愛情がかえって増すものだ)

Love makes the world go round.(愛は世界を動かす、この世を動かしているのは愛である)

You just sit down here and have a nice cup of coffee. It'll make you feel better.(まあここに座って美味しいコーヒーでも飲みなさい。気分がよくなりますよ)



なお、ここで言う「自発」は文法用語で


そうしようとは思わないのに、自然にそうなる/自然に起こる」という意味(p.189)


だと注記しています。


posted by 石崎 陽一 at 20:33 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

1つのセンテンスの長さ


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豊田昌倫・堀正広・今林 編著『英語のスタイル − 教えるための文体論入門』所収、富岡龍明「英作文とスタイル」(p.213)より備忘のため書き留めておきます。


ある調査・研究によると、英文の1つのセンテンスの長さは歴史的にだんだん短くなってきているとのことです。1つのセンテンスの長さは、16 世紀のエリザベス朝の頃は約 45 words, 19 世紀のビクトリア朝の頃は約 29 words, 現代では 17 〜 20 words 程度であり、明らかに短文化・簡潔化が進んでいる状況です。時代が進むにつれて、装飾的な回りくどい表現を避けて、簡略で無駄をそぎ落とした文章構成が尊ばれるようになってきていると言えます。


posted by 石崎 陽一 at 19:54 | Comment(0) | 作文の学習・指導 | 更新情報をチェックする

「ことばに対する畏敬の念」をもつ大切さ


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鳥飼久美子『話すための英語力』(講談社現代新書、2017年、pp.220-1)より備忘のため書き留めておきます。


英語に、sense of wonder という言葉があります。自然などの対象に触れることで受ける、ある種の不思議な感動を表現する概念です。環境汚染に警鐘を鳴らした『沈黙の春』の著者レイチェル・カーソン(Rachel Carson)の遺作 The Sense of Wonder で知られるようになった言葉で、すべての子供が生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」(神秘さや不思議さに目を見はる感性)を、いつまでも失わないで欲しいという、カーソンの願いがこめられています。

邦訳のタイトルがどうなっているか調べたら『センス・オブ・ワンダー』と単純にカタカナになっていたので、日本語に訳しようがなかったのかもしれませんが、私はあえて「畏敬の念」という日本語を使いたいと思います。そして、レイチェル・カーソンが自然について語った sense of wonder を、言語について使い、「ことばに対する畏敬の念」の大切さを語りたい。言語についての神秘さや不思議さに感動する感性があって初めて、外国語学習が実りあるものになると信じているからです。



posted by 石崎 陽一 at 19:41 | Comment(0) | 教師論・学習指導・進路指導 | 更新情報をチェックする

「−させる」が表す四つの用法


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高見健一『受身と使役 − その意味規則を探る』(開拓社、2011年)より備忘のため書き留めておきます。(下線は原文のママ。)


その社会的、人間的関係から、お互いにさまざまな事柄を指示したり、依頼したりできる一定の社会習慣的な制御力(コントロールできる力)(pp.201-2)


被使役主が人間の have 使役文は、使役主と被使役主の関係が、教師と学生、受付係とベルボーイ、ファッション・フォトグラファーとモデル、医者と患者、上司と秘書、親と子供、コーチと選手、ホストとお客、監督と俳優、夫と妻、友達同士、秘書と教授のように、使役主が被使役主に対して一定の社会習慣的な制御力を持ち、被使役主に指示・依頼さえすれば、被使役主が当該の事象を「抵抗」なく行う場合に用いられる(p.203)


(追記)

『上掲書』(pp.182-3)では、日本語の「−させる」を、強制の場合は make, 説得の場合は get, 指示の場合は have, 許容・放任の場合は let と、四つに区別し一覧表にまとめています。

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なお、上の表で示された用法は

使役主が被使役主に強制したり、説得したり、指示したり、許容したりして被使役事象が生じることから分かるように、被使役主が人間に当てはまる用法

であると述べています。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年02月08日

教科書コレクション画像データベースの公開画像の拡張


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広島大学図書館にて教科書コレクション画像データベースの公開画像の拡張がなされています。


広島大学図書館教科書コレクション画像データベース

広島大学図書館教科書コレクション画像データベース解題一覧


posted by 石崎 陽一 at 19:11 | Comment(0) | 愛用の(学習用)サイト | 更新情報をチェックする

2017年02月06日

大学での講義終わる


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先日、無事に今年度も上智大学での講義をすべて終えました。

現在は成績をぼちぼちつけ始めています。


一昨年より高校教育を一歩「外」から眺めるという何とも貴重な経験をさせていただいてます。

私自身、自分のやってきたことを振り返り、これまで気が付かなかった視点に気が付いたことが少なからずありました。

「教えるとは学ぶこと」というのはよく言ったものですねぇ…。

教える前提に立つと意識が変わると改めて実感しました。

受講生から直接・間接に教わることが多かったです。

それらを日常の教育に活かしていければと思います。


最終回に総括のコメントを受講生に書いてもらいました。

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posted by 石崎 陽一 at 22:47 | Comment(0) | 近況報告・雑感 | 更新情報をチェックする

2017年02月05日

第23回TK関東支部勉強会 参加者の方々のご感想


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標題の勉強会にて「文法指導に際して気をつけたい(と私が考えて、実践している)こと」と題する講演を、東京だけでなく、佐賀、大阪、愛知、神奈川、埼玉、山梨、群馬、福島からお越しになられた国公立校・私立校の先生方約77名を前に東京にて実施しました。

お話ししてよかったと思える感想をたくさんいただきました。ありがたいことです。


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posted by 石崎 陽一 at 18:38 | Comment(0) | 嬉しかったこと、悲しかったこと | 更新情報をチェックする

in turn の使い方のひとつ


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in turn には次のような使い方があります。


I explained to Susumu in English; he in turn explained to Aiko in Japanese.(私が進に英語で説明し、今度は彼が愛子に日本語で説明した)



この場合、in turn は「AがBをもたらし、今度はBがCをもたらす」のような関係を表しています。


この使われ方の in turn が、次のように、関係詞節内に含まれる場合があります。


The moon goes around the earth, which, in turn, goes around the sun.(月は地球の周りを回り、その地球が今度は太陽の周りを回っている)


この場合について、河野継代『英語の関係節』(開拓社、2012年、p.27-9)は


in turn には、先行文脈で述べられた命題内容を受けて、それとは別の独立の命題内容を述べる際に用いる「それがまた」といった意味の用法がある。この意味の in turn は、二つ(以上)の互いに独立した命題が等位関係にあるような構造で用いられるのが普通である。


と述べたのち、次のほか、実例をいくつか挙げています。


In one weather-related accident, a car hit the tree, which in turn knocked down some power lines and temporarily closed Donlon Road near Somis.(天候に関連したある事故では、車が木にぶつかり、ぶつかった木によって電線が切断され、ソミス近くのドンロン街道は一時的に通行不能となった)


(追記)

第一例は『アンカーコズミカ英和辞典』(学習研究社、2008年、p.1995)より、第二例は『ウィズダム英和辞典 第3版』(三省堂、2013年、p.2042)より、それぞれ採らせていただきました。


posted by 石崎 陽一 at 13:37 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
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