2017年03月29日

made of と made from の意味的分化の萠芽


P3131705.jpg



たとえば

This table is made of oak.

の of と

Wine is made from grapes.

の from とは対照的に考えられていますが、


大塚高信『英文法ノート』(泰文堂、1948年)は


of は off の weak form であり、off は分離の意味を示す語であるから、of もその意味を有つて居る。卽ち、現代英語だと 'from' に相當するのである(pp.58-9)

of の原義が 'from' であるのであるから、これら二つに意味の相違が出來たのは習慣上のことである(p.59)


と喝破し、John Milton(1608-74)のものしたラテン文典(1669年出版)に

made of と made from の意味的分化の萠芽

が認められると指摘しています。


posted by 石崎 陽一 at 19:47 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年03月26日

イギリス英語における、直説法による仮定法現在の代用


omd5036c.jpg



(a)I insisted that he change his clothes.

(b)I insisted that he changed his clothes.


この2つの例文を挙げ、Quirk et al., A Comprehensive Grammar of the English Language(Longman, 1985, p.1015)は


insist を request の意味で用いる場合は後続の that 節内では仮定法現在を、

insist を assert の意味で用いる場合は直説法を用いる



と説明しています。

((b)は事実を主張するのですから、直説法を用いるのはごく自然です。)


ところが、その上で、次のような但し書きを付しているのが注目に値します。

曰く、如上の説明から


that 節内で仮定法現在の使われている(a)において insist が request の意で用いられているのは明らかだけれども、

that 節内で直説法の使われている(b)においてもまた、insist が request の意で用いられている可能性が半分はある



というのです。



sdim0368.jpg



このように、『上掲書』(p.1182)は

insist に限らず、suggest, propose, recommend などの説得動詞(suasive verbs)に後続する that 節内で直説法の動詞が用いられる場合

を認め、

それは主にイギリス英語に限られる

と述べています。

つまり、冒頭に掲げた


(b)I insisted that he changed his clothes.


という、後続する that 節内に直説法を用いた文においても insist が request の意となり得るのは、

特にイギリス英語においてのことである

ということなのですね。

実際、Geoffrey Leech, Marianne Hundt, Christian Mair, and Nicholas Smith, Change in Contemporary English: A Grammatical Study(CUP, 2009)は


the indicative after suasive expressions is indeed a syntactic Briticism(p.57)


であり、


In spoken English, the indicative is used much more frequently than the subjunctive, whereas in written BrE, it is the least frequent alternative.(p.56)


であると指摘しています。(下線部は現筆者による。)


したがって、

説得動詞(suasive verbs)に後続する that 節には直説法の動詞は使用されない

かの如く述べることは控えたほうがよいと思われます。



xt1a8066.jpg



(追記1)

R.A. Close, A Reference Grammar for Students of English(Longman, 1975, p.47)は imagined action in the future を表す動詞として propose と recommend を取り上げて


(a)We propose[recommend]that Mr X should go.

(b)We propose[recommend]that Mr X goes.

(c)We propose[recommend]that Mr X go.


(a)We propose[recommend]that Mr X should be dismissed.

(b)We propose[recommend]that Mr X is dismissed.

(c)We propose[recommend]that Mr X be dismissed.


という3対の例文を挙げ、(a)は formal, (b)は informal, (c)は formal and typical of official style だと考えられると記しています。

綿貫陽・マーク・F・ピーターセン『表現のための実践ロイヤル英文法』(旺文社、2006年、p.204)は

(b)に相当する言い方について、「くだけた言い方」以外、とりわけ「書くときは避けたほうが無難」と指南しています。


(追記2)

B.D. Graver, Advanced English Practice(OUP, 1986)の第3版は

should in noun clauses after suggest, recommend, etc.

という項目を立て

Should is often used in a 'that' clause, after the verbs like suggest, recommend, require, decide, etc.

Should is sometimes omitted in such sentences, leaving only the infinitive without to.

The verb form is then sometimes 'regularized' to give the 'normal' sequence of tenses.

と指摘しています。

特に、上の2つ目の点において、「should が省略されて動詞の原形が残ることがある」という言い方がなされているのに目を引かれました。


(追記3)

(a)We insist that Marsha tell the truth.

(b)We insist that Marsha tells the truth.

(c)We insist that Marsha must tell the truth.

Lynn M. Berk, English Syntax(OUP, 1999, pp.149-50)は上の3つの文を挙げ、

(b)も(c)も伝える意味は(a)と変わらないが、この2つは subjunctive utterances ではなく、directives(指示)である

旨のコメントをしています。

なお、小西友七 編『現代英語語法辞典』(三省堂、2006年、p.636)には insisted に後続する that 節において must が用いられた例とともに「命令的な意味を表す will」が時制の一致を起こした例を挙げています。


(追記4)

Huddleston and G.K.Pullum, The Cambridge Grammar of the English Language(CUP, 2002, p.996)は

ambiguity between mandative and non-mandative clauses

という項目を立てています。


(追記5)

『詳説レクシスプラネットボード』(旺文社、2004年、pp.144-5)に興味深い統計データと分析が掲載されています。


(追記6)

Geoffrey Leech, Marianne Hundt, Christian Mair, and Nicholas Smith, Change in Contemporary English: A Grammatical Study(CUP, 2009, pp.51-70)で詳述されています。

ちなみに、本記事のタイトルは同書(p.54)の

Another variant, namely the indicative (e.g. I recommend that she uses fewer passives), is really only an alternative in BrE.

という記述から採りました。


(追記7)

千葉修司『英語の仮定法 − 仮定法現在を中心に −』(開拓社、2013、pp.19-20, 224-8)にも詳述があります。


(追記8)

「説得動詞(suasive verbs)に後続する that 節には直説法の動詞は使用されない」との誤解を招きやすい記述を有する書籍には、たとえば、友繁義典『英語の意味を極めるU − 動詞・前置詞編 −』(開拓社、2016年、pp.24-5)があります。


(追記9)

小西友七 編『現代英語語法辞典』(三省堂、2006年、p.636)は

(a)I insisted that he should stay in bed.

(b)I insisted that he stay in bed.

(c)I insisted that he stays in bed.

(d)I insisted that he stayed in bed.

という4例を挙げ、(a)の should stay は英米ともに堅い表現、(b)の stay は英米ともにくだけた表現、(c)の stay は英国のくだけた表現であり、(d)は過去のアリバイを主張していると説明しています。


(追記10)

Bergen Evans and Cornelia Evans, A Dictionary of Contemporary American Usage(Random House, 1957, p.484)より引いておきます。

In the United States the present subjunctive is almost always used here, as in I suggested he take it with him, we insisted that she get to work on time, it is imperative that he know the truth. In Great Britain this use of the present subjunctive is considered "pedantic." Englishmen prefer to use the auxiliary should as in I suggested he should take it with him. In the United States the simple subjunctive is the form used most often in natural speech. The construction with should appears too, but is felt to be "bookish" or "British."


(追記11)

稲田俊明『〈新英文法選書3〉補文の構造』(大修館書店、1993年、p.147)より引いておきます。

アメリカ英語で義務の仮定法が使われるところで、イギリス英語では直説法が使われる傾向がある(ただし be 動詞はイギリス英語でも直説法は避けられる)。

なお、「義務の仮定法」とは mandative subjunctive の同書における訳です。

ちなみに、柏野健次 編著『英語語法レファレンス』(三省堂、2010年、p.283)は「命令を表す仮定法」としています。


posted by 石崎 陽一 at 12:10 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

いまは廃用となった say の不定詞付き対格(accusative with infinitive)の用法


5d3_2159s.jpg



安藤貞雄『現代英文法講義』(開拓社、2005年、p.358)は


John is said to be a millionaire.


という英文は


* People say John to be a millionaire.


という「現在ではすたれている」構文に対応する受動文であると指摘し

Christopher Marlowe が手がけたローマ詩人 Ovid の Amores の翻訳より


This thou wilt say to be a worthy ground.
(これこそは立派な分野だ、あなたは言うだろう)



という例を挙げ、

これはラテン語法(Latinism)でいまは廃用であるとする OED 第二版のコメントを付しています。


posted by 石崎 陽一 at 10:41 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年03月25日

事実ではなく「想念」を表す動詞のモード:仮定法現在


xt1a0003.jpg



まず最初に、「仮定法」という用語について確認しておきましょう。


仮定法は subjunctive mood を訳したものですが、少し前の文法書では subjunctive mode という用語も用いられていました。

この mode(やり方、方法)という語は日本語でもモードというカタカナ書きで使われるようになりました。

例えば、この記事を書いているパソコンには文字の入力モードがいくつかあります。

ひらがな入力モードや半角英数入力モードなどです。

またエアコンなどには消費電力を節約するための、プリンターにはインクを節約するためのエコノミーモードがついています。

入試を控えた中高生は受験モードに入っています。

こんな具合に、です。

いずれも普通とは違う「使い方」ですけれども、仮定法もこれと同じと考えてください。

すなわち、事実を事実として述べる普通の表現方法(直説法)とは異なり、

仮定法とは「頭の中のこと」「想念」を述べるのに用いるモード(動詞の形)ということなのですね。



わかった!.gif



I insist that she leave at once.


Talmy Givón, English Grammar: A Function-Based Introduction, Volume U(John Benjyamins, 1993, p.275)より拝借した上の例文、

she という主語に対して leave という動詞の原形がきていても誤りではありません。

これはこの文全体の動詞が insist(求める)であり、この動詞に続く中身の部分(that 以下の内容)は要求した時点ではまだ現実になっておりません。

すなわち、要求内容というのは「事実」ではなく、「想念」である。

そのことを文法上で示すために用いられているのが leave という動詞の原形であり、このような動詞の原形の使い方を仮定法現在と呼んでいます。

このように、英語では、モード切替によって、すなわち、動詞の形を通して、気持ちの機微を伝えることができるというわけですね。


英語を聞くとき、読むとき、仮定法がわかれば、話し手の気持ちが実感をもって理解できます。

英語を話すとき、書くとき、仮定法が使えれば、自分の気持ちを正確に伝えることができます。

学んだことを、ぜひ実践でも利用してみてください。


それでは、また。


(追記)

たとえば Bergen Evans and Cornelia Evans, A Dictionary of Contemporary American Usage(Random House, 1957, pp.483-6)が subjunctive mode という項目を立てて英語における「法」を解説しています。


posted by 石崎 陽一 at 16:11 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年03月20日

hundreds of … の指すものの数


xt1a0320.jpg



『研究社 英語の数量表現辞典 増補改訂版』(研究社、2007年、p.23)より備忘のため書き留めておきます。


英語では 1600 を sixteen hundred と表現することがあるので hundreds of … の指すものの数が 1000 を超えることもある。thousands of … は数万程度まで、millions of … も数千万程度まで含みうる。また、桁にとらわれず漠然と「莫大な数の」の意味でこれらの表現を使うこともある。


(追記)

『上掲書』には tens of, hundreds of, thousands of, tens of thousands of, hundreds of thousands of, millions of, tens of millions of, hundreds of millions of, billions of など漠然とした大きな数が一覧になっており便利です。


posted by 石崎 陽一 at 16:04 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

関係副詞の非制限用法で、why や how を用いたいとき


dscf1295.jpg



安井稔『英文法総覧』(初版;開拓社、1982年、p.135)が


関係副詞の非制限用法は、when と where に限られるが、why や how を用いたいときには、for which reason, in which などをもって代用させる


と指摘していてハッとしました。


posted by 石崎 陽一 at 15:57 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年03月18日

電子化された『古事類苑』


キャプチャ.JPG
(クリックすると拡大します)



国際日本文化研究センターによれば、『古事類苑』とは

明治政府の一大プロジェクトとして明治12年(1879)に編纂がはじまり、明治29年(1896)から大正3年(1914)にかけて出版された、本文1,000巻、和装本で350冊、洋装本で51冊、総ページ数は67,000ページ以上、見出し数は40,354項目におよぶ大百科事典

であり、

ここには、前近代の文化概念について、明治以前のあらゆる文献からの引用が掲載されており、日本文化を理解するうえでたいへん有用な事典

です。


近年では電子化が進み、同センターが

古事類苑全文データベース

古事類苑ページ検索システム

を公開しています。


なお、冒頭の写真は国文学研究資料館の公開している

古事類苑データベース

です。


(追記)

渡部昇一・谷沢永一『読書連弾』(大修館書店、1979年)から『古事類苑』に関する渡部先生の御発言を書き留めておきます。

知識の宝庫として百科事典というのは物を書く人にとっても、単に知らないことを調べるんじゃなくてスプリングボードになるんじゃないかなと考えたことがありました。(pp.95-6)

古い百科事典というとみなバカにするし、百科事典的知識というのは今は恥ですね。ところが、案外知られていないけれどもいい百科事典というのは大変便利です。(中略)百科事典というのは素朴進化論的に新しければいいものだという迷信が一般になっているんですね。(p.96)

私も大学在学中も、それ以後も『古事類苑』を教えてくれる人には一人も逢わなかった。結局知るようになったものの、誰もほめる人がなかった。今価値が認められて再版も出てますが。やっぱり昔流の国学者の集め方というのは素朴なものですが、それだけに使い道はあるんでしょう。(p.98)


posted by 石崎 陽一 at 16:38 | Comment(0) | 愛用の(学習用)サイト | 更新情報をチェックする

視覚は精神活動に直結する?


xt2a6067.jpg



話の内容が理解できないとき、日本語では「話が見えない」と言いますね。

英語には I see. という言い方があります。

いずれも「見る」即ち「わかる」ということであり、視覚が精神活動に直結している例と言えそうです。

興味深いと思いました。


posted by 石崎 陽一 at 16:05 | Comment(0) | 興味をもったこと | 更新情報をチェックする

2017年03月16日

pasta と paste



発音がまるで違うために同じ語源だと気づかない単語のセットがたまにあります。


たとえば、pasta と paste もそのようなペアです。



pasta.jpg
(retrieved from: https://goo.gl/fgtW3T



pasta(パスタ)はイタリア料理に使う麺類の総称です。


スパゲッティ・ペンネ・マカロニ・ラビオリ・ラザニアなど種類が豊富ですけれども、

小麦粉の練り物という共通点があります。



paste.jpg
(retrieved from: https://goo.gl/8HcjNm



一方、paste(ペースト)は粉状のものを練り上げたり、肉や内臓、野菜などを煮てすりつぶし、のり状に練ったりして作った食品を指す語です。


paste と pasta はどちらもギリシャ語で大麦のポリッジ(barley porridge)を意味する pastá に由来しますが、

いずれも「結果」に着目した語であると言うことができるでしょう。


(なお、ポリッジ(porridge)とは、大麦やオートミールを水やミルクで煮て作るお粥です。)



Barley-porridge.jpg
(retrieved from: https://goo.gl/FgqIBT


(追記1)

レバーなどに香辛料を加えてペースト状にしたパテ(pâté)や、焼き菓子の総称として用いるペーストリー(pastry)も同語源です。


(追記2)

本記事の執筆にあたり、以下の文献を参照しました。

『明鏡国語辞典 第二版』(大修館書店、2010年)
『旺文社 詳解国語辞典』(旺文社、1985年)
『英語語源辞典(縮刷版)』(研究社、1999年)


posted by 石崎 陽一 at 21:36 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2017年03月15日

many / most of the students の違い


IMG_2000.jpg



many と most の違いについて、友繁義典『英語の意味を極めるT − 名詞・形容詞・副詞編 −』(開拓社、2016年、pp.43-4)は次の例を挙げて説明しています。


(a)Many of the students passed the exam.

(b)Most of the students passed the exam.


たとえば、ある先生が難しい試験を100人の学生に課したとします。

この先生は30人程度が合格すればよいところであると考えていたとします。

しかし、その予想に反して45人が合格したとすれば(a)のように言えます。

一方、95人が試験に合格した事実をそのまま伝えるには(b)のように言います。


このように、

most は全体の中で占める比率が過半数(大部分)だと客観的に述べる場合に用いる

のに対し、

どれだけの比率なら many と言い得るかについては、話し手の主観的な見方も交えて文脈によって異なる

と説いて明快です。


(追記)

関連記事はこちら。

a few について(その1)


posted by 石崎 陽一 at 17:05 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
ページトップへ戻る