2017年02月12日

母語がすべての基本


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井上ひさし『井上ひさしの読書眼鏡』(中央公論新社、2011年、pp.118-9)より備忘のため書き留めておきます。


オーストラリアの首都キャンベラの、ある公立中学校を見学したときのことですが、ちょうど数学の小試験の最中で、黒板には、「ピタゴラスの定理を文章で説明しなさい」と大書してありました。

先生に、数学というよりは英語の試験ですねとたずねると、答えはこうでした。

「母語としての英語がすべての基本ですからね、数学もじつは英語として教えているのですよ」

(中略)

のちにわかったのですが、この姿勢はたくさんの国に共通していました。母語を軽く扱っているのは、わたしたちの国くらいのものでしょう。



posted by 石崎 陽一 at 07:36 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2016年08月30日

英語を英語的に理解する上において英文和訳をどう考えたらよいか


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『現代英語教育講座 第六巻 英語の文法』(研究社、1965年)所収、江川泰一郎「基本語法(中学課程篇)」は


いわゆる日本語の訳語が、英語の語法の実態をつかみ、その意味を理解する上の障害になる例がよくある(p.95)


ために


われわれ教師は生徒が訳語にたよる危険にたえず注意を払ってやらなければならない(p.99)


とした上で、


現実的に考えれば、生徒は(教師の指導がどうあろうとも)多かれ少なかれ頭の中でつねに英文和訳をやっているのではなかろうか。われわれの生徒が日本語を生活語としている以上、彼らが日本語の訳語にたよるという現実を無視することはできない。無視するとすれば(中略)英和辞典の使用も禁ずるべきで、ついでに学校においても家庭においても、生徒が日本語を使うことを一切禁止するのがよい。

とにかく、英語を英語的に理解する上において、(中略)英文和訳をどう考えたらよいかを現実に即してもう少し研究すべきであると思う。
(p.99)


と主張しています。


posted by 石崎 陽一 at 09:33 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2015年11月16日

What is the general definition of old age?


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『英文精読術』(DHC、2015年)の「はじめに」において、行方昭夫氏は標題の英文を日本語に訳させることでその人の理解度を知ることができると述べ、

「理解は出来ても訳文が出来ない」などというのは、真の理解が出来ていない証拠です(p.B)

と一刀両断にしており爽快です。

世の中には標題の英文を「老いに関する一般的な考えは何だろうか」といった風に処理する単なる「置き換え」と「訳出」との区別をつけずに訳読の是非を述べる人が多いように思われます。


posted by 石崎 陽一 at 21:55 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2015年10月01日

語順と情報の軽重の問題


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英語の平叙文に普通な語順に関し、『現代英語学辞典』(成美堂、1973年、p.449)は次のように記しています。

備忘のため書き留めておきます。


発話の先頭に述べられる語には、必然的になにがしかの強調(emphasis)が置かれる。また文尾も聴者[読者]の期待の集まる点であるために強調の置かれる位置である。つうじょう、文の先頭に主語がくるのは一般的に見て文の主題である主語に、相対的な強調があるからである。しかし、話者の考えは述部において明瞭に表されるので、述部、とくに、文尾に主語以上の強調がくるのが普通である。


posted by 石崎 陽一 at 12:53 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2014年09月27日

チャンク


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チャンク(chunk)とは、記憶する人にとっての意味あるまとまりのことを言います。

アメリカの数理心理学者 George Miller が名付け親です。

私たちは、ウマという言葉を記憶するとき、ウとマを別々にせず、ウマを一つの単位として覚えます。

これが情報のチャンクです。

人間は知識をなんらかの塊として記憶していますが、この塊のことをチャンクと呼んでいるのですね。

−−−−−−

複数のチャンクを一つのチャンクにまとめることをチャンキング(chunking)と呼んでいます。

例えば、2.2360679 は、そのままでは8個の数字であり、8チャンクとして処理しなければなりません。

ところが、これを「富士山麓オウム鳴く」と読み替えることにより、4個の単語、すなわち4チャンクとして処理することが可能になります。

英文を理解する際、私たちは、単語という小さなチャンクを句という大きなチャンクにまとめ、句というチャンクをさらに大きな文というチャンクにまとめていると考えることができます。


(追記1)

本記事の執筆に際し、以下の文献を参照しました。

『岩波心理学小辞典』(岩波書店、1971年、pp.162-3)
『誠信 心理学辞典』(誠信書房、1981年、p.309)
『新版 心理学事典』(平凡社、1981年、p.183)
『多項目 心理学辞典』(教育出版、1991年、p.194)
『心理学辞典』(有斐閣、1999年、pp.581-2)

(追記2)

天満美智子・エリック・ベレント『やさしい英字新聞入門』(岩波ジュニア新書、pp.38-9)より引きます。

「魔法の数は7±2」(The Magical Number Seven, Plus or Minus Two)といって、人間が一度に区別して記憶できる量は7±2,つまり最大9、最小5、平均7であるといい、音、色、味などさまざまの感覚刺激に対しての記憶の量を証明しています。ことばの場合も、ほぼ7語くらいを単位にして、理解し記憶にとどめられるとしています。

7というのはあくまでも大まかな基本単位ですが、私たちの記憶が7±2の範囲だという考えは参考にしてよいと思います。



posted by 石崎 陽一 at 23:55 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2014年03月29日

テクストと談話、文章


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テクストと談話という二つの術語について、池上嘉彦『〈英文法〉を考える』(ちくま学芸文庫、1995年、pp.185-6)は次のように述べています。


具体的なコミュニケーションの場における言語使用というレベルに関わる概念であるという点では共通しているし、現実に一見たいした区別もなく用いられることも少なくない。歴史的に言うと、〈テクスト〉(text)の方はヨーロッパ系統の学者たち、〈談話〉の方はアメリカ系統の学者たちによって、いずれも〈文〉を超えたレベルの言語の問題を扱うという試みと結びついて用いられるようになったものである。日常語でのそれぞれの使われ方から来る連想という点からすると、〈テクスト〉の方は抽象的、一般的で、例えば目の前に置かれた一篇の書き物という印象を与える。それに対し、〈談話〉の方は具体的な対話者の存在を前提にして行われている会話という感じと結びつく。術語は、一般的、抽象的なのがよいという立場からすれば〈テクスト〉の方がまさっていると言えようが、一方〈談話〉の方も、このレベルでの言語運用の考察に欠かせない〈話し手〉〈聞き手〉の存在を典型的に意識させてくれる利点がある。(中略)

なお、術語としてもう一つ、国語学ではここで言う〈テクスト〉に相当するものに対して〈文章〉という用語を当てることがある。この場合の〈文章〉とは〈文〉の集まったもの、〈文〉と〈文〉がつながったもの、といった意味で用いられる。



posted by 石崎 陽一 at 21:05 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2013年11月30日

語の結びつき方の解釈


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実際の場合、語は決して単独に用いられるものではありません。

いつも他の語と何らかの関係において結びついています。

よって、文を正しく理解するためには、この結びつき方のもつ意味をはっきり知っていることが必要です。

ある言語において、語句の結びつき方の習慣を広く体系的に述べたものが文法ですから、

解釈にあたっても文法の知識が重要であることはいうまでもありませんが、

理解という立場から考えますと、

単なる文法の知識だけでは解決できないいろいろな問題にぶつかるわけですね。

ここでは語の結びつき方の解釈について、特に注意すべき場合を二、三挙げてみます。

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posted by 石崎 陽一 at 11:08 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2013年10月18日

未知語の推測法(前後関係を利用する)



高校2年も半ばを過ぎて語彙力も安定し始めたこの時期、
折に触れて未知語の推測法を授業で紹介しています。

教科書に登場する動詞について前後関係を利用するやり方を示したところ、今回も反応がよかったです^^

備忘のため、以下に概要を記しておきます。


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では早速ですが始めましょう。

唐突ですが、次の空所に入る行為をできるだけ多く挙げてみてください。


紅茶を(   )。


いかがでしょうか。


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2013年07月17日

未知語の推測法(対立関係を活用して)


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CROWN PLUS(level 3)の第12課に次の一節があります。(下線は現筆者による)

下線部の単語の意味がわからない場合、辞書が使えない環境だとしたら、

皆さんはどのようにして読み進めますでしょうか。


Some people might feel that sport, in general, is a rather primitive form of entertainment. Most sports involve 'hunting' actions, such as running and catching, throwing and hitting. These skills were useful hundreds or thousands of years ago, when people had to hunt animals to survive, but they are not very relevant to ordinary life now. Surely ― someone might say ― we can find a more civilized form of entertainment than this.


ここでは、下線部を含む文に見られる接続詞 but が前後の節を対立の関係で結んでいることは明らかです。

but の手前が大昔の事柄を述べ、but 以降で現在の事柄を述べている。

この関係に注目すれば、relevant は useful の意だと迫ることができますね。

単語力をつけることは大切ですが、世の中に存在するすべての英単語を覚えることは当然不可能です。

言い換えれば、英文を読み進める上で、必ず未知の単語に出会う可能性があるわけです。

知らない単語を見かけたらすぐに辞書を引くのではなく、

ふだんの学習から、未知語の推測に意識して取り組む必要があります。


posted by 石崎 陽一 at 21:15 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

未知語の推測法(語のもつ中核的なイメージを活用して)


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CROWN PLUS(level 3)の第12課に次の一節があります。(下線は現筆者による。)

下線部の意味はとれますか。


It is sometimes said that sport brings people together. If a town has a baseball team, for example, the people who live in that town have a shared interest and a common cause. They all hope their team will do well. When many nations take part in an international tournament or event, they also have a shared interest. In these ways, sport helps to unite people, helps them to get to know each other and work together successfully.

(中略)

The in-group view is certainly true ― sport does create an in-group. But this isn't the whole truth. Whenever there's an in-group, there must be an out-group too. If town A feel united around their baseball team, they will also feel that town B are rivals.



around が意外と曲者のように感じた人もいたのではないでしょうか。

このような場合、語のもつイメージを手がかりに、内容理解へと迫れる場合があります。

around という語は、典型的に


The moon revolves around the earth.
(月は地球のまわりを回る)



のように用いられますね。

このとき、中心に据えられているのは何でしょうか。

そうです。

地球ですね。

すなわち、『図解 英語基本語義辞典』が指摘するように、

around という語は


潜在的に中心点が意識されて


いるのです。

よって、


If town A feel united around their baseball team, they will also feel that town B are rivals.


という下線部は、


A町が地元の野球チームを中心に一体感を抱いているということは、B町は敵だと感じることにもなる。


というほどの意味に解釈できましょう。

このように、理屈が納得できるとその語の正体が腑に落ちるということはよくあります。

語の中核的なイメージをきちんとつかんでいれば、その語の持つ意味を、より簡単に覚えることができるのですね。


(追記1)

関連記事はこちらをクリック


(追記2)

本記事の執筆にあたり、『図解英語基本語義辞典』(桐原書店、1989年、p.40)を参照しました。


posted by 石崎 陽一 at 20:57 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2013年06月25日

初め漠然と、あとで詳しく


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英語には副詞(句)の同格表現とでも言えそうな言いまわしがあります。

例えば、


Where's Father?−He's out in the garden.
(「お父さんは?」「外の庭だよ」)



といった具合。

まずはともあれ家屋の内か外かを明示し、ついで外は外でも庭にいると付け足す。


「はじめ漠然と、あとで詳しく」


英語には、このように、「漠然➔詳細」の情報提示の仕方がよく見られ、ひとつの特色をなしています。

CROWNUの第4課に次の一節(下線現筆者)がありますが


Another person came up with this solution: put the paper on the surface of the Earth. Go around the Earth, moving a little each time so as to pass through the next row on each circle.


この下線部ははじめ漠然と「隣の列を」と述べ、ついで詳しく「それぞれの円上を」と付け足している。

「隣の列の円を一つ一つ」

と解釈することができます。


(試訳)

別の人は次のような解法を思いつきました。すなわち、この用紙を地球の表面に置く。地球を一周するが、隣の列の円を一つ一つ通るように毎回少しずつ動いていく。


(追記1)

なお、こうした英語の表現上の特色に関して、中島文雄先生が細江逸記先生の授業を次のように回想しておられます。

中島文雄『英語の時代に生きて』(研究社出版、1989年、pp.4-5)より引きます。


第三学年になると(中略)この篤学の細江先生(中略)の教導をうけることになった。New Taisyo Reader とかいう貧弱な教科書であったが先生は学識豊富で(中略)Over the sea in France, there once lived a great general whose name was Napoleon Bonaparte. の一節を明瞭に読んで聞かされ、Over the sea は「海の彼方に」in France は「フランスに」だが、日本語では「海の彼方のフランスに」と訳しなさい、海の彼方と言っているから書いている人が英国人であることが分かる云々。


(追記2)

出来成訓『日本英語教育史考』(東京法令出版、1994年、p.252)は

細江の使った New Taisyo Reader とは、東京外国語学校での恩師上條辰藏と同級生横地良吉の編集した New Taisyo REaders 全3巻(1914〔大正3〕年、育英書院)のことであろう。

と推定しています。


posted by 石崎 陽一 at 22:14 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2013年04月27日

事実と意見


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堺屋太一・鈴木孝夫・木下是雄・言語技術研究会『マニュアルはなぜわかりにくいのか−日本語と経済の情報摩擦』(毎日新聞社、1991年、pp.234, 236)より備忘のため書き留めておきます。


私[=木下是雄]と欧米流の言語技術教育との出会いは、一九七六年に同僚の化学者が米国から帰ってきて、お子さんが現地校で使っていた教科書を見せてくれたときである。パッとあけたページに、

ジョージ・ワシントンは米国の最も偉大な大統領であった。

ジョージ・ワシントンは米国の初代の大統領であった。

という二つの文がならび、「どちらの文が事実の記述か。もう一つの文にあるのはどんな意見か。事実と意見とはどうちがうか」と訊いてあった。そしてそのページの脇には、枠囲みにして次の注があった。

事実とは証拠をあげて裏付けすることのできるものである。

意見というのは何事かについてある人が下す判断である。ほかの人はその判断に同意するかもしれないし、同意しないかもしれない。

私はこれを見て衝撃を受けた。というのは、物理の専門誌の閲読者(投稿論文の審査員)としての長年の経験によって私は、日本人は論文の中でとかく「事実の記述」と「意見(自分の考え)」とを混同しがちなことを知っていたからである。私は、「こどもの時からの教育がちがうのだ」と膝をたたいた。(後略)

事実の記述と意見とを厳密に区別し、両者を全く別物として扱うことは、説明・論述文を書く上で最も基本的な心得だ。したがって、その後しらべたところによると米国では、事実と意見の読みわけ、書きわけが小学校から大学に至るまでの言語技術教育でくりかえし取り上げられている。



(追記1)

『上掲書』(p.237)によると、「文献を明示してその中の記述を正確に引用した場合には(たとえその記述の内容が誤っているとしても)事実の記述とされ」ます。

(追記2)

ケリー伊藤『使える英語へ−学校英語からの再出発』(研究社、1995年、p.75)より備忘のため書き留めておきます。

異なった内容と言えば、ある事実とそれに対するコメントも、英語的に見れば異なる視点の問題なので、日本語のように一緒にすることは避けてください。私がよく引き合いに出す次の文で、私の言わんとするところをくみ取ってください。

・Jane is a beautiful music teacher.

これは文法的には少しも誤りではありませんが、英語の感覚で見ると2種類の情報が入っています。

beautiful という形容詞はこの文を述べている人の気持ち、つまり comment であるのに対して、music は事実(fact)ですね。普通このような内容の時、英語が母語の人ならまず Jane is a music teacher. なり Jane teaches music. などと事実を述べてから、She is beautiful. あるいは ...lovely. と感想を述べるはずです。


(追記3)

マーク・ピーターセン『実践 日本人の英語』(岩波書店、2013年、p.192)では、So there are extremely many kinds of animals which are pets, I think. という英文に対して、

I think は、書き手の「意見」を示す表現なのに、ここで言われていることは「意見」ではなく、誰でも知っている事実

と述べ、

日本語には、とかく「断定」を避けて遠回しに表現しようとする傾向があるからか、「意見」ではなくても、文末に「〜と思う」と付ける場合が多いようである。

と誤用の原因を分析し、

当たり前の事実を述べるときに I think を付けると、とても奇妙に響く

と結んでおられます。


posted by 石崎 陽一 at 18:51 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2012年09月25日

reading comprehension のヒント


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リーディングが文字列から意味を読み取る営みだとすると単語のもつ意味情報にのみ目が向けられるのも無理はありませんが…。

石黒圭『文章は接続詞で決まる』(光文社新書、2008年、p.32)より備忘のため書き留めておきます。


じつは、人間が言語を理解するときには、文字から得られる情報だけを機械的に処理しているのではありません。文字から得られる情報を手がかりに、文脈というものを駆使してさまざまな推論をおこないながら理解しています。わかりやすくいうと、文字情報のなかに理解の答えはありません。文字情報は理解のヒントにすぎず、答えはつねに人間が考えて、頭のなかで出すものだということです。

posted by 石崎 陽一 at 08:42 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2012年08月06日

形容詞のかしこい捉え方


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effectively の普通の意味は形容詞から推察できるように「効果的に」ですが、「実際のところ」という意味で捉えるべき場面があります。

例えば次のようなケース。


Effectively, their response was a refusal.


それでは、「効果的に」と「実際のところ」というやや違った意味が、なぜ出てくるのか。

多賀敏行氏は『ワンランクアップの英文法』(筑摩書房、1996年)所収の「副詞のかしこい訳し方」と題する項において、次のように述べておられます。


形容詞の語尾を変化させることにより(多くの場合、語尾に ly を加えることにより)副詞となることが普通だ。ただし、ここで注意しなければならないのは、形容詞の意味が複数ある時にはそのうちの代表的な意味でない方の意味が、副詞形になった場合の主たる意味となる、そんな事態が起こり得るということである。(p.118)


うむ。


早速実際に辞書で確かめてみると、たしかに effective には actual を意味する場合があることが記されています。

よって、こちらの方の意味が副詞になったと考えれば、effectively が actually の意味を持つのも納得がいきますよね。


…私は学生時代にこの記述に出会って、鱗だらけの私の目から、またしても何枚もの鱗がはらはらと落ちるのを感じたのを覚えています。


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その後、経験を積むにつれ、如上の発想法が上記のような「形容詞➜副詞」の派生だけでなく「名詞➜形容詞」の派生にも応用できることに気がつきました。

例えば、respect という名詞から派生する respectable, respectful;respective の形容詞を考えてみますと、

この三者の中で、respective(各々の、個別の)だけがどう考えても「尊敬」という意味から派生していないわけですね。


Describe the respective merits of the three arguments.
(その3つの議論のそれぞれの長所を述べなさい)

Liz, Sue, and Jo went to their respective rooms.
(リズ、スー、ジョーはめいめいの部屋へ行った)



…こんなときに多賀氏の発想法を援用するのです。


つまり。


名詞の意味が複数ある時にはそのうちの代表的な意味でない方の意味が、形容詞形になった場合の主たる意味となる、そんな事態が起こり得る。


そう読み替えて respective の語義の解明に適用してみるわけです。


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言うまでもなく、respect は re- が「再度」を、spect が「観察」を、それぞれ意味しますから、「振り返って見ること」が原義です。

ここから、注目に値する「尊敬」の意味と、注目すべき「点」という意味が出ました。


In this repect you are wrong.
(この点で君は間違っている)

Your car is different from mine in many respects.
(君の車は多くの点で私の車と違っている)



なるほど、こうした相違点は注目すべき点ですね。

この、「点」という後者の方の意味が「一点一点の、一つ一つの、一人ひとりの」という形容詞になったと考えれば、respective が「各々の、個別の」の意味を持つのも納得がいきませんか。


…こう投げかけると、パッと顔の上がる生徒が毎年必ずどのクラスにも出てきます^^


今回のエントリーでは、形容詞は名詞を単純に延長したに過ぎない、という捉え方が必ずしも正しくないことを示す例を提供しました。

読解力や語彙力の増強に役立てていただければ幸いです。

それでは、また。


(追記1)

例文は『アンカーコズミカ英和辞典』(学習研究社、2008年pp.1570-1)より採りました。

(追記2)

村田聖明氏『現代英語の最前線』(研究社、1987年、pp.44-7)は effectively が virtually(事実上)の意味を持つことについて言及があります。


posted by 石崎 陽一 at 21:19 | Comment(2) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

文頭の Since について


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阿部一『「なぜ」から始める実践英文法』(研究社、2007年)に


冒頭に Since 〜 のように節としてある場合には、コーパス上はほぼ73%が理由を表す意味で使われていますので、この形式で「〜して以来」の用法は少ない(p.159)


という興味深いデータが示されています。


もともとは、Aが起こって「から」(以来)Bがどうした、という関係だったものが、Aが起こった「から」(理由)Bがどうした、というように関係づけられたわけです(p.158)


という理由づけにも関心を引かれた次第です。


(追記)

大竹芳夫『「の(だ)に対応する英語の構文」』(くろしお出版、2009年、pp.270-1)には

Since Susan left him, John has been very miserable.
(スーザンが去っ{て/た}から、ジョンはとても惨めになった)


という「時間/理由」に解釈で曖昧な例が挙げられており、興味を引かれました。


posted by 石崎 陽一 at 13:21 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

as, than 節における倒置について


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There the men wear skirts as do the women.
(そこでは、女性と同様、男性もスカートをはいている)

Mary knew Tom better than did the others.
(メアリーは、他の誰よりも、トムをよく知っていた)



このように比較を表す as や than の節において主語と助動詞が倒置する場合を『英文法小辞典』(北星堂、1991年、p.132)は文体的倒置に分類し、頭でっかちになるのを避け、文(節)の均整をとるために用いられると述べられています。

なお、中右実『重要構文70』(日本英語教育教会、1990年、pp.31-2)や吉田正治『続・英語教師のための英文法』(研究社、1998年、173-8)、真野泰『英語のしくみと訳しかた』(研究社、2010年、pp.40-1)、『クエスチョンボックス・シリーズ』の「第12巻 語法・語順・否定」(大修館書店、1964年、pp.91-2)に詳述があります。

Otto Jespersen, Modern English Grammar(Part Z §2.4(6))は、as, than 節における倒置がますます多くなりそうだ(seems to become more and more common)と述べています。


posted by 石崎 陽一 at 12:41 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2012年07月31日

形態に関わらず終始相と捉えるべき場合


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たとえば stand という動詞は

Stand up.

のように瞬間的な動作を表す場合と

A tall tree stands in front of the house.

のように継続する状態を示す場合とがあります。

このように、動詞の表す動作・状態には、瞬間的であるとか継続的であるというような、種々の様態・性質があります。

こうした様態・性質(またはその様態・性質を示す文法形式)を文法用語で「相(aspect)」と呼んでいます。

(「相(aspect)」は「手相」「人相」というときの「相」と同じで、字義通りには「姿・形」のことを指します。)

動詞そのものが表す相としては起動相、瞬間相、継続相、終始相などがあり、文法形式としては完了相と進行相とがあります。


さて、ここで終始相の場合に話を限ります。

通例、終始相には動詞の定形(finite form)が用いられ、その動詞の全般的な内容を含みます。

しかし、たとえば

Barking dogs seldom bite.

の barking は明らかに「吠えている犬」ではなくて「吠える犬」であるべきです。

これは現在分詞という形態に関係なく終始相と捉えるべき場合です。

進行相ではなくて終始相であると言わなければならないわけです。

では、

a rolling stone

の rolling についてはいかがでしょう。

この場合、ときには進行相で、ときには終始相です。

(「転がっている石」と「転がる石」の違いです。)

A rolling stone gathers no moss.

の rolling は終始相と解すべきですよね。

類例として、

flying fish
flying disk


における flying も終始相です。

英文解釈上、形態に関わらず終始相と捉えるべき場合があることに注意が必要です。


(追記1)

finite form(動詞の定形、定形動詞)とは、文中で述語動詞として用いられるときの動詞のことを指します。

(追記2)

本エントリーの執筆に際し、以下の文献を参照しました。

『英文法小辞典』(北星堂、1991年、p.317)
『英文法辞典』(培風館、1965年、p.75)
『特製版 英文法シリーズ 第二集』(研究社、1965年、p.pp.84-5)


posted by 石崎 陽一 at 14:04 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする

2012年07月30日

名詞・代名詞の解釈


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“Here you are.”の意味について、江川泰一郎氏は『語学教育の基礎(上) 教室英語の文法』(研究社、1972年、pp.141-2)の中で次のように述べておられます。(下線は原文のママ。)


もう一つは、“This is what you want.”/“Here is what you are looking for.”の意味で、日本語で言えば「はいどうぞ」「はいここにあります」の気持を表し、相手の欲しい物・捜し物を差し出すときに使うものです。


名詞・代名詞の解釈にまつわる論はこのように You=what you want という解釈から出発し、次のように展開していきます。


英語ではよく You are right. と言います。この場合は you=what you say で、人間そのものを指すわけではありません。I can't follow you. は「君と一緒に歩いてついて行けない」の意味にもなりますが、I can't follow you. Will you please speak more slowly? となれば、やはり you=what you say で、歩いてついて行くことではありません。(中略)早い話が You are right./I can't follow you.(Will you speak more slowly?)は日本語でも「は正しい」「について行けない」と言い、一々、「君の言うことは正しい」「君の話について行けない」と言わないでもよいわけです。


ところが、と続きます。


Listen to me carefully. はどうでしょうか。「注意してを聞きなさい」では日本語になりません。「注意して私の話を聞きなさい」です。Do you understand me? も同じで、これを「僕が分かりますか」としたのでは、日本語としては親父の臨終の床にかけつけた息子のセリフになってしまいます。


ユーモアを交えてこう語られた上で、抽象へと向かいます。


ここまで来れば私のいわんとすることが、はっきりすると思いますが、要するに英語では、日本語の場合よりも、「人間」に重点を置いた表現を使うという特徴があります。「人間」を表す語(名詞・代名詞)によって、その人間を中心としてその時の状況から察せられるものを表すのです。


そして最後に再び適切な用例の提示(とコメント)がなされて補強がなされ、名詞・代名詞の解釈にまつわる論にけりがつくことになります。


I heard him coming upstairs. は日本語ならば「私は彼が2階へ上って来る足音を聞いた」としなければ不自然なのです(後略)

(中略)

“A shark! Come back! Come back!”the gunner shouted at the top of his voice, but they did not hear him.

Grandfather heard the car and came out to see us.



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2012年07月28日

成句 what S is all about について


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about は語源的には「何々の外側に沿って」の意味です。「何々を中心にしてそれの周囲に」というのが今日の意味の中核をなしています。

ここから「何々を中心に(考えて)」という比喩的な意味が出るわけです。

よって、成句 what S is all about は「S がその中心だ」というのが直訳ですが、「何々について」という訳語で処理をしようとすると和訳の迷路に陥ってしまいます。

『学校英文法プラス−英語のより正確な理解に迫る−』(開拓社、2012年、pp.108-10)および小倉弘『京大入試に学ぶ 英語難構文の神髄(えっせんす)』(プレイス、2016年、pp.282-3)に詳述があります。


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2012年07月27日

多義語の動詞の虚字化


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小西友七『英語のしくみがわかる 基本動詞24』(研究社、1996年、p.1)より備忘のため書き留めておきます。(太字は原文のママ。)


多義語の動詞は、極端な場合、例えば get rest(=rest、休む)、get a look(=look、ひと目見る)、have got(=have)のように、まったくその意味を失って虚字化し、ただ動詞であるということを示すだけのことがあります。


(追記1)

柏野健次『英語語法レファレンス』(三省堂、2010年、p.328)では「軽動詞(light verb)」という項目が立てられ、「あまり情報量を持たず、意味的に軽いことから、こう呼ばれる」とされています。黒川泰男『英文法の基礎研究−日・英語の比較的考察を中心に−』(三友社出版、2004年、pp.31-3)では「talked よりは had a talk のほうが、また lunched late よりは had a late lunch のほうが、英語としての自然さを持っていると考えられる。「S+V+O」はいかにも安定した文型であるからだ」という見解が示されています。

(追記2)

John Sinclair ほか編・吉田正治訳『コリンズ・コウビルド英文法』(研究社、2009年、pp.280-2)では「脱辞書的動詞(delexical verb)」という項目が立てられ、give, have, make, take, do, hold, keep, set を挙げ、「最初の4語はこの用法で非常によく用いられる」とし、「脱辞書的動詞の後に名詞句を従える」「脱辞書的構造を用いるかどうかが外国人の英語の流暢さを表すものになっている」と指摘しています。また、look と have a look at を挙げ、前者のように動詞を用いた場合は「見るという行為に焦点が絞られている」のに対して、「脱辞書的構造で名詞を用いる場合は、出来事を、つまり、完結されたものを述べていることになる」と指摘しています。さらに、She screamed. と She gave a scream. を挙げ、前者は記述している出来事が短かったことを示唆しないが、後者は短いきゃっという悲鳴がひとつ聞こえただけという印象を与えることが可能であると述べています。そして、He glanced quickly and furtively round the room. という言い方はぎこちなく不自然に感じられ、He gave a quick furtive glance round the room. のように名詞の前に形容詞を用いてさらに詳細な情報を加えるほうが多いとしています。なお、脱辞書的動詞とともに用いられる代表的な名詞がそれぞれリストアップされており、便利です。



posted by 石崎 陽一 at 17:31 | Comment(0) | 読解の学習・指導 | 更新情報をチェックする
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