2016年08月19日

現代ドイツ語の三格の形と現代英語の前置詞 to との関係


PAK56_wagakokorokiminomizosiru500-thumb-260xauto-2831.jpg



現代ドイツ語(そして古英語)の名詞のもつ四つの格」と題する先の記事で

(独)Ich schenke dem Onkel das Bild.
(英)I present the picture to the uncle.

という例を紹介しました。

こうした、英語の「前置詞 to +名詞」がドイツ語の「三格の名詞」に対応している例には、ほかに

(独)Diese Bücher gehören mir.
(英)These books belong to me.



(独)Er ist seiner Frau treu.
(英)He is true to his wife.

といったものが挙げられます。

前者は動詞の例、後者は be 動詞の補語に用いられている形容詞と to の例です。

英語の「前置詞 to +名詞」がドイツ語の「三格の名詞」に対応しているこのような場合、この「前置詞 to +名詞」のことをG.O.Curme は Syntax(D.C.Heath & Co., 1931, p.109)において prepositional dative(前置詞つき与格)と呼んでいます。

(与格とはドイツ語文法でいう三格にあたります。)


(追記)

関連記事はこちら。

同格の「格」について、など


posted by 石崎 陽一 at 14:21 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

現代ドイツ語(そして古英語)の名詞のもつ四つの格


PPW_hunsuitoakaihana500-thumb-260xauto-649.jpg



三好助三郎『独英比較文法』(郁文堂、1975年、pp.36-7)より備忘のため書き留めておきます。(一部改変;改行、太字の一部、下線は現筆者による。)


ドイツ語の名詞には次のように4つの格がある。

(1)一格(主格) Nominativ (nom.) … が、は(the)
(2)二格(属格) Genitiv (gen.) … の(of the)
(3)三格(与格) Dativ (dat.) … に(to the)
(4)四格(対格) Akkusativ (acc.) … を(the)

これらの4つの格にはいろいろな意味、用法があるが、さしあたり一格は主語を、二格は所属関係を、三格は間接目的語を、四格は直接目的語を意味し、日本語の「が、の、に、を」に当たるものと憶えていただきたい。

例えば der Onkel の4つの格を示すと次のようになる。


(独)Der Onkel ist reich.
(英)The uncle is rich.

(独)Das Haus des Onkels ist da.
(英)The house of the uncle is there.

(独)Ich schenke dem Onkel das Bild.
(英)I present the picture to the uncle.

(独)Ich liebe den Onkel.
(英)I love the uncle.

古英語では、ドイツ語と同じように、格によって名詞の形態も変り、やはり4つの格をもっていた。その後名詞の語尾変化が消失して、主格、与格、対格は同じ形態をもつようになり、現代英語の一般文法では、与格と対格は統合せられて目的格(objective case)といわれている。(中略)このように英語では、ドイツ語より格が1つ少いのであるが、これを補うために語順が厳格になっており、或いは前置詞が発達して、属格は of、与格は to(中略)によって表される傾向が、ますます強くなっている。


(追記)

関連記事はこちら。

同格の「格」について、など


posted by 石崎 陽一 at 12:03 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

独英比較文法:「位置の影響力」の有無


sdim0064s.jpg



福田幸夫『ドイツ語は英語とどう違うか』(郁文堂、1975年、pp.22-3)より備忘のため書き留めておきます。(改行は現筆者による。)


英語の名詞には格を示す形態はなくなっている。わずかに所有格を示すapostrophe s があるのみであるが、この適用は若干の例外を除けば人間を意味する名詞に限られている。従って文中における格関係はその名詞の置かれている位置(特に動詞の前か後か)や前置詞の助けをかりて表わされる。

ドイツ語では名詞の格表示機能そのものは確かにロシア語やラテン語に比べれば不完全であり、むしろ英語に近いといえるが、名詞の前に来る冠詞類の語尾の助けをかりているので、かなりの程度に格を表示出来る特性を保有している。

従って、文中における名詞の位置は格の決定に際して英語のような役割は果たさない。

例えば英語の The farmer killed the dog. という文においては farmer が主語であるが、この farmer の主格性はこの語が動詞 killed の前にあるという文中に占める位置によって決定されるのである。同様に dog の目的格性は動詞 killed の後にあるという事実によって示されている。従って、両者の位置を変換して The dog killed the farmer, とすれば dog が主格になり、farmer が目的格になるから当然、文の意味も変わってしまう。

ところが、ドイツ語では Der Bauer tötete den Hund. において Bauer を主格(1格)、Hund を目的格(4格)と解するのは動詞の前後という位置ではなく、それぞれの名詞の前についている冠詞 der, den の格表示機能によっている。その証拠に両者の位置を交換しても Den Hund tötete der Bauer. となって、英語の場合とは異なり、文のニュアンスの差を除けば、一文の意味するところに変わりはない。何故ならばこの場合 Bauer は定冠詞 der によりあくまでも主格であり、同様に Hund は den により依然として目的格であることが表示されているからである。



(追記)

『現代英語学辞典』(成美堂、1973年、p.1007)より引いておきます。

語順の有意味性は、いうならば、アラビア数字の位置による有意味性にもたとえられるものである。アラビア数字の右端から2番目は10位、3番目は100位を表す(cf. 234, 324, 432)。


posted by 石崎 陽一 at 11:57 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年08月16日

分詞構文の定義


PPW_aoihana500-thumb-260xauto-647.jpg



次のような質問を頂戴しました。


『攻略! 英語リスニング』2016年7月号、Lesson 16 Plate Tectonics に次の一節があります。


Japan sits at the intersection of four plates, and their movement can cause earthquakes. So the plates that we live on can sometimes be dangerous. But the fact that there are plates and that they move may also have allowed for the
birth of life on our planet, by allowing complex chemical reactions to take place and recycling elements.



下線部には

「でも、プレートがあって、それが動いているからこそ地球に生命が誕生することが可能になったのかもしれないんだよ。それによって複雑な化学反応が発生し、元素が再循環したわけだからね」

という訳文が添えられています。

この下線部の文は分詞構文ですか? その場合、主語は何ですか? 

また、この文が分詞構文でない場合、訳出がこれで問題ないかどうかもあわせてご指南くださいませ。



以下に私なりの回答を記したいと思います。


続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 09:16 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年08月12日

現在時制と過去時制の実際の使われ方


N724_fensugoshinoshiroigakuajisai500-thumb-260xauto-1676.jpg



Douglas Biber et al., Longman Grammar of Spoken and Written English(Pearson Education, 1999)は4000万単語の用例データベースを調べてまとめられた文法書ですが、

動詞の用例中、およそ9割が、完了形を造るのに用いる have や had も、助動詞も、伴わずに使われていると報じています。


そして、Graeme Kennedy, Structure and Meaning in English(Routledge, 2003)は、さまざまなコーパスを活用し、現在時制と過去時制の実際の使われ方を教えてくれます。(太字は原文のママ。)


The simple present is used especially for description. The simple past is used especially for narrative or reporting.(p.212)


すなわち、現在時制は特に description(物事の描写)の場合に使われ、過去時制は narrative(物語ないし記録文)または reporting(報告)に使われるツールであるという見方が示されています。


posted by 石崎 陽一 at 11:45 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年08月10日

pro-infinitive(代不定詞)としての to の確立時期


PPH_murasakinomaikuromamukiku500-thumb-260xauto-927.jpg



OED(s.v. To 21)によれば、pro-infinitive(代不定詞)としての to は14世紀から用例が見られますが、

Jespersen は Modern English Grammar(Part X §20.58)において、

この用法が真に確立したのは19世紀中頃になってからである(It is not until the middle of the 19th c. that usage becomes really settled.)と述べています。


posted by 石崎 陽一 at 06:04 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年08月09日

despite と in spite of


MKJ_esumeraruda500-thumb-260xauto-1198.jpg



despite と in spite of について、田島松二『コンピューター・コーパス利用による現代英米語法研究』(開文社、1995年、pp.95-107)より備忘のため書き留めておきます。


「…にもかかわらず」の意味でつかわれる前置詞 despite と前置詞句 in spite of は、ともにもともと中英語期に古フランス語の ‘en despit de’(…を軽蔑して)の翻訳借入語句(calque)として現れる ‘in despite of’ に由来する。despite という前置詞は ‘in despite of’ の in がまず落ちて despite of になり、更にその of が落ちた形である(in despite of ➜ despite of ➜ despite)。一方、in spite of という前置詞句は ‘in despite of’ の despite が語頭音(de-)消失を起こした結果生じた形である(in despite of ➜ in spite of)。その過程で in despite of の of が落ちた in despite や in spite of の in が落ちた spite of という形も現れたが、今日まで生き残っているのは despite と in spite of のみである。古い形 in despite of や in despite は今日すっかり姿を消し、despite of と spite of がかろうじて口語・俗語レベルで残存しているぐらいである。意味も本来の「…を軽蔑して」から「…を無視して」へ、そして最終的には今日の「…にもかかわらず(=notwithstanding)」へと変化してきたのである。(p.95)

OED の引用例を調べてみると、今日では古語あるいは口語・俗語と目される in despite of や despite of, spite of も、中英語後期に登場以来、少なくとも OED 編纂中の19世紀半ば頃までは、頻度の差はあっても延々と使われてきた語法であることがわかる。(p.100)


posted by 石崎 陽一 at 10:59 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年07月29日

そのピアニストはもう10年前の彼ではない


NS645_ajisaitotourou500-thumb-260xauto-1657.jpg



次の文をご覧ください。

「そのピアニストはもう10年前の彼ではない」という意味です。


The pianist is not what he was ten years ago.


下線部は「彼が10年前にそうであった姿」すなわち「10年前の彼」の意を表し、

文全体として「そのピアニストの外見・技術が衰えた」「収入が減った」ことを暗示しています。

この点につき、柏野健次 編著『英語語法レファレンス』(三省堂、2010年、pp.220-1)、鷹家秀史『英語の構文150 UPGRADED 99 Lessons』(美誠社、2011年、pp.86-7)に詳述があります。


posted by 石崎 陽一 at 23:19 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

受動形の不定詞


ELLY99_pinkironohasunohana500-thumb-260xauto-3646.jpg



田中実『英語構文ニュアンス事典』(北星堂、1988年、p.350)より備忘のため書き留めておきます。


(1)There's a lot of work to do.

(2)There's a lot of work to be done.

(1)(2)はいずれも、「しなけりゃならない仕事がたくさんある」という意味で、〈義務〉を表しているけれども(中略)(1)は、行為そのものよりもその行為をおこなう人に注意が向けられた言い方であり、(2)は、行為そのものに注意が向けられた言い方である、とも言える。



なお、(1)の to do の意味上の主語は、通常、話し手です。

主語が場面から明白であるので、for me が省略されているのですね。


(追記1)

『英文法小事典』(北星堂、1991年、p.128)は

原則的に、不定詞の意味上の主語が “物” であるときは受動不定詞が用いられる

としながらも、

there is/are のあとでは、受動不定詞も能動不定詞も用いられる

と但し書きを付けています。

Jespersen は Modern English Grammar(Part X §15.38)で2つの構文が可能なときには、「はっきりとは限らないが意味の区別ができる場合もある」(In some cases a distinction may be made, though it is not always clearly observed)と述べ、次のペアを挙げています。拙訳を添えて引いておきます。

There was nothing to do there.
(仕事がなかった)
There was nothing to be done there.
(なすべきことがなかった)

There was nothing to see there.
(見る価値のあるものはなかった)
There was nothing to be seen there.
(何も見えなかった)

On this subject there is something to say at this point.
(言えること)
On this subject there is something to be said at this point.
(言うべきこと)



(追記2)

A.J.Thomson & A.V.Martinet, A Practical English Grammar(Oxford University Press, 1986, p.222)には

There is plenty to do

(a)plenty of things we can do, i.e. amusements, or
(b)plenty of work we must do.

In the therebe + noun/pronoun + infinitive construction, when there is an idea of duty, as in(b)above, a passive infinitive is possible:

There is a lot to be done.

But the active infinitive is more usual.


とあります。


(追記3)

江川泰一郎『英文法解説 改訂新版』(1964年、p.281)では

It was her own fault. There was nothing to be done.(彼女自身の招いた失敗で、もう取り返しがつかなかった)

という例が挙げられ

There was nothing to do では、単に「することがなかった(ひまだった)」の意味になりかねない

というコメントが付せられています。


(追記4)

柏野健二・内木場努『コーパス英文法』(開拓社、1991年、p.123)より引きます。

なお、能動受動態は次のような構文と密接な関係が見られる。

(26)There are a lot of problems to solve. 〔to be solved〕.
(27)Kyoto is worth visiting.
(28)My watch needs repairing.
(29)The driver is to blameto be blamed〕 for the accident.

ちなみに、(26)とは異なり、主語に to 不定詞が示す行為を行う人がくると、受動態は使われない。

(30)I have a meal to prepare 〔*to be prepared〕.

さらに、つぎのように、能動、受動の to 不定詞では意味が異なることもある。

(31)There was nothing to do so we played computer games.(i.e. we were bored)
(32)He's dead. There's nothing to be done.(i.e. we can't change that)



(追記5)

八木克正『新しい語法研究』(山口書店、1987年、pp.149-57)に詳述があります。



posted by 石崎 陽一 at 22:30 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

didn't need to do vs. needn't have done


MS251_rantekusucya500-thumb-260xauto-2644.jpg



R.A.Close は English as a Foreign Language: Grammar and Syntax for Teachers and Advanced Students(George Allen & Unwin, 1962, p.131)において


Note also that You needn't have done that suggests that you have done something unnecessarily, while You didn't need to do it means that, whether you have done it or not, there was no obligation or necessity for the action.


という説明を施した上で、次の例を挙げています。


(1)Oh, you didn't need to do that.

(2)Oh, you needn't have done that.



これらはいずれもパーティに大きな花束を持参したゲストを迎えるホステスの言葉です。

(1)は花を買った過去に視点があり、(2)は現在に視点があります。


日本語なら、それぞれ次のようになるでしょうか。


(1)そんなことなさらずともようございましたのに(散財させてすみません)。

(2)そんなことなさらずにおいでください(お気を遣わせてすみません)。



posted by 石崎 陽一 at 11:35 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

関係詞節中の時制


PPU_mankainisakujyugatuzakura500-thumb-260xauto-854.jpg



英作文をする際、関係詞を含む文で主節が過去形の場合、関係詞節の時制をどうするかという問題があります。


例えば、「日本語を上手に話すアメリカ人に会った」という日本語に対応する英語としては次の2通りが考えられます。


(1)I met an American who spoke good Japanese.

(2)I met an American who speaks good Japanese.



しかし、この2つの文には意味の違いがあります。


(1)は、アメリカ人に会ったとき、その人が実際に日本語を上手に話したことを伝えています。

この場合、アメリカ人の日本語のうまさは主節の規定する時間の枠内でとらえられていますので、その人が今も日本語を上手に話すかどうかは問題となりません。


一方、(2)は、アメリカ人に会ったとき、その人が実際に日本語を上手に話したのかどうかは不明です。

あとになって、その人が日本語のうまい人であることがわかったというのでも構いません。

つまり、(2)では、アメリカ人の日本語のうまさは主節の規定する時間の枠を超えて、現在におけるその人の特性を表しているのですね。


このようにみてくると、例えば「その当時は日本語を上手に話すアメリカ人はほとんどいなかった」や「ジョンは日本語を上手に話す学生だった」という日本語を英訳するときは、

次のように関係詞節の中の動詞も過去形にしなければならないことがおわかりになるでしょう。


(3)In those days there were few Americans who spoke good Japanese.

(4)John was a student who spoke good Japanese.



日本語を上手に話すかどうかが現在ではなく、当時やジョンの学生時代との関係でとらえられているからです。


すなわち、これらの文で関係詞節に現在形が許されないのは、次の文で現在形が許されないのと同様なのですね。


×)In those days few Americans speak good Japanese.

×)When he was a student, John speaks good Japanese.



(追記1)

以上の記述は、斎藤武生・鈴木英一・原口庄輔 編『英文法への誘い』(開拓社、1995年、pp.235-6)に全面的に依拠しています。

(追記2)

こちらの記事も合わせてどうぞ。

関係詞の先行詞につく冠詞について


posted by 石崎 陽一 at 11:11 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年07月28日

相当語句(equivalent)という概念の源流


PPG_kiiroiohana500-thumb-260xauto-864.jpg



大塚高信『英文法を顧みる』(大修館書店、1962年、pp.164-5)より備忘のため書き留めておきます。



おそらく細江が初めて使いだした「相当語句」は、Onions の ‘equivalent’ にヒントを得た術語であろう。


(追記1)

引用中の「細江」とは「OE から現代英語に至る実証的研究に長じ、大正・昭和年間わが英語学界の指導的学者の一人」(『英語学人名辞典』(研究社、1995年、pp.147-8))であった細江逸記(1884-1947)を指しています。

また、“Onions” とは「イギリスの英語学者・辞書編纂家」(『上掲書』(p.256))で OED 編纂に参加し、「のちにその縮抄版 SOD や英語語源辞典を編纂した」 (永嶋大典『OED を読む』(大修館書店、1983年、p.30))C. T. Onions(1873-1965)を指しています。

(追記2)

C. T. Onions, An Advanced English Syntax: Based on the Principles and Requirements of the Grammatical society(Kegan Paul, Trench, Trubner & Co., 1927, §8ff.)より引きます。

The Noun, the Adjective, and the Adverb may be replaced by other parts of speech doing the same work in the sentence, or by a group of words doing the work of a single part of speech.

A word or group of words which replaces a Noun, an Adjective, or an Adverb is called an Equivalent (Noun-equivalent, Adjective-equivalent, or Adverb-equivalent).





posted by 石崎 陽一 at 22:16 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

いざという場合には、説明し得るだけの知識をもつ


PPP_sudaretoakaihana500-thumb-260xauto-396.jpg



will not の短縮形が won't となる理由を生徒から尋ねられた場合につき、大塚高信『英文法点描』(泰文堂、1956年、p.157)は次のように述べていますが、甚だ同感です。


自分の知っていることを全部言ってしまわなくては気の済まないような教師が善い教師とはいえないのと同様に、読本の一の巻に出て来る位の言語現象は、いざという場合には、説明し得るだけの知識のない教師も決してよい教師とはいえないと思う。


「いざという場合には、説明し得るだけの知識をもつ」べく、自己研鑽に励む日々です。


posted by 石崎 陽一 at 21:51 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

言語の実際はいわゆる文法以上の権威


OJS_rinntositehissoritosakutubaki500-thumb-260xauto-1416.jpg



細江逸記『英文法汎論』(泰文堂、1971年、p.209)より備忘のため書き留めておきます。


言語の実際はいわゆる文法以上の権威であって、実際が変化して行けば文法に新例を加え、規則の改廃を行うのはもとより当然の事である。


(追記)

宇賀治正朋編『文法T』(英語学文献解題第4巻、研究社、2010年、p.154)では、『英文法汎論』は

比較言語学および英語史に関する該博な知識に裏打ちされた科学文法

であり、

単に文法規則の列記に止まらず、豊富な言語事実によって例証し、英語の慣用にも充分な目配りを怠らない

と評価されています。


posted by 石崎 陽一 at 20:48 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

my wife who works in Paris?


PPW_fujinohana500-thumb-260xauto-581.jpg



うちの6ヵ月の娘はどうしてもベビーフードを食べようとしてくれません。


という日本語は、例えば、次のように英訳することができます。


(1)My six-month-old daughter will not[won't]eat baby food.

(2)My daughter, who is six months old, will not[won't]eat baby food.

(3)The daughter of mine who is six months old will not[won't]eat baby food.


「うちの6ヵ月の娘」は、(1)のように、


my six-month-old daughter


で表すのが簡潔です。


(「6ヵ月の」という形容詞は six-month-old と3語をハイフンでつないで作ります。

このように、形容詞に数詞(ここでは six)が含まれている場合、単位を表す名詞(ここでは month)は単数形のままで使う点に注意しましょう。)


さて、そうではなく、関係代名詞を用いて「うちの6ヵ月の娘」を英訳する際には大事な留意点があります。

関係代名詞 who の前にカンマを置くか置かないかで大きな違いが生じるのですね。


次の2つの例をご覧ください。いずれも2つのことを述べています。

妻がパリで働いていることと妻は黒髪だということですね。


例1 His wife, who works in Paris, has dark hair.

例2 (?)His wife who works in Paris has dark hair.


例1は、削除可能な補足情報であることを示す一対のカンマが who works in Paris の部分の前後にありますので、彼の奥さんは一人しかいないとわかります。


一方、例2は、カンマがなく、したがって、who works in Paris の部分はどの奥さんのことかを特定するための情報になっており、

言外に奥さんが何人もいる、すなわち、


The wife of his who works in Paris has dark hair.


という内容を示す結果になっています。


これでは polygamy(一夫多妻)になってしまいます。


翻って、冒頭の日本語を見てみましょう。

うちの6ヵ月の娘はどうしてもベビーフードを食べようとしてくれません。


如上の理由から、この人物に娘が一人しかいないのであれば(2)のように who is six months old の部分を一対のカンマで括る必要があります。


しかし、娘さんが他にもいることを表すのであれば、カンマを付けず


(?)my daughter who six months old


としても良さそうなものですが、これは極めて weird です。


といいますのも、my daughter 自体が my one and only daughter を意味してしまいますから、

関係代名詞節の限定用法(the restrictive use of the relative clause)と概念が clash してしまうからなのですね。


よって、この人には娘が何人かおり、そのうちの生後6ヵ月の娘、の意を表したいなら、(3)のように


the daughter of mine who is six months old


とする必要があるというわけです。


posted by 石崎 陽一 at 17:37 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年06月12日

stop doing と stop to do


SFC_sakikakenoakaibokenohana500-thumb-260xauto-1469.jpg



stop doing(do するのをやめる)と stop to do(do するために立ち止まる、立ち止まって do する)は基本的な区別です。

すなわち、

What did the boy stop? に対する答えになる文は He stopped smoking. であり、

Why did the boy stop? に対する答えになる文は He stopped to smoke. です。

なお、和訳に際しては


When we are fluent in a language, we rarely stop to consider how to pronounce a word, or what aspects of grammar to employ in constructing a sentence.


という用例におけるように、stop to do が文字通りに「立ち止まる」のではない場合には、

「立ち止まって」の意味を軸に、「十分時間をかけて、よく、わざわざ、いちいち」など、前後関係に適した訳出を心がければ結構です。


(追記1)

go on doing と go on to do も注意が必要な区別です。

1.The man went on pointing out their mistakes.(その男は彼らの間違いを指摘し続けた)

2.The man went to point out their mistakes.(その男はさらに今度は彼らの間違いを指摘し始めた)


1の go on doing は「そのときまでしていたことをそのままし続ける」の意味で、

2は「そのときまで別のことをしていてそれからさらに何かを行う」の意味で用います。


(追記2)

Mark Nettle & Diana Hopkins, Developing Grammar in Context Intermediate with Answers: Grammar Reference and Practice(Cambridge University Press, 2003, p.135)に go on to do vs. go on doing; need to do vs. need doing; remember/forget to do vs. remember/forget doing; stop to do vs. stop doing; try to do vs. try doing のマトリックスがあり、対照的な例に簡明なコメントが添えられていて有益です。




posted by 石崎 陽一 at 16:22 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年06月11日

家に着いたら愛犬が玄関のところで私のことを待っているだろう。


pros0818.jpg



家に着いたら愛犬が玄関のところで私のことを待っているだろう。


という日本語を次のように英訳するとします。

1〜4、それぞれの訳文の可否はどうでしょうか?


1.My dog will be waiting for me at the door when I get home.

2.My dog is waiting for me at the door when I get home.

3.My dog is always waiting for me at the door when I get home.

4.My dog waits for me at the door when I get home.



続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 21:08 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

科学英語論文における時制、という切り口


PPW_pinknobaratoamatubu500-thumb-260xauto-575.jpg



科学英語論文における時制というまとめ記事が参考になります。

改めて整理された情報を一望しますと、なるほどなぁと感じる点が多いです。

なかには


自分の今の研究も現在形で書くかどうかは、おそらく、「再現性が自明かどうか」によるのではなかろうか。


など、ところどころ興味深い指摘もなされています。

なお、上記のまとめ記事は科学英語メモというホームページの一部をなすものです。

この本体部分も読みごたえがありますよ^^


(追記)

ホームページ作成者の樫村博基氏は大気力学・地球流体力学がご専門で、

現在、JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)のポストドクトラル研究員として、気候変動リスク情報創成プロジェクトチームは地球システムモデル開発応用ユニットに従事しておられる方です。


posted by 石崎 陽一 at 20:38 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年06月04日

過去完了形の指導に関するヒント


SSK_kazeniyurerunanohana500-thumb-260xauto-1421.jpg



英文法の指導においても、講義中心ではなく、生徒の発言・議論を中心とした授業の展開を意識しています。

つまり、担当科目が「コミュニケーション英語」であるか否かにかかわらず、

発問・応答を骨格とする、

生徒とのコミュニケーションを中心に据えた授業を組み立てることを心がけています。


人は質問されると考えます。

よって、生徒に考えさせるには質問をするのがひとつの効果的な方法だからなのですね。


Dave Willis, The Lexical Syllabus: a new approach to language teaching(Collins ELT, 1990, p.103)に過去完了形の指導に活かせるヒントが供されています。


In each example below there are two or more things that happened. Which thing took place first?

1 One evening the wife, white as a sheet, called me over to her flat saying that it had been burgled.

2 Her husband had dropped in briefly while she was out (before she got back), to look for his driving licence.

This helps the learners to build up a picture of the use of perfective aspect in real contexts of use, and also encourages them to look critically at the texts to which they are exposed.



posted by 石崎 陽一 at 08:22 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年05月28日

「何々する可能性が x %高まる」の英訳例


SSK_sakihajimetasakura500-thumb-260xauto-1426.jpg



2013年2月4日実施、東京女子大学・現代教養学部の入試問題に次の一節があります。


In rat studies, calorie restriction can extend life span by twenty to eighty percent.


では、例えば、「寿命が伸びる可能性が20%高まる」はどう英訳したらよろしいでしょうか?

文脈なしのこうした単独の文となりますと、名詞の単数形・複数形や冠詞の使い方などの異なるいろいろな英訳が考えられますが、例えば、


The likelihood of an increased lifespan will rise by 20%.

There will be a 20% rise in the likelihood that lifespans will increase.

The likelihood that lifespan will increase will rise by 20%.


のような訳が普通でしょう。(最後の例は直訳。)

posted by 石崎 陽一 at 17:28 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
ページトップへ戻る