2016年11月27日

単独で場所を表す所有格について


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中山 仁『ことばの基礎1 名詞と代名詞』(研究社、2016年、pp.187-9)は

She's staying at her mother's.

の下線部のように単独で場所を表す所有格について、

上例のような

個人宅

のほか、

St Paul's (Cathedral) のような公共の建物(場所)



McDonald's のようなデパート・店・診療所など

を含め、主に3つのタイプがあると整理しています。


posted by 石崎 陽一 at 13:57 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

a friend of Tom's と a friend of Tom の比較


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中山 仁『ことばの基礎1 名詞と代名詞』(研究社、2016年、pp.174-86)は


a friend of Tom's と a friend of Tom では意味が異なるという意見もあるが、それは一部に限られる


とし、実際のところ、後者にすべきところで前者を用いるのは普通のことだと指摘しています。


なお、上例のように


主要部が「人」ではなく、hat, book などのように「もの」の場合は別である


として、

「Dickie の帽子」の意では

(×)a hat of Dickie
(○)a hat of Dickie's


であり、

「Alfred Beasley の本」の意では

(×)a book of Alfred Beasley
(○)a book of Alfred Beasley's


であるという点を用例を挙げて示しており、きめ細やかです。



posted by 石崎 陽一 at 13:51 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

-s's にするか -s' にするか − 固有名詞で綴りが s で終わる場合 


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中山 仁『ことばの基礎1 名詞と代名詞』(研究社、2016年、pp.156-7)は


固有名詞で綴りが s で終わる場合、-s' と -s's の両方が可能で、どちらを多く使用するかは固有名詞によって傾向が異なる


とし、COCA と BNC で調査した結果


Chris's, Dickens's, James's のように、-s's の使用が特に目立つ例もあれば、Burns'(s), Jones'(s) のように、使用頻度にさほど大きな違いがない例もあり、傾向が一定しているわけではないことがわかった


と報告したうえで、


実際に使用する際は、一貫性が保たれていればどちらの形でも特に差し
支えないと思われるが、St James's Park(セント・ジェームズ公園(ロンドンの王立公園))のような固有名称については本来の形を用いることが望ましい



と、実践的な助言を学習者に与えており有益です。


(追記1)

『上掲書』(p.157)には、固有名詞の -s's の「アポストロフィ+s」の発音や Jesus, Moses の所有格と発音について注記があります。

(追記2)

宇賀治正朋『英語史』(開拓社、2000年、p.272)は

● 属格接尾辞の表示としてアポストロフィ(apostrophe)(')を使用する慣習は、シェイクスピア以後に始まった

● アポストロフィを用いた単数属格表示 -'s はおよそ1680年に、複数属格表示 -s' はおよそ1780年過ぎに始まった

と述べています。


posted by 石崎 陽一 at 13:38 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年11月22日

What does it matter? という文における what について


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生徒から、

What does it matter? という文における what について

問われました。


小さなことも「とりあえず覚えてしまおう」で済ませず、

また、What does it matter? などと一蹴せず、

根本的なところから見直していく姿勢は重要です。

疑問をもつことが何かのきっかけになる場合が多くあるからです。


以下に細江逸記『英文法汎論』(新改訂版;篠崎書林、1971年、p.113)の説明を引いておきます。


need, profit, care などとともに用いられる what は、古英語の疑問代名詞 hwæt(= what)の対格 hwæt の直系で in what way, by what, why などの意になる。(ついでに言えば、今日の why はこの hwæt の具格(Instrumental Case)hwy の変形である)。


如上の「need, profit, care など」の「など」には、avail, matter, signify も入ります。


以下に私が収集した用例を記しておきます。


What does it matter?

What does it profit him?

What do you care about it?

What does it avail to do so?

What does it need to be done?



現代英語ではこれらの what は副詞で why の意であると考えればよいでしょう。


(追記1)

COCA では How does it matter? では0件ですが、Why does it matter? では97件ヒットしました。

ちなみに、What does it matter? は285件でした。


(追記2)

河合茂『英文法概論 復刻版』(明倫出版、1988年、p.209)は

Interrogative Adverb としての what

という項目を立て、

主として care, avail, matter, signify, need, etc. の Verb と共に使用せられるもの

とし

what の Adverbial Accusative から來たもので、how? how much? to what extent? の意を有してゐる

と述べています。

なお、

the + Comparative の前に用ひることもある

として

What(= to what extent)is he the better for it?

の例も挙げています。


(追記3)

『特製版 英文法シリーズ 第一集』(研究社、1959年)は

all over the world, all at once, all the better for; this far; that famous

などのような、all, this, that といった不定代名詞の副詞用法と同じく、

この what も副詞用法で、歴史的には副詞的対格(Adverbial Accusative)であると指摘しています。(p.80)

その一方で、

記述的立場から見れば、人称代名詞以外には特に対格を示す語尾変化がないし、また発生的に見ても格変化喪失後に副詞的に用いられるようになった例も多いから「副詞的対格」というのはあまり適当な名称ではない

とも述べています。(p.124)

なお、不定代名詞の副詞用法には、ほかに、anything, little, much, everything, nothing, something などが挙げられます。

much the same の much のような使い方もきっとそうですね。


(追記4)

慶應大学の堀田隆一先生のブログ記事でも扱われており、有益です。

疑問詞 what の副詞的用法

what with A and what with B

「5W1H」ならぬ「6H」

The sooner the better


posted by 石崎 陽一 at 02:14 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年11月20日

happy と glad の使い分けについて


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英語表現の授業で happy と glad の使い分けについて話題になりました。

レファレンス類を調べてもはっきりとはわからず仕舞い。

マーク・ピーターセン先生にお尋ねしたところ、次のようなコメントをいただきました。


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posted by 石崎 陽一 at 18:57 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

was reading sitting ?


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「母はソファに座って本を読んでいました」という日本語に対して、何人かの生徒から次のような英訳が寄せられました。


My mother was reading sitting on a sofa.


この英文に関して、マーク・ピーターセン先生より次のようなコメントをいただきました。


"My mother was reading sitting on a sofa." is very weird. It sounds as if being able to read while sitting on a sofa is a great feat, like “The flutist played the entire concerto standing barefoot on a bed of nails.”


(追記)

冒頭の日本語に対する英訳は

My mother sat reading on a sofa.

でもいいのですが、私なら

My mother was sitting on a sofa, reading.

と英訳します。


posted by 石崎 陽一 at 18:50 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年11月19日

必ず「前置詞+関係代名詞」の語順をとる場合(その2)


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生徒からの質問に答えるべくまとめてみました。

順次、加筆していきます。

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posted by 石崎 陽一 at 19:35 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

必ず「前置詞+関係代名詞」の語順をとる場合(その1)


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生徒からの質問に答えるべくまとめてみました。

順次、加筆していきます。

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posted by 石崎 陽一 at 19:33 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年11月13日

what は関係詞か疑問詞か


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what が関係詞か疑問詞かについて、安藤貞雄『基礎と完成 新英文法』(数研出版、1987年、p.344)より備忘のため書き留めておきます。


両用法の区別はかなり微妙で、文脈と場面がないと、どちらとも決定できない場合がある。しかし、以下の基準が一応の目安となる。


ⓐ 〈質問・疑念・不確かさ・好奇心〉などを表す主節に続く場合、100パーセント疑問詞である。

Ask him what he has done.
(何をしたのか、彼に聞いてみなさい)


ⓑ 疑問詞には強勢があるが、関係詞にはない。

I don't remember whát he said.[疑問詞]
(彼が何といったか覚えていない)

I don't remember what he said.[関係詞]
(彼がいったことを覚えていない)


ⓒ 疑問詞には else をつけることができるが、関係詞の場合はできない。

Ask him what else I can do.[疑問詞]
(ほかに何をしたらいいか、彼に聞いてみなさい)

I will do what I can do.[関係詞]
(私は自分にできることをします)



(追記1)

『ジーニアス英和辞典 第4版』(大修館書店、2007年、p.2173)は

共起する動詞の意味が1つの目安となる

として次のような分類を試みています。

a)ask, inquire, wonder などの質問・疑問の意味を含む動詞に続く場合は通例疑問詞

b)know, see, find, remember, tell などの認識・知覚・記憶・発言などの意味を含む動詞に続く場合は両者の解釈が可能

c)do, eat, give, believe などの動作や行為の明確な対象を求めるような動詞に続く場合は通例は関係詞



(追記2)

國學院大学の久保田正人氏の運営する英語質問箱における2017年4月27日の記事を引いておきます。

what が「何」の意であるか「もの・こと」の意であるかを判定する一番簡単な方法は、当該の動詞が whether 節をとることができるかどうかです。whether 節をとることができれば、what はどちらの意にも解され、あとは文脈から絞り込んでゆくことになります。whether 節をとることができなければ、疑問文をとることができないということであり、したがって what を「何」の意で解することはできず、「こと・もの」の意に限定されます。learn は whether 節をとることができるので、文脈しだいで、どちらの意にも解されうることになります。それに対して、たとえば regret のような動詞は whether 節をとることができないので、I don't regret what I did. における what は「こと」の意にのみなります。


(追記3)

関連記事はこちら。

関係詞節か間接疑問文か(その1)


関係詞節か間接疑問文か(その2)


posted by 石崎 陽一 at 20:05 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

continue to do と continue doing


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田中実『英語構文ニュアンス事典』(北星堂、1988年、pp.46-7)に

continue to do と continue doing の使い分けについて言及があります。

それによりますと、

彼が彼女に銃を向けている間、彼女は1万円札を数え続けた。

という意味を表す場合、

While he held a gun on her, she continued counting out 10,000-yen bills.

のように「continue + 動名詞」を用いて訳すのが適切だと指摘されています。

すでに、「お金を数える」という行為が実際に進行中のことが、文脈から明らか

なのがその理由で、

「すでに継続中の動作」については continue に to 不定詞を後続させるのは容認される可能性はやや低いとされています。

一方、

彼女は彼にもう来ないで、と言ったのに、彼は最初、彼女の言うことを無視して、とにかく彼女のところへやって来つづけた。が、とうとう、それもやめた。

の意を伝える際、

(She told him not to visit her any more.) At first he ignored her and continued to visit anyway.(Finally the visits stopped.)

のように「continue + to 不定詞」を用いて訳すのが適切です。

というのも、ある動作が

異なる期間にわたって、繰り返しおこなわれたが、とうとう、それも終わってしまった

という場合には to 不定詞を用いるのがふさわしく、

逆に動名詞を用いると、

ある特定期間の動作の反復が示される

ため、上のような文脈にはなじまないからだと指摘されています。


(追記)

関連記事はこちら。

begin to do と begin doing


posted by 石崎 陽一 at 09:11 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年11月12日

The bottle floated under the bridge. の意味は?


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『英語の構文150』(美誠社)は鷹家秀史先生の手による現行版のほか、高梨健吉先生の手による版、岡田伸夫先生の手による版ともに、ずっと愛好している書物です。

とりわけ、岡田伸夫先生による Second Edition(2003年)は標題のような「自動詞+到着点・方向を表す句」(pp.44-5)の項のほか、

She pushed the ball into the hole. のような「他動詞+目的語+到着点・方向を表す句」(pp.46-7)の項が類書にない特徴のひとつであり、有益です。


(追記)

岡田伸夫『英語教育と英文法の接点』(美誠社、2014年、pp.97-103)に詳述があります。


posted by 石崎 陽一 at 23:15 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

John is as tall as any of his friends. の表す内容


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岡田伸夫『英語教育と英文法の接点』(美誠社、2014年、p.45)は

John is as tall as any of his friends.

という文は

「ジョンがどの友人と比べても、その人より背が低いということはない」

すなわち、

「同じかそれより高い」

という意味であると喝破しており、爽快です。


(追記)

John is as tall as Mary. という文と John is as tall as any of his friends. という文との意味の違いを、『上掲書』(pp.45-7)では、Grice の協力の原則とそれに基づく会話の含意によって説明されています。


posted by 石崎 陽一 at 23:03 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

「動詞 + 目的語」と「have + 目的語 + 過去分詞」


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自分以外の人があることを実行する場合に「動詞 + 目的語」が使われることがあります。

岡田伸夫『英語教育と英文法の接点』(美誠社、2014年、pp.92-3)は

最終的な決定権をもつ人が決定したことが慣行的にそのまま実行に移される場合には、最終的な決定権をもつ人が実行したとみなされる

ため、

豊臣秀吉が大阪城を建てた。

という日本語には何もおかしいところはないと指摘します。

さらに、

Chris cut her hair at the salon on University Avenue.

という英文を例に挙げ、

髪を切るか切らないかを決定するのは客のクリスであり、美容院の店員ではありません。ですから、クリスがはさみで自分の髪を切っていなくても

この文を使うことができると述べています。





posted by 石崎 陽一 at 22:53 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

クジラの構文と I wish I were a bird. の出典


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八木克正『斎藤さんの英和中辞典 − 響きあう日本語と英語を求めて』(岩波書店、2016年、pp.3-4)において、興味深い事実が明らかにされています。

俗称「クジラの構文」 A whale is no more a fish than a horse is.(クジラは魚でないし馬は魚でない。クジラが魚だと言うならば馬だって魚だ)は主にイギリスの19世紀の啓蒙書の中で繰り返し現れる言い方であり、

仮定法の例文に見られる I wish I were a bird. はアメリカの詩人 Daniel Augustus Drown(1823-1900)の詩集 Fragrant Flowers: And Other Poems(1860)に収められたある詩(1823)のタイトルと冒頭の一行なのだそうです。

『上掲書』より和訳とともに冒頭の4行を引いておきます。


I wish I were a bird,
All beautiful and bright,
My liquid notes most clear and pure,
Should wake the morning light; ...

(もしも私が小鳥なら/すべて明るく美しく/私の心地よい調は澄みきり濁りなく/きっと朝の光を目覚めさす)



posted by 石崎 陽一 at 22:23 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

grammaring(文法力)


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大修館書店の専門誌『英語教育』12月号を編集部から送っていただきました。


そのなかで、慶應義塾大学の田中茂範先生が


最近、「文法を教える」から「文法力を鍛える」と表現を変えることで見えてくるものがガラッと変わるものだとつくづく感じている(p.27)


と記されています。


これを読みまして、

Teaching Language: From Grammar to Grammaring(Heinle, 2003)のなかで

Diane Larsen-Freeman 女史が次のように述べているのを思い出しました。(下線は現筆者による。)


For the purpose of teaching and learning a language, I suggest that it would be better to think of grammar as a skill or dynamic process, something that I have called grammaring, rather than as a static area of knowledge.(p.24)

Grammaring is the ability to use grammar structures accurately, meaningfully, and appropriately. To help our students cultivate this ability requires a shift in the way grammar is traditionally viewed. It requires acknowledging that grammar can be productively regarded as a fifth skill, not only as an area of knowledge.(p.143)


grammaring は、さしずめ、「文法力」と訳せましょう。


posted by 石崎 陽一 at 22:03 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2016年10月02日

thanks to について(その2)


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主として英語の基本的な単語が、英語に入っていつどのように変化したかを示すことに主眼がある


とされる Oxford Dictionary of English Etymology(Oxford University Press, 1969, p.914, s.v. thank)において、

thank の原義は favor であると示されています。

(なお、now only pl. thanks という注意書きも付せられています。)


また、Longman Advanced American English Dictionary(Pearson Japan, 2013, p.628, s.v. favor)は第1語義に help というサインポストを示し、thank を


something that you do for someone in order to help or to be kind to him or her


と定義しています。(下線は現筆者による。以下同様。)


さらに、ある英英辞典は次のように定義しています。


a grateful feeling or acknowledgment of a benefit, favor, or the like, expressed by words or otherwise



さて、少し前のことです。


(独)Dank seiner Arbeit hat er genug Geld zum Leben.
(英)Thanks to his work, he has enough money to live.
With the help of his work he has enough money to live.



上の対応を考えていまして、ふと頭に疑問が浮かびました。

この場合の thanks は副詞的対格(そして to his work は Curme, Syntax(D.C.Heath & Co., 1931, p.109)のいうところの prepositional dative)だと考えられると思うのですが、

それでは、


(1)favor という原義が thanks to の句の中に化石的に残っており、thanks 自体は「御蔭で、力添えによって」の意となるのでしょうか?


しかし、そうだとしますと、


(2)同じ prepositional dative の例で、a help to beginners や helpful to me ですと、help の影響が to をまたいだ目的語に及ぼされる格好になっていますけれども、thanks to の場合は to をまたいだ目的語に伝わるのは「御蔭、力添え」(favor)の意なのでしょうか、それとも「感謝の念」なのでしょうか、それとも、両方なのでしょうか?


(3)ドイツ語の前置詞 dank は三格以外にも二格を支配しますが、古英語で thank にあたる動詞は三格支配のほか、二格支配もあり得たのでしょうか?

(もし二格支配もあり得たとすれば、名詞 thanks に後続する要素として thanks of ... を想定することが可能に思われ、可能だとすると、thanks は「御蔭で、力添えによって」の解釈に落ち着くように感じた次第です。)


う〜ん、気になります^^ ;

この件につきまして、博雅の士のご教示をお待ち申し上げております。


(追記1)

記事冒頭の「主として英語の基本的な単語が、英語に入っていつどのように変化したかを示すことに主眼がある」との評言は加島祥造『英語の辞書の話』(講談社学術文庫、1985年、p.155)より引きました。


(追記2)

thank の原義である favor は次の表現に残存していることが見えます。

thank someone for changing one's life
誰かのおかげで自分の人生が変わったことに感謝する

thank you
ありがとう、感謝します、お蔭様で


また、『ウィズダム和英辞典』(2007年、三省堂、p.215)の「おかげ」の項には

ご家族の皆さまはお元気ですか。
How's your family?

はい、おかげさまで皆元気にやっています。
They're all fine, thank you.


という例が示され、

この場合は相手が主治医などでない限り通例 Thanks to you, they're all fine.とはいわない

と注記されています。


(追記3)

大塚高信編『新英文法辞典』(三省堂、1959年、p.293)においては、dative case(与格)とは

授与・利害・影響などの働きを受ける格

であり、

「関与」を表現するのがその根本の機能であった

と述べられています。

また、『上掲書』(p.296)の dativus sympatheticus(交感与格)の項では、

元来与格には所有の意味がある。(中略)属格で所有が表現されると、直接的・理知的・事務的であるが、与格を用いると間接的・感情的・印象的である。この用法はインド・ヨーロッパ語族には古くからあった(後略)

と述べられています。


(追記4)

関連記事はこちら。

独英比較文法:「位置の影響力」の有無

現代ドイツ語(そして古英語)の名詞のもつ四つの格

現代ドイツ語の三格の形と現代英語の前置詞 to との関係

古英語の与格(現代ドイツ語の三格)と現代英語の前置詞 to の関係


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thanks to について(その1)


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河合茂『新英文法槪説』(開隆堂出版、1948年、pp.23-4)は Nouns without Singular の項において


若干の Nouns はその Plural forms のみが用ひられ Singular forms は一般に使用しない


と述べ、thanks を例のひとつに挙げています。


そして、細江逸記『精説英文法汎論 第一巻』(泰文堂、1940年、p.430)は Edith Wharton, Her Son より訳文を添えて次の一節を引いています。


But after all it was thanks to Mrs. Brown that she had found her son.(だが何と言つても顔所が子息を見附けたのはブラウン夫人で[ママ]御蔭であつた)


また、Francis Stuart, The Bridge からは


Then there was this new indication that the darkest hour was over. And it was thanks to her.(それに最惡の時は過ぎてしまつたといふ此新しい兆しがあつた。そしてそれも彼女の御蔭であつたのだ)


の箇所を挙げた上で、thanks は

副詞對格なのである

と述べています。


この点、小西友七『英語の前置詞』(p.@)によれば「英文法シリーズ」の 19.『前置詞(下)』は個々の前置詞の歴史的研究ですが、

その『前置詞(下)』(特製版第3集、p.2242)では


thanks to は my thanks to 〜 などの表現から発達したもので「(助けなどの)お陰で」の意


とされていますが適否は如何でしょう。


(追記)

慶應大学の堀田隆一先生が運営されている「hellog〜英語史ブログ」は日頃から多くを学ばせていただいているウェブサイトです。

その10月2日付の記事で現代英語における thanks to の用法について述べられています。

thanks to


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our drunken old alphabet


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マーク・トウェインは『ハックルベリー・フィンの冒険』などの著者として有名なアメリカの文豪です。

彼は不規則な英語の綴りを our drunken old alphabet と形容しています。

さて、こうした綴りの不規則性には歴史的な理由があります。

寺澤盾先生は『英語教育』の2016年10月増刊号(p.48)においてそう述べ、さらに進んで次例をその一つとして挙げておられます。

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2016年09月24日

do so, do it, do that


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do so, do it, do that の使い分けについて、Martin Hewings, Cambridge Grammar for CAE and Proficiency(Cambridge English, 2009, p.185)より備忘のため書き留めておきます。


We can use a form of do so to replace a verb and the word or phrase that follows it to complete its meaning:

When asked whether they intended to offer holidays in Africa, TransWorld Adventures said they had no plans to do so.do so = offer holidays in Africa)

He planned to go to Australia this year, but now that he has lost his job he has little chance of doing so.doing so = going to Australia)


We can use do so where the verb describes an action, but avoid it with verbs that describe states and habitual actions:

We went down the river by boat, and saw a lot of wildlife while doing so.

Some people didin't enjoy the hard work, but I did.(not but I did so ...)

Do so is mainly used in formal contexts. Less formally, we use do it or do that with a similar meaning:

We put up our tents by the side of the river. We did that at about four o'clock every afternoon. or formally We did so ...


We use do(rather than do so)in informal English, especially after modals or perfect tenses:

'Do they provide all the equipment?' 'They should (do).'

'Could you have gone to Thailand instead?' 'Yes, I could have (done).'

We can often leave out do.


(追記)

関連記事はこちら


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2016年09月03日

古い叙想法が衰退し、代わりに叙実法が用いられるようになった大きな理由


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古い叙想法が衰退し、代わりに叙実法が用いられるようになった大きな理由として、細江逸記『動詞叙法の研究』(泰文堂、1933年、pp.148-9)は


近代人の考へ方が、昔の人の考へ方よりは著しく具体的、現実的になり、抽象的、想念的な言方は成るべくこれを避け、仮令現実界を離れた想念上の事柄でも、前後の関係がこれを許し、誤解を起させる憂の無い場合には、仮りに其事柄を一先ず現実として受入れ、その上に立つて陳述なり議論なりを進める様になつたからであると考へる。而して、今日実際の場合に於いて、叙想法を用ひた場合と叙実法を使つた場合との間に、効果の上から見てその意味するところに何等言ふに足る差異無く、何れを用ひても事実上不都合の生じない


という鋭い見解を示しています。


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過去なくして現代はあらず、現代の英語を明らかにしようとするには、しばしば過去の英語を説かなければならない。否、厳密にいうならば過去の英語から由来変遷の跡をたどらずに、現代英語の真相をは握しようとするのは無理である。

細江逸記『英文法汎論 新版』(篠崎書林、1971年、p.13)


私は英語の歴史を知る(勿論浅学ではあるが)故に、又、言語の現状を説く上にはその歴史が極めて大切であって、厳密に言ふならば、その歴史をよそにしてこれを説くことは極めて危険であり、且、その歴史を参照して説くのが最も妥当適切であると信ずる(中略)即ち Jespersen の標語たる “on historical principles” といふことを徹底させんと欲する

細江逸記『動詞叙法の研究』(泰文堂、1933年、p.10)


吾々は言語の歴史を究め、過去より現在への変遷移行の跡を繹ね、そこに貫通する脈絡を把握しなくてはならない

細江逸記『動詞叙法の研究』(泰文堂、1933年、p.55)



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