2012年07月28日

sew, shew における<ew>の読み方について


PA033914.JPG


古い文書を読んでいると、shew という単語に出会います。これがずっと引っかかっていました。

次は1762年に出版された Robert Lowth, A Short Introduction to English Grammar の facsimile です。画像をクリックすると拡大します。

写真1.JPG

下から3行目、左から数えて2つ目の単語は現代英語の綴字では showing となる語です。

このことについて、『特製版 英文法シリーズ 第一集』(研究社、1959年、p.175)より備忘のため書き留めておきます。


Sew[sou](縫う)、shew[ʃou](=show)における ew という綴字は、かって行われた発音[sjuː][ʃjuː]に対應するものである。(中略)


なお、OED によれば、shew は18世紀に広く行われ、19世紀前半にも稀ではありませんでした。

今日では法律文書を除いては廃語とされているのですが、

欽定英訳聖書(A.V.)は shew であり、現在でも、おそらく shew の方が正統であるという感じからであろう、語学者にはこの形を用いる人が少なくない。


と『上掲書』(Ibid.)にあります。


(追記1)

上の画像中 f の横棒がないような形の文字は s です。19世紀頃まで語尾(語末)以外において小文字の s の代わりに用いられていました。“long s”と呼びます。

(ちなみに、この “long s” の斜体を縦に引き伸ばしたものが積分記号(integral sign)です。s がラテン語の summa(総和)の頭文字だからなのですね。)

また、名詞に大文字を使ったところが沢山あります。このことについて、福原麟太郎『英語の感覚』(研究社、1967年、p.44)では

昔の人のくせでドイツ語で、名詞は大文字で書き始めるのと似ている。名詞というのは、何か concrete なものでそれを目立たせたいのであろう。

と述べられています。

(追記2)

河合茂『英文法概論 復刻版』(明倫出版、1988年)の附録(p.26)に記述があります。

(追記3)

堀田隆一先生のブログに記事があります。

shew と show (1)

shew と show (2)


posted by 石崎 陽一 at 08:27 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする

2012年07月27日

q の次に u がくる歴史的理由


P4244928.JPG


『特製版 英文法シリーズ 第一集』(研究社、1959年、p.105)より備忘のために書き留めておきます。(漢字は新字体に改めてあります。)


q:ノルマン人の征服後、アングロ・ノルマン写字生によって輸入されたものであるが、輸入されたのは q と言うより、qu と言う方が適当であろう。即ち、q は u と結びつき、qu という形で(ラテン語、フランス語よりの借用語に用いられたのはもちろん)、OE の cw にとって代わったのである。たとえば OE の cwic は ME で quik(=alive)となる。この改革はまったく不必要なものであったのであるが、フランス系写字生が、自分に親しい綴字法に従ったのは無理もないことである。現代英語の綴り字で、非常に稀な場合を除くかぎり、q の次には必ず u が来るという習慣は、ここに由来する。


(追記1)

ME quik は現代英語の quicksilver(水銀)や成句 the quick and the dead(生者と死者)の中にこの語の原義が残っています。なるほど、quicksilver は「生きている銀」が原義なのですね。実感が湧きます。あと、quicksand(流砂), quick wine(発泡酒)にも見えますね。また、昔は quickstock と言えば livestock(家畜類)でした。なお、爪の下の感覚の鋭いところは quick(生身)であり、cut or stung to the quick は「人を深く傷つける」ことを指しています。

(追記2)

q は必ず qu という綴りで現れるのですが、語末では(grotesque のように)-que で発音は[-k]となります。

(追記3)

上記引用における略語に関して『大修館英語学事典』(大修館書店、1983年)や『研究社英語学辞典』(研究社、1940年)、『新英文法辞典』(三省堂、1965年)などを参照しつつ簡単なコメントを以下に付しておきます。

OE:古英語。Old Englishの略。文献に伝わる最古の英語は7世紀末のもので、その頃からノルマン征服(the Norman Conquest, 1066年)の後1100年頃までの英語を指します。

ME:中英語。Middle Englishの略。1100年頃から1500年頃までの英語を指します。

(追記4)

河合茂『英文法概論 復刻版』(明倫出版、1988年)の附録(p.40)に記述があります。


posted by 石崎 陽一 at 22:50 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする

i と j(その2)


P4244908.JPG


『特製版 英文法シリーズ 第一集』(研究社、1959年、p.108)より備忘のために書き留めておきます。(漢字は新字体に改めてあります。)


語尾の -y の使用を促した原因も、j の場合と同様で、紛れやすい文字を明瞭にするためであった。この -y は、英語においては、一種の書字法慣習となり、i は語尾に来ることがなくなった。屈折形、たとえば cities, holier, carries, wearisome などにおいて i が現れるのは、i が語中であって語尾(語末)でないからである。PE においては、外来語、新造語以外の単語、即ち本来英語であった語はけっして i に終らない。


(追記)


上記引用における略語に関して『大修館英語学事典』(大修館書店、1983年)や『研究社英語学辞典』(研究社、1940年)、『新英文法辞典』(三省堂、1965年)などを参照しつつ簡単なコメントを以下に付しておきます。

PE:Present-day English の略。特に20世紀以降の英語を指す。さらに最近の英語を指す場合にはContemporary Englishをそれぞれ使います。


posted by 石崎 陽一 at 22:13 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする

i と j(その1)


P4244903.JPG


『特製版 英文法シリーズ 第一集』(研究社、1959年、p.108)より備忘のために書き留めておきます。(漢字は新字体に改めてあります。)


両者は本来同一文字の二つの形であり、いわば j は i の分身である。j は、起原的には、i が読み間違えられないようにという配慮から考えられたいろいろな書字法的便宜の一結果として生じたものである。即ち、古写本の小文字(minuscule)の i は小さくて目立たなかったため、隣接文字、殊に m,n,u などの縦棒(minim)と間違えられやすく、初めは無かった点(dot)をつけることが行なわれ、更に語頭の i は度々線の上か下、または両方へ長くのばされ、また語尾の i は普通線の下へのばされた。語頭で長い形が用いられたことから、それが孤立しているときにも用いられたことが当然考えられる。以上のことから次のことがわかる。一人称単数代名詞は、要するに、数字の 1(one)と同じ扱いをうけて大文字であるにすぎず、イギリス人の自己主張をあらわすものでないこと、数字における iij, viij などの書き方は古い習慣であること、など。なお、英語における語尾の -i(即ち -j)は、-y にとって代られたため、あまり用いられなかった。


posted by 石崎 陽一 at 22:08 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする

PE における æ の使用について


ya_080.jpg


田中美輝夫『英語アルファベット発達史−文字と音価−』(開文社、1970年、p.192)より備忘のため書き留めておきます。


Renaissance 以後、ラテン語およびラテン化されたギリシャ借用語に再び æ の記号が現れる。しかしこれは OE の æ とは別の文字である。(中略)この古いラテン語の æ は PE では主として古典語の固有名詞に僅かに残っている。æ =[iː]
  [例]Æneid, Æsop, Cæsar, etc.



(追記1)

『特製版 英文法シリーズ 第一集』(研究社、1959年、p.111)より備忘のため書き留めておきます。

2個の字が一つの音をあらわすときこれを二重字(Digraph)と言い、3個の字が一つの音をあらわすときこれを三重字(Trigraph)と言う。æ は抱き字(Ligature)と言うが、これを ae と書けば二重(母音)字((Vocalic)Digraph)と言うことになる。


(追記2)

上記引用における略語に関して『大修館英語学事典』(大修館書店、1983年)や『研究社英語学辞典』(研究社、1940年)、『新英文法辞典』(三省堂、1965年)などを参照しつつ簡単なコメントを以下に付しておきます。

OE:古英語。Old Englishの略。文献に伝わる最古の英語は7世紀末のもので、その頃からノルマン征服(the Norman Conquest, 1066年)の後1100年頃までの英語を指します。

PE:Present-day English の略。特に20世紀以降の英語を指す。さらに最近の英語を指す場合にはContemporary Englishをそれぞれ使います。


posted by 石崎 陽一 at 16:36 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする

kn- の表記について


P1044588.JPG


田中美輝夫『英語アルファベット発達史−文字と音価−』(開文社、1970年、p.144)より備忘のため書き留めておきます。


kn- は OE cn- が ME kn- となったもので、中世の書法では cn は m などと混同される恐れがあったためであろう。今日でも筆記体では cn の結合は不明瞭になり易い。


(追記)

上記引用における略語に関して『大修館英語学事典』(大修館書店、1983年)や『研究社英語学辞典』(研究社、1940年)、『新英文法辞典』(三省堂、1965年)などを参照しつつ簡単なコメントを以下に付しておきます。

OE:古英語。Old Englishの略。文献に伝わる最古の英語は7世紀末のもので、その頃からノルマン征服(the Norman Conquest, 1066年)の後1100年頃までの英語を指します。

ME:中英語。Middle Englishの略。1100年頃から1500年頃までの英語を指します。


posted by 石崎 陽一 at 05:16 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする

i の上の点(‘dot’)について


DSCN0250.JPG


田中美輝夫『英語アルファベット発達史−文字と音価−』(開文社、1970年、p.110)より備忘のため書き留めておきます。


i の上の点(‘dot’)は、本来この文字の一部ではなく、単なる区分記号にすぎなかった。この‘dot’は、この文字の形があまりに簡単で他の文字の一画と見誤られる恐れがあるので、それに区分記号を冠したことに始まる。この符合には初め種々の形が試みられたが、結局現在見られるような‘round dot’に落ち着いた。


実際、i にドットがないため、次の写本では in が ın となり、m のように見えています。画像をクリックすると拡大します。鉛筆書きの矢印の始点部分にご注目ください。

写真3.JPG

なお、上の画像は Dennis Freeborn, From Old English to Standard English: A Course Book in Language Variation across Time(London:Macmillan, 1998, p.108)より採りました。


posted by 石崎 陽一 at 05:10 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする
ページトップへ戻る