2014年01月17日

英米人の姓(その5)


ELL85_akaianemono500-thumb-260xauto-3092.jpg



ケルト系には、Mac- 以外に O'- のつく姓があります。

この O'- とはアイルランド出身者に多い姓で、「〜の子孫」の意味のケルト語です。

アイルランドの作家 O'Flaherty [o-flέəti], アメリカのノーベル賞作家 O'Neill [o-níːl], 同じく短編作家 O'Hara [o-hάːrə] などがそれです。

この O'- の場合は次を必ず大文字で書き出します。その意味からも o'clock の o'- とは違うものということがわかるはずです。

(ちなみに、後者は of the clock が詰まって1語になったものです。)

これまで挙げてきたものは英米人の姓ではありますが、英語以外の言語を要素に持っている例でした。

これに対し、本来の英語を要素にしたものでは第一に -son の付いた姓を挙げなければなりません。

続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月16日

英米人の姓(その4)


EFL_85_hanatokosumosu500-thumb-260xauto-3948.jpg



親を示す姓というのが西欧社会には古くからありました。

その初めは前回の記事で挙げたようないきさつで付けられたもので、

本来は一代ごとにそれに応じて変えられていた命名法が、やがていつしか固定しその家名を示すようになりました。

ペルシャの詩を訳して有名な英国の詩人 Edward FitzGerald [fitsdʒérəld] (1809-83)や同名のアメリカの作家 Francis S. K. FitzGerald はどちらも Gerald の息子という内容の姓です。

Fitz- の付くのがノルマンの貴族の出などに見られ、フランス系の姓であるのに対し、同じく前に冠して息子ということを示す姓にはケルト系のものがあります。

続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月15日

英米人の姓(その3)


B102_arufabettonogumi500-thumb-260xauto-1917.jpg



以前2回にわたって英米人の姓の由来について記し、大別すると英米人の姓は地域、職業、特徴・性質からついたものと親がかりでついたものに大別できると述べました。(こちらこちら。)

これから何回かに分け、前回書き残した、親がかりでついた姓について、書きたいと思います。


続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月07日

本来語は原住民、外来語は移住民


OHT96_higaochitasougenoki500-thumb-260xauto-3234.jpg



佐藤弘『英語辞書の知識』(八潮出版社、1977年、p.95)より備忘のため書き留めておきます。


(前略)語源研究の立場から重要なことは、多くの言語には他の言語からの借用語(loan word)が多かれ少なかれ見られることである。これを本来語(native word)に対して外来語ということもある。語の借用は同一語族の言語間で行われることもあり、また発生的に関係がないとされている言語間で起こることもある。日本語のアイロン、アルバイトは後者の例である。本来語を原住民とすれば、外来語は移住民といえよう。そして言語によって、語の借用に寛大なものと、寛大でないものとがあるのは興味深い。後者に属するものとしてギリシャ語、ドイツ語、前者に属するものとしてラテン語、英語そして日本語がある。英語はイギリスの歴史を反映して、外来語が全語彙の半分以上に達している。


posted by 石崎 陽一 at 22:17 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

語源とは?


LOK_zoukibayashiwomiageru500-thumb-260xauto-1319.jpg



佐藤弘『英語辞書の知識』(八潮出版社、1977年、pp.89-90)より備忘のため書き留めておきます。


語の起源と歴史の記述あるいは説明を語源(etymology)という。すなわち語の戸籍に相当するのが語源である。英語の専門家や英語の歴史に関心を持っている人などは、語の発音・つづり字・語義などを深く理解し、英語が発達してきた手がかりをつかむためには、語源が重要であることを知っている。


posted by 石崎 陽一 at 22:07 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月06日

英米人の姓(その2)


img_5efeb830faab6e33315beac4f55c869ec36d5788.jpg



姓は代々伝わっているうちに、その語形が一部摩滅したり、途中で語形を手入れしたりしたため原形とはかなり離れた姿となってしまったものがあります。

また姓は古くから伝わっているものですので、今では使われない古形や方言が元になっているものがあるのも頷けましょう。

しかし、大別しますと、英国人の姓は次の四つのうちのどれかにあてはまるようです。


続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月05日

英米人の姓(その1)


img_786aa27659f7204a13af3a3ea6281b46a71395fc.jpg



英国の社会では、もともと名は1つしかありませんでした。

中世の半ばまでは、英国人は個人名があるだけで、まだ家代々に伝わる姓がなかったのです。

続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 03:05 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月30日

eve がなぜ「前夜」を表すか?


img20091227174220.jpg



Christmas Eve(クリスマス前夜), New Year's Eve(大晦日)などに使われる Eve という語は、evening の一つの形であることに疑いはないでしょう。

しかし、Eve という語がこのように頭文字が大文字で書かれるのは、それが特別の夜だからで、固有名詞でないときには、the eve of the funeral(葬式の前夜)のように小文字になります。

ですから大文字で書かれたときだけが「前夜」というわけではありません。

それなら、なぜクリスマスの晩、正月の晩ではなく、その「前の晩」ということになるのでしょうか。


続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月13日

名前とその愛称(その3)


etymology.jpg


女性名


Ann [ǽn], Anna [ǽnə]

ヘブル語では ‘恵み’ の意味。

愛称は Annie, Nan, Nancy, Nanny。


Elizabeth [ilízəbəθ]

ヘブル語で ‘神に捧げられた’ の意味。

愛称はたくさんの形があり、Eliza [iláizə], Elsie [élsi], Liz, Liza [láizə], Lizzie [lízi], Libby, Bess, Bessie, Bessy, Beth, Bets(e)y, Betty などです。


Lucy [lúːsi]

おそらくラテン語の光(lux)という意味が元だというから、日本語の ‘光子’ に当たることになりますね。


Mary [mέəri]

フランス流の綴りでは Marie [mάːri], ラテン式だと Maria で、さらにギリシャ、ヘブルまで遡れますが、その原意には二、三の説があってはっきりしません。

しかし非常に多い女性名で、愛称のほうも、Mae [mei], Mamie, Marietta, May, Moll, Molly, Poll, Polly など色々の姿になっています。


(追記)

関連記事は以下のリンク先を参照してください。

『データで読む 英米人名大百科』(南雲堂、1987年)

Browning という人名の語源

MacArthur という人名の語源

Price という人名の語源

Nelson という人名の語源

Tennyson という人名の語源

O'Henry という人名の語源


posted by 石崎 陽一 at 02:05 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

名前とその愛称(その2)


imagesCAAUPP34.jpg


Henry

元は古いドイツ語で ‘なわばりの支配者’ という意味。

今のドイツ語ではハインリッヒ(Heinrich)、フランス語ではアンリ(Henri)と言います。

愛称は Harry [hǽri], Hal [hǽl]。


John

元はヘブル語で ‘神は恵みあり’ の意味。

ドイツ語ヨーハン(Johann)、ハンス(Hans)、フランス語ジャン(Jean)、ロシア語イヴァン(Ivan)なども同じ名前。

愛称は Johnny ですが、別に Jack が古くからほとんど独立した愛称となって使われています。


Peter

ギリシャ語では ‘大きい石’ の意味でした。強い堅い性格を願った名なのでしょう。

英語の petroleum(原義 ‘rock oil’ 石油)にその原意が残っています。


Richard

元は古いドイツ語で ‘厳しい支配者’ のこと。

Ritchie とか Dick がその愛称。


Thomas

古代ギリシャ時代からあった名で、元は ‘ふた児’ の意味でした。愛称は Tom とか Tommy。

一般に ‘Tommy’ と言えば英国の兵隊の愛称になるのは、この名が英国人一般に多いからです。

さらに ‘Tom, Dick and Harry’ というのは英国人のごくありふれた名前(愛称)を三つ並べたもので ‘普通の人たち’‘誰も彼も’‘猫も杓子も’の意味に使います。


William

ごく古いドイツ系の名で、原意は ‘厳たるカブト’ のこと。

非常に多い名で、愛称は Will, Willie, Bill, Billieなど。


posted by 石崎 陽一 at 01:40 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

名前とその愛称(その1)


無題.png



英米ではギリシャ、ローマの偉人や聖書に出る聖者、王族その他の有名な人などにあやかって名をつけることが多いです。

このような個人名は、誕生のあとで行われる洗礼の式のときに与えられるのが普通ですので、

英語では洗礼名(Christian name, font name)と言います。

ときには given name ということもありますね。

日本でも名は男女によって違っているように、英語の場合でもその区別ははっきりしています。

また名を崩して愛称とする仕方もだいたい一応の型がありますので、英語でよく見かける名前とその愛称を次に掲げてみましょう。


続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 01:22 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月09日

クリスマスにちなんだ語(その8)


December.jpg



今月の名前の由来を眺めてみましょう。

December はラテン語 decem + ber という造りで、元来はローマ暦の10月に当たりました。

dec が「10」の意味であることは

decagon(十角形), decade(10年間), decagram(デカグラム、10グラム), Decameron(ボッカチオの作『十日物語』), decameter(デカメーター), decathlon(オリンピックの十種競技)

などに表れています。

語尾の -ber の意味は不明です。

この月の前3つは November の源であるラテン語 novem が nine の意で novena(ローマ教の9日間の祈り), novenary(9の)などが出ており、

October の源であるラテン語 octo が eight の意で octagon(八角形), octahedron(八面体), octave(オクターブ), octopus(eight-footed すなわち、たこ)などが出ており、

September の源であるラテン語 sept は seven の意で septangle(七角形), septenary(7より成る), septuple(7倍)などが出ている。

これらの月がそれぞれに正しくは7月、8月、9月であるのは、ローマの暦法では March が1月であったためです。

紀元前2世紀の半ばに暦を改めて January を1月とする必要が生じたので March はずれて3月となり、

以下どの月も2ヶ月繰り上がってしまったのですね。

数詞を織り込んでいない月名の場合には何ヶ月ずれようとも名称の上で何のさしさわりも生じませんが、

September 以下のように、数詞が使ってある月名の場合には、名と実が一致しなくなりますので、ずいぶん変なことになったわけです。


(追記)

なお、ラテン語から月名を借りる以前の古英語時代には、例えば、1月を Wulf-mōnaþ(= wolf-month), 9月を Hærfest-mōnaþ (= harvest [または autumn] month)というように固有の月名を持っていました。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(4) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月07日

クリスマスにちなんだ語(その7)


frankincense.png



キリスト誕生の記事を読みますと、三人の wise men(「博士たち」と聖書では訳しています)が東方から拝みにきたことになっています。

そして、三人がお祝いに持参したものは gold, myrrh, frankincense の三種の礼物でした。

いずれも、当時としては最も価値の高い、尊い品でありました。

frankincense [frǽŋkinsens] は「乳香」と訳し、香料であると同時に外用薬品でもありました。

甘い、強烈な香りをして燃えるゴムの樹脂です。

造りは frank + incense の結合ですね。

frank からは frankly(=in a frank manner, freely)が派生しました。

すなわち、frank は free とか pure とかの意味です。

incense は ‘that which is set on fire’(香として焚かれるもの)のこと。

これからすぐに連想されるのは incendiary(放火犯人), incendiarism(放火)です。

incensory は「釣香炉」、すなわち censer のことですが、censer は動詞 cense(香を焚く)から派生した語。

cense は incense から出ました。



myrrh.jpg



myrrh [məː] も一種の香気ある樹脂で、香料として用いられました。

「没薬」と訳されるものですが、m-y-r-r-h という奇怪な綴り字から察せられるように、元来は英語ではありません。

アラビア語の murr(bitter の意味)から来たことで明らかなように、その味は苦い。

前回までの記事で既にいくつかの実例が示されたわけですが、

英語が外国語からその要素を摂取することに極めて勇敢な言語です。

古くは Scandinavian からはじめて、Latin, Greek, Hebrew, French などから、Spanish, Portuguese, Italian その他、日本語から入った英語まであります。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月06日

クリスマスにちなんだ語(その6)


sleigh.jpg



Santa Claus のそりは sleigh [slei] と呼ばれますが、このそりは sled, sledge などとはどう違うのでしょうか?

語源的には、sled が源で、[d] 音が脱して縮小した語が sleigh であり − 綴り字は多くなっていますが − sledge は転化したものです。

いずれも動詞 slide(すべる)に関係があります。

なお、sleigh は主としてアメリカとカナダで用いられ、sled は主として方言に非ずんばアメリカでの用語になっています。

一つの語から派生して、多少の近似性を持つ語が英語には少なくありません。

例えば、shirt と skirt は、同じ身につけるものでありながら、前者は上半身に用いるものとなり、後者は下半身に身につけるものとなりました。

他にも、whole と hale, from と fro, attach と attack, road と raid, antic と antique など類例は多数あります。

その差を調べてみても面白いのではないでしょうか。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月05日

クリスマスにちなんだ語(その5)


reindeer.png



Santa Claus のそりを引く reindeer には鹿という意味がダブっています。

というのも、古ノルド語(Old Norse)では rein 1語で「トナカイ」を指していたのに、この語が英語になってから、英語にある deer にあたる語が後につくことになったからです。

なお、turtledove(ヤマバト)も同じ語源的発生の語です。

turtle(ラテン語の turtur)1語で dove の意味があるのに、その後が英語になってから、ハトであることを明らかにして dove を添加して造られたのですね。

しかし、今では turtledove が普通に使われ、本家の turtle は古語になっています。

このように、語は生物と同じように、養子になったり、廃せられたり、時には、死んでしまうこともあるのです。



turtledove.jpg



reindeer のような冗語的用法の傑作はアルマダ艦隊でしょう。

紀元1588年スペイン王 Philip Uがイギリス征討のために派遣した有名な艦隊を the Invincible Almada と称し、無敵艦隊と訳されています。

armada は fleet of warships の意味を持つスペイン語から来たのですから、アルマダ艦隊は艦隊艦隊ということになってしまうのです。


(追記)

古ノルド語(Old Norse)は紀元8世紀から14世紀に至るまでノルウェーやその植民地で用いられた語を指して言う語です。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月04日

クリスマスにちなんだ語(その4)


Santa Claus.jpg



クリスマスになくてはならないものの一つは Santa Claus [sǽntə klɔ́ːz] です。

Christmas Eve(クリスマス前夜)にこの白髭赤顔の好々爺が八頭の reindeer(トナカイ)に sleigh(そり)を引かせて北国から来るというのです。

ことの起こりはオランダ語の Sint Klaus または Sante Klaas なる聖人が子供たちにプレゼントを与えたとの言い伝えから、

アメリカで Saint Nicholas [níkələs] として知られるようになったもの。

初めて称えられ出したのが1820年代のことです。

Santa が holy に関係のあることは saint をはじめ、sanctify(浄める), sanction(制裁), sanctuary(聖域、霊廟)などで容易に知られます。

saint が [sənt, sən, sin] などと発音されるので、San Francisco がイタリアの高僧 St. Francis にちなんで命名されたことが明白ですし、

その他地名に「サン…」とある場合、その起こりが容易に察せられます。


(追記)

本記事の執筆に際し、稲垣美晴『サンタクロースの秘密』(講談社文庫、1995年)を参照しました。

稲垣さんのご本は『フィンランド語は猫の言葉』(講談社文庫、1995年)も面白いですよ。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月03日

クリスマスにちなんだ語(その3)



人間はものぐさにできている動物です。

上品に解釈すれば経済観念が発達しているとも言えます。

日本語でもスマートフォンを縮めてスマホ、就職活動を略してシューカツなどと言いますが、

英語にも頭文字だけを取って縮めた短縮語がたくさんあります。



UFO.jpg



日本語としてもよく使う ID カードの ID は、identification(身元確認、身分証明)を縮めたもの。

これを動詞にすると identify(身元を確認する)になります。

よって、身元を確認できない飛行物体は unidentified flying object であり、

頭文字をとって切り詰め UFO と呼んでいますね。

(ですから、身元が確認できた段階で IFO になる由。)

原語を長たらしく呼ぶよりもはるかに意味が伝達しやすいわけです。

同じように、Christmas の略語は Xmas です。



xmas_hat.jpg



ギリシャ語でキリストとは Khristós と言い、the Anointed One(油そそがれし者)の意です。

ユダヤでは油を頭にそそぐのは王者の印だったのですね。

Khristós の略字である K が英語の X に当たるので、X で Christ に代用しました。

したがって、X'mas とアポストロフィを入れるのは誤用ということになります。

また、Xmas は [éksməs] ではなくて、やはり[krísməs] と呼ぶのが正しいのです。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月02日

クリスマスにちなんだ語(その2)


michaelmas.jpg



前回は Christmas を取り上げましたが、

同じ -mas の仲間に Michaelmas といって9月29日のミカエル祭があります。

Michael はヘブル語で、‘who is like god’(神の如きもの)という意味を持つ「天使長」です。

先の Christmas とともに、発音の上で似た変化が見られます。

Christ [kraist] が -mas に先行すると [t] 音を脱した上に短母音となって [krísməs] となるのと同様に、

Michael [máikl] という天使の長母音が変化して [míklməs] となります。

ちなみに、イギリスでは土地・家屋の貸借料を支払う日が年に4回あって、それを quarter day(四季支払い日、節季)と称えるのですが、

ミカエル祭とクリスマスはそれに当たっています。


posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2013年12月01日

vocable から vocabulary へ



vocabulary は綴りが難しい単語ですが、

vocable + -ary

という造りに着目すると覚えやすくはなりますまいか。



vocabulary.jpg



vocable は voice + -able という造りからわかるように、

「発声可能な、発音可能な」という意味のほか、

意味に関係なく音の組み合わせとして見た場合の

「単語、(単語の)音」

を表す語です。

この vocable(単語)に「何々の置き場」を表す語尾の -ary が付くと

vocabulary となります。

diction(語)から dictionary(辞書)が

formula(公式)から formulary(公式集)が

それぞれ生まれたのと同じですね。

vocabulary の方は

「単語集、辞書」

という語義から、

一個人、著書、ある階級の人などの有する

「語彙(の総数)」

を意味するようになりました。

なお、vocabular と言えば「語の、言葉の」の意です。


(追記1)

vocable ➔ vocabular, vocabulary

の語形変化の理解には

angle(角)➔ angular(角の)
muscle(筋肉)➔ muscular(筋肉の)
single(単一、一個)➔ singular(単一の、個別の)

など類似の語形変化の様子が参考になります。


(追記2)

辞書の由来について、佐々木達『英学断想』(三省堂、1979年、pp.209-10)より引きます。

西欧での辞書の起原の一つは「グロサリー」(gossary, 集注)である。これは文字通り「注を集めたもの」である。その昔、紀元七世紀のヨーロッパでは、ラテン語が唯一の学問語 −つまり学問的知識を書き記すことば− であった。だから、その書き物を読むためには、どうしてもラテン語を知らなければならない。ところが研究する人たちは、伊・仏・西・英など諸国にわたっていたから、当時すでに死語になっていたラテン語に熟達しているわけではない。おそらくそれを読むために四苦八苦したであろう。(後略)

だからラテン語の原典を読む者は、むずかしい語句が出てくると、その意味をやさしいラテン語や自分の国の言葉で、行間や欄外に書き込むことにしていた。(中略)この書き込みを「グロス」(gloss, 注)と言い、それを集めたものがグロサリーなのである。

もう一つの起りは「ヴォキャブラリー」(vocabulary, 語集)というもので、ラテン語の学習者が記憶に便利なように、単語を意味の類似によって分類し、それを集めたものである。これは日本の中高生の単語帳に似ているが、「シソーラス」(thesaurus, 類語辞典)の特徴を加味したと言ったほうがいい。が、このヴォキャブラリーは結局グロサリーに吸収されてしまった。

そこで話をグロサリーに戻そう。グロサリーは一冊の原典についてそれぞれ作られたのが始まりである。が、別々に作られたものを一か所に集めて、多くの原典がそれを頼りに読めるように、という極めて自然な欲求が生れた。これが後の本格的な辞書のそもそもの起りである。現在でもグロサリーという言葉は、中世の名残りを留めて「難語辞典」という意味に使われている。



posted by 石崎 陽一 at 17:19 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

クリスマスにちなんだ語(その1)



今月は12月。

12月はクリスマスの月と言われますので、クリスマスにちなんだ単語を調べてみましょう。



christmas.jpg



「基督降臨祭」と書くよりは「クリスマス」のほうが私たちに親しみを感じさせます。

Christ は「キリスト」ですから、それならば mas は「降臨祭」かと思いますが、さに非ず。

Christmas は Christ's mass が縮まった語で、mass はキリスト教の旧教で称える「ミサ」のこと。

聖餐式(Communion)またはその祭典を指しています。

したがって、クリスマスはキリストのための最も大切な祭典である、誕生祝いの祭典を意味しているのですね。

なお、mass はラテン語の missa に由来していますが、missa は to send の意の動詞から派生した名詞。

よって、mission とは sending または delegation の意。

すなわち「派遣、使節、伝道、布教」などの意味になることも併せ考えることができます。


(追記1)

アメリカでは最近、さまざまな宗教に配慮し、

公の場では Merry Christmas! ではなく Happy Holidays! と言うことがあります。

クリスマスカードの文面も、そう印刷されているものが多いです。

「クリスマスツリー」を「ホリデーツリー」と呼ぶこともあります。

ちなみに、クリスマスの色は赤と緑で、青と白はハヌカの色ですね。


(追記2)

キリスト教では、本来、1月6日の顕現節(公現祭)までがクリスマスのお祝いなので、それまで飾りは外しません。25日のクリスマスから12日目にあたる1月6日の夜が十二夜です。シェイクスピア最高の喜劇のタイトルにもなっています。もっとも、劇中には十二夜の祝宴に関わるような言及はないのですが。


(追記3)

The Twelve Days of Christmas という有名な歌があり、12月25日から1月6日までを指します。だんだんプレゼントが増えて歌詞が長くなっていくのが楽しい歌です。




posted by 石崎 陽一 at 00:00 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする
ページトップへ戻る