2014年03月23日

ラテン語の動詞 dormīre(眠る)にまつわる英語


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英語に dormant という形容詞があります。

動植物が休眠状態であることや火山が活動を休止していることを述べたり、

比喩的に、才能などが眠っていて未開発の状態に留まっていることを述べたりするのに用いるラベルです。

例を見てみましょう。


dormant abilities(眠っている能力、潜在能力)
dormant snake(冬眠中のヘビ)
dormant volcano(休火山)
long-dormant volcano(長期間活動を休止している火山)
dormant account(休眠口座(=何年も出し入れのない口座))

remain dormant during the winter
(冬の間休眠している、冬眠している)
remain dormant over winter
(休眠して冬を越す)
require a winter dormant period
(冬季の休眠期間が必要である)



この dormant という英語は、語形から推測される通り、「眠る」を意味するラテン語 dormīre(フランス語 dormir)と関係があります。

そのことは知っていたのですが、dormitory とも関係しているとは知りませんでした。

dormitory は学校や僧院などの「寄宿舎、寮」を意味する語ですけれども、たしかに、そこは皆が「眠る」場所に違いありません。



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ある英和辞典によると、イギリス英語では、おもに、大人数のための「共同寝室」の意味で用いられるとのことです。

実際、dormitory における -ory は「ある目的のための場所」を表す語尾なのですね。


crematory(荼毘に付す場所 ➔ 火葬場)
factory(作る場所 ➔ 工場)
laboratory(骨折って働く場所 ➔ 実験室)
observatory(観測する場所 ➔ 観測所、気象台、天文台)
lavatory(洗う場所 ➔ 洗面所、手洗い)



英単語とは実に面白いものであり、ひとつの語が実に巧妙に組み立てられていることを改めて確認した次第です。


(追記1)

dormitory の原義が「眠る場所」だということをひとたび押さえると、dormitory suburb(dormitory town)が「ベッド・タウン、郊外住宅地」を意味したり、dormitory-car が「寝台車」を意味したりすることも容易に理解されることでしょう。


(追記2)

ラテン語の動詞 dormīre(眠る)にまつわる英語はほかに

dorminitive(眠気を誘う;催眠薬)

などがあります。


posted by 石崎 陽一 at 09:17 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年02月11日

interpretor ➔ interpreter


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寺澤芳雄 編『英語語源辞典(縮刷版)』(研究社、1999年、p.731)によりますと、interpreter という語において、語尾 -er が用いられるようになったのは16世紀からとされています。-er が優勢になった背景にはどんな事情があったのでしょうか。ご教示いただけたら幸いです。


このようなお尋ねを慶應大学の堀田隆一先生へさせていただいたところ、


まだ少し調べたにすぎませんが,-or → -er の鞍替えは,interpreter に限らずいくつかの語で生じているようなので,単発ではなく集団で考えるほうがよいのではないかという印象をもっています.-er, -eur, -or, -our などの動作主接尾辞の問題は,通時的にも共時的にも難しそうですが,少しずつ調べてみたいと思います.調べた結果は,何らかの形でフィードバックします.


とのご返信をいただきましたが、

このたび、運営されている「hellog 〜 英語史ブログ」にてご回答くださいました。

以下がその記事です。


interpretor → interpreter

-er or -or

interpretor → interpreter (2)

interpretor → interpreter (3)


堀田先生、ありがとうございました。


posted by 石崎 陽一 at 16:13 | Comment(2) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月18日

Every cloud has a silver lining.


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スーツで生地と言えば、多くの場合、表地を指します。

表地は、スーツを着た状態で最も目立ち、最も多くの面積を占め、全体の雰囲気を作ります。

しかし、あまり意識されない生地がもう一つあります。

そう、裏地です。

表地は滑りにくいため、特に袖を通す際など、裏地がないと引っかかってしまいます。

また、裏地がないと、皮脂や汗、衣服とのこすれによる摩耗で表地が汚れてしまいます。

着やすくする、表地を汚れや摩擦から守る、こういった役割が裏地にはあるのですね。



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silver lining はもともと服などにつけて上記のような役割を果たす「銀の裏地」のことを指していましたが、

比喩的には「絶望や不幸の中での明るい望み」の意味に使われています。


With the California unemployment rate at more than 12 percent, some are finding that being out of work has a silver lining: more time to get in shape and improve their health.(COCA)

Sure, you're discouraged, but don't give up yet. That silver lining is up there somewhere.(E-DIC)



では、どうして silver lining(銀の裏地)に「希望」という意味が生じたのでしょうか。

それは、次の諺があるからです。


Every cloud has a silver lining.


もちろん、ここでいう silver lining とは、暗雲といえどもそれに強い太陽の光が当たると、その雲の切れ目などの上層部が日光を反射して白く輝くことを言ったもの。

たとえ最悪の状況でも、それを埋め合わせるような良い面があるということです。

不幸や災難のどん底にも、一抹の光、一縷の望みがあるというのは、どんなにか心強いことでしょう。


posted by 石崎 陽一 at 13:31 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

英米人の姓(その6)


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これまでの説明からもわかりますように、

ノルマン系の Fitzstephen と英語系の Stevenson, さらに所有格形の Stephens はどれも同じく Stephen の息子ということを示しており、

MacDonald と Donaldson はどちらも Donald の息子のことで、MacTavish と Dawson と Davidson は表現こそ違え、どれも親が David であることを表しています。

さらに O'Neil と Neilson がともに Neil の息子であることは付け加えるまでもないでしょう。

ともかく、英米人の姓にはこのように誰それの子であることをうたった姓がたくさん残っているのですね。


posted by 石崎 陽一 at 12:03 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月17日

英米人の姓(その5)


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ケルト系には、Mac- 以外に O'- のつく姓があります。

この O'- とはアイルランド出身者に多い姓で、「〜の子孫」の意味のケルト語です。

アイルランドの作家 O'Flaherty [o-flέəti], アメリカのノーベル賞作家 O'Neill [o-níːl], 同じく短編作家 O'Hara [o-hάːrə] などがそれです。

この O'- の場合は次を必ず大文字で書き出します。その意味からも o'clock の o'- とは違うものということがわかるはずです。

(ちなみに、後者は of the clock が詰まって1語になったものです。)

これまで挙げてきたものは英米人の姓ではありますが、英語以外の言語を要素に持っている例でした。

これに対し、本来の英語を要素にしたものでは第一に -son の付いた姓を挙げなければなりません。

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2014年01月16日

英米人の姓(その4)


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親を示す姓というのが西欧社会には古くからありました。

その初めは前回の記事で挙げたようないきさつで付けられたもので、

本来は一代ごとにそれに応じて変えられていた命名法が、やがていつしか固定しその家名を示すようになりました。

ペルシャの詩を訳して有名な英国の詩人 Edward FitzGerald [fitsdʒérəld] (1809-83)や同名のアメリカの作家 Francis S. K. FitzGerald はどちらも Gerald の息子という内容の姓です。

Fitz- の付くのがノルマンの貴族の出などに見られ、フランス系の姓であるのに対し、同じく前に冠して息子ということを示す姓にはケルト系のものがあります。

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2014年01月15日

英米人の姓(その3)


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以前2回にわたって英米人の姓の由来について記し、大別すると英米人の姓は地域、職業、特徴・性質からついたものと親がかりでついたものに大別できると述べました。(こちらこちら。)

これから何回かに分け、前回書き残した、親がかりでついた姓について、書きたいと思います。


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2014年01月07日

本来語は原住民、外来語は移住民


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佐藤弘『英語辞書の知識』(八潮出版社、1977年、p.95)より備忘のため書き留めておきます。


(前略)語源研究の立場から重要なことは、多くの言語には他の言語からの借用語(loan word)が多かれ少なかれ見られることである。これを本来語(native word)に対して外来語ということもある。語の借用は同一語族の言語間で行われることもあり、また発生的に関係がないとされている言語間で起こることもある。日本語のアイロン、アルバイトは後者の例である。本来語を原住民とすれば、外来語は移住民といえよう。そして言語によって、語の借用に寛大なものと、寛大でないものとがあるのは興味深い。後者に属するものとしてギリシャ語、ドイツ語、前者に属するものとしてラテン語、英語そして日本語がある。英語はイギリスの歴史を反映して、外来語が全語彙の半分以上に達している。


posted by 石崎 陽一 at 22:17 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

語源とは?


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佐藤弘『英語辞書の知識』(八潮出版社、1977年、pp.89-90)より備忘のため書き留めておきます。


語の起源と歴史の記述あるいは説明を語源(etymology)という。すなわち語の戸籍に相当するのが語源である。英語の専門家や英語の歴史に関心を持っている人などは、語の発音・つづり字・語義などを深く理解し、英語が発達してきた手がかりをつかむためには、語源が重要であることを知っている。


posted by 石崎 陽一 at 22:07 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2014年01月06日

英米人の姓(その2)


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姓は代々伝わっているうちに、その語形が一部摩滅したり、途中で語形を手入れしたりしたため原形とはかなり離れた姿となってしまったものがあります。

また姓は古くから伝わっているものですので、今では使われない古形や方言が元になっているものがあるのも頷けましょう。

しかし、大別しますと、英国人の姓は次の四つのうちのどれかにあてはまるようです。


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2014年01月05日

英米人の姓(その1)


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英国の社会では、もともと名は1つしかありませんでした。

中世の半ばまでは、英国人は個人名があるだけで、まだ家代々に伝わる姓がなかったのです。

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2013年12月30日

eve がなぜ「前夜」を表すか?


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Christmas Eve(クリスマス前夜), New Year's Eve(大晦日)などに使われる Eve という語は、evening の一つの形であることに疑いはないでしょう。

しかし、Eve という語がこのように頭文字が大文字で書かれるのは、それが特別の夜だからで、固有名詞でないときには、the eve of the funeral(葬式の前夜)のように小文字になります。

ですから大文字で書かれたときだけが「前夜」というわけではありません。

それなら、なぜクリスマスの晩、正月の晩ではなく、その「前の晩」ということになるのでしょうか。


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2013年12月13日

名前とその愛称(その3)


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女性名


Ann [ǽn], Anna [ǽnə]

ヘブル語では ‘恵み’ の意味。

愛称は Annie, Nan, Nancy, Nanny。


Elizabeth [ilízəbəθ]

ヘブル語で ‘神に捧げられた’ の意味。

愛称はたくさんの形があり、Eliza [iláizə], Elsie [élsi], Liz, Liza [láizə], Lizzie [lízi], Libby, Bess, Bessie, Bessy, Beth, Bets(e)y, Betty などです。


Lucy [lúːsi]

おそらくラテン語の光(lux)という意味が元だというから、日本語の ‘光子’ に当たることになりますね。


Mary [mέəri]

フランス流の綴りでは Marie [mάːri], ラテン式だと Maria で、さらにギリシャ、ヘブルまで遡れますが、その原意には二、三の説があってはっきりしません。

しかし非常に多い女性名で、愛称のほうも、Mae [mei], Mamie, Marietta, May, Moll, Molly, Poll, Polly など色々の姿になっています。


(追記)

関連記事は以下のリンク先を参照してください。

『データで読む 英米人名大百科』(南雲堂、1987年)

Browning という人名の語源

MacArthur という人名の語源

Price という人名の語源

Nelson という人名の語源

Tennyson という人名の語源

O'Henry という人名の語源


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名前とその愛称(その2)


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Henry

元は古いドイツ語で ‘なわばりの支配者’ という意味。

今のドイツ語ではハインリッヒ(Heinrich)、フランス語ではアンリ(Henri)と言います。

愛称は Harry [hǽri], Hal [hǽl]。


John

元はヘブル語で ‘神は恵みあり’ の意味。

ドイツ語ヨーハン(Johann)、ハンス(Hans)、フランス語ジャン(Jean)、ロシア語イヴァン(Ivan)なども同じ名前。

愛称は Johnny ですが、別に Jack が古くからほとんど独立した愛称となって使われています。


Peter

ギリシャ語では ‘大きい石’ の意味でした。強い堅い性格を願った名なのでしょう。

英語の petroleum(原義 ‘rock oil’ 石油)にその原意が残っています。


Richard

元は古いドイツ語で ‘厳しい支配者’ のこと。

Ritchie とか Dick がその愛称。


Thomas

古代ギリシャ時代からあった名で、元は ‘ふた児’ の意味でした。愛称は Tom とか Tommy。

一般に ‘Tommy’ と言えば英国の兵隊の愛称になるのは、この名が英国人一般に多いからです。

さらに ‘Tom, Dick and Harry’ というのは英国人のごくありふれた名前(愛称)を三つ並べたもので ‘普通の人たち’‘誰も彼も’‘猫も杓子も’の意味に使います。


William

ごく古いドイツ系の名で、原意は ‘厳たるカブト’ のこと。

非常に多い名で、愛称は Will, Willie, Bill, Billieなど。


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名前とその愛称(その1)


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英米ではギリシャ、ローマの偉人や聖書に出る聖者、王族その他の有名な人などにあやかって名をつけることが多いです。

このような個人名は、誕生のあとで行われる洗礼の式のときに与えられるのが普通ですので、

英語では洗礼名(Christian name, font name)と言います。

ときには given name ということもありますね。

日本でも名は男女によって違っているように、英語の場合でもその区別ははっきりしています。

また名を崩して愛称とする仕方もだいたい一応の型がありますので、英語でよく見かける名前とその愛称を次に掲げてみましょう。


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2013年12月09日

クリスマスにちなんだ語(その8)


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今月の名前の由来を眺めてみましょう。

December はラテン語 decem + ber という造りで、元来はローマ暦の10月に当たりました。

dec が「10」の意味であることは

decagon(十角形), decade(10年間), decagram(デカグラム、10グラム), Decameron(ボッカチオの作『十日物語』), decameter(デカメーター), decathlon(オリンピックの十種競技)

などに表れています。

語尾の -ber の意味は不明です。

この月の前3つは November の源であるラテン語 novem が nine の意で novena(ローマ教の9日間の祈り), novenary(9の)などが出ており、

October の源であるラテン語 octo が eight の意で octagon(八角形), octahedron(八面体), octave(オクターブ), octopus(eight-footed すなわち、たこ)などが出ており、

September の源であるラテン語 sept は seven の意で septangle(七角形), septenary(7より成る), septuple(7倍)などが出ている。

これらの月がそれぞれに正しくは7月、8月、9月であるのは、ローマの暦法では March が1月であったためです。

紀元前2世紀の半ばに暦を改めて January を1月とする必要が生じたので March はずれて3月となり、

以下どの月も2ヶ月繰り上がってしまったのですね。

数詞を織り込んでいない月名の場合には何ヶ月ずれようとも名称の上で何のさしさわりも生じませんが、

September 以下のように、数詞が使ってある月名の場合には、名と実が一致しなくなりますので、ずいぶん変なことになったわけです。


(追記)

なお、ラテン語から月名を借りる以前の古英語時代には、例えば、1月を Wulf-mōnaþ(= wolf-month), 9月を Hærfest-mōnaþ (= harvest [または autumn] month)というように固有の月名を持っていました。


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2013年12月07日

クリスマスにちなんだ語(その7)


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キリスト誕生の記事を読みますと、三人の wise men(「博士たち」と聖書では訳しています)が東方から拝みにきたことになっています。

そして、三人がお祝いに持参したものは gold, myrrh, frankincense の三種の礼物でした。

いずれも、当時としては最も価値の高い、尊い品でありました。

frankincense [frǽŋkinsens] は「乳香」と訳し、香料であると同時に外用薬品でもありました。

甘い、強烈な香りをして燃えるゴムの樹脂です。

造りは frank + incense の結合ですね。

frank からは frankly(=in a frank manner, freely)が派生しました。

すなわち、frank は free とか pure とかの意味です。

incense は ‘that which is set on fire’(香として焚かれるもの)のこと。

これからすぐに連想されるのは incendiary(放火犯人), incendiarism(放火)です。

incensory は「釣香炉」、すなわち censer のことですが、censer は動詞 cense(香を焚く)から派生した語。

cense は incense から出ました。



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myrrh [məː] も一種の香気ある樹脂で、香料として用いられました。

「没薬」と訳されるものですが、m-y-r-r-h という奇怪な綴り字から察せられるように、元来は英語ではありません。

アラビア語の murr(bitter の意味)から来たことで明らかなように、その味は苦い。

前回までの記事で既にいくつかの実例が示されたわけですが、

英語が外国語からその要素を摂取することに極めて勇敢な言語です。

古くは Scandinavian からはじめて、Latin, Greek, Hebrew, French などから、Spanish, Portuguese, Italian その他、日本語から入った英語まであります。


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2013年12月06日

クリスマスにちなんだ語(その6)


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Santa Claus のそりは sleigh [slei] と呼ばれますが、このそりは sled, sledge などとはどう違うのでしょうか?

語源的には、sled が源で、[d] 音が脱して縮小した語が sleigh であり − 綴り字は多くなっていますが − sledge は転化したものです。

いずれも動詞 slide(すべる)に関係があります。

なお、sleigh は主としてアメリカとカナダで用いられ、sled は主として方言に非ずんばアメリカでの用語になっています。

一つの語から派生して、多少の近似性を持つ語が英語には少なくありません。

例えば、shirt と skirt は、同じ身につけるものでありながら、前者は上半身に用いるものとなり、後者は下半身に身につけるものとなりました。

他にも、whole と hale, from と fro, attach と attack, road と raid, antic と antique など類例は多数あります。

その差を調べてみても面白いのではないでしょうか。


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2013年12月05日

クリスマスにちなんだ語(その5)


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Santa Claus のそりを引く reindeer には鹿という意味がダブっています。

というのも、古ノルド語(Old Norse)では rein 1語で「トナカイ」を指していたのに、この語が英語になってから、英語にある deer にあたる語が後につくことになったからです。

なお、turtledove(ヤマバト)も同じ語源的発生の語です。

turtle(ラテン語の turtur)1語で dove の意味があるのに、その後が英語になってから、ハトであることを明らかにして dove を添加して造られたのですね。

しかし、今では turtledove が普通に使われ、本家の turtle は古語になっています。

このように、語は生物と同じように、養子になったり、廃せられたり、時には、死んでしまうこともあるのです。



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reindeer のような冗語的用法の傑作はアルマダ艦隊でしょう。

紀元1588年スペイン王 Philip Uがイギリス征討のために派遣した有名な艦隊を the Invincible Almada と称し、無敵艦隊と訳されています。

armada は fleet of warships の意味を持つスペイン語から来たのですから、アルマダ艦隊は艦隊艦隊ということになってしまうのです。


(追記)

古ノルド語(Old Norse)は紀元8世紀から14世紀に至るまでノルウェーやその植民地で用いられた語を指して言う語です。


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2013年12月04日

クリスマスにちなんだ語(その4)


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クリスマスになくてはならないものの一つは Santa Claus [sǽntə klɔ́ːz] です。

Christmas Eve(クリスマス前夜)にこの白髭赤顔の好々爺が八頭の reindeer(トナカイ)に sleigh(そり)を引かせて北国から来るというのです。

ことの起こりはオランダ語の Sint Klaus または Sante Klaas なる聖人が子供たちにプレゼントを与えたとの言い伝えから、

アメリカで Saint Nicholas [níkələs] として知られるようになったもの。

初めて称えられ出したのが1820年代のことです。

Santa が holy に関係のあることは saint をはじめ、sanctify(浄める), sanction(制裁), sanctuary(聖域、霊廟)などで容易に知られます。

saint が [sənt, sən, sin] などと発音されるので、San Francisco がイタリアの高僧 St. Francis にちなんで命名されたことが明白ですし、

その他地名に「サン…」とある場合、その起こりが容易に察せられます。


(追記)

本記事の執筆に際し、稲垣美晴『サンタクロースの秘密』(講談社文庫、1995年)を参照しました。

稲垣さんのご本は『フィンランド語は猫の言葉』(講談社文庫、1995年)も面白いですよ。


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