2016年08月15日

『英文法汎論』のゆくえ


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最上雄文「『英文法汎論』のゆくえ」(『青山學院女子短期大學紀要』(第26巻、1972年)所収)は

細江逸記(1884-1947)による

(1)『英文法汎論』(続訂五版;泰文堂、1927年)
(2)『精説英文法汎論 第一巻』(泰文堂、1940年)
(3)『英文法汎論』(改訂版;泰文堂、1956年)
(4)『英文法汎論』(新改訂版;篠崎書林、1971年)

の四著のうち、「緒論」や(文法)用語の観点から、主として前記三著の比較・対照を試みています。


(追記1)

なお、最上雄文(もがみ たけぶみ)氏は『日本大学英文学会通信』(第91号、2009年、p.11)に金沢大学名誉教授として寄稿した「私的回顧」のなかで、次のような事情を伝えています。

細江『精説英文法汎論』は詳細な syntax の書ですが第一巻しか出ません。original『英文法汎論』に照らして見れば完結には少くとも 5, 6 巻の続巻を要したでしょう。 著者御遺族に続巻の執筆権をお願いしました所、OK の約束を頂きました。篠崎書林店主にも話しました。約束は行使されぬままです。


(追記2)

『英語学人名辞典』(研究社、1995年、pp.147-8)によれば、細江逸記氏(1884-1947)は

OE から現代英語に至る実証的研究に長じ、大正・昭和年間わが英語学界の指導的学者の一人

であり、

『英文法汎論』は

随所に歴史的説明を加えた明晰な叙述で貫かれ、わが国での英語伝統文法の統語法の古典

にして

わが国最初の体系的な英文法書

です。

また、宇賀治正朋編『文法T』(英語学文献解題第4巻、研究社、2010年、p.154)では、『英文法汎論』は

比較言語学および英語史に関する該博な知識に裏打ちされた科学文法

であり、

単に文法規則の列記に止まらず、豊富な言語事実によって例証し、英語の慣用にも充分な目配りを怠らない

と評価されています。

なお、細江氏に関しては、『上掲書』のほか、喜安璡太郎『湖畔通信・鵠沼通信』(研究社、1972年、pp.37-9, 46)に詳報があります。

ちなみに、『湖畔通信・鵠沼通信』に関して、渡部昇一先生は谷沢永一先生との対談集『読書有朋』(大修館書店、1981年、p.237)のなかで次のように語っておられます。

とにかく何でもかんでも書いてくれるわけですよ。ある人の解説やら、思い出やら、それから、死んだという話を聞くと、こういう人だったとか、逸話だとかですね。(中略)索引が付いているもんですから、百科事典だとか、人名事典に出ていない英語学者、英語の先生を捜すのに、とっても便利なんです。それから、有名な人でも、知られざる面なんかね。


(追記3)

『英文法汎論』(続訂五版;泰文堂、1927年)についてはこちらに書籍画像が収録されています。

なお、この画像を収録している岡島昭浩氏(大阪大学大学院文学研究科 国文学・東洋文学講座 教授)のウェブサイトには、

動詞叙法の研究』(泰文堂、1933年)

および

我が國語の動詞の相(Voice)を論じ、動詞の活用形式の分岐するに至りし原理の一端に及ぶ」(市河三喜(編)『岡倉先生記念論文集』(岡倉先生還暦祝賀会、1928年)所収)

の書籍画像も収められています。


(追記4)

関連記事はこちら。

細江逸記『英文法汎論』の源流


(追記5)

『精説英文法汎論 第一巻』は『英文法汎論』の第六章までをさらに精察講説した増補改訂版で、引例文には訳文が添えられています。続刊が未完に終わっているのが惜しまれます。


posted by 石崎 陽一 at 07:13 | Comment(0) | 興味をもったこと | 更新情報をチェックする
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