2016年02月28日

語源や語形成に注目させる語彙指導


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語源研究には、大きく分けて3つの「楽しみ」があると言えます。

1つ目は「知る楽しみ」です。

これは語源物語的な書物を読んだり、ある単語を語源辞書で調べることにより達成されます。

授業においては、例えば、


英語の kind は「生まれを同じくするもの」の原義から「種族、種類、種」という名詞の意味が出た。(「同類、一族、親族」を表す名詞 kin と同根。)形容詞としては、kind はもともと「生まれのよい(well-born)」「しつけのよい」という意味で用いられていた。

「生まれ育ちがよい」と「品がよい」し「上品で優美な」ものだが、日本語でもこの「品」は「しな」と読んで「事物の等級、またそのちがい」の意から「種類」の意を表したり「階級、身分、地位」の意から「家柄」の意を表したりしていたのは興味深い。

kind は「種類」と「優しい」というまったく関係のない意味を持っているようだけども、両者とも「生まれ」という根本的な意味でつながっている。実は genre や gentle という単語とも同語源である。



という指摘をすれば、「語源を知る楽しみ」を生徒に堪能させることができるでしょう。

2つ目は「考える楽しみ」です。

つまり、語源が明らかでない単語について、擬音(onomatopoeia)や音象徴(sound symbolism)、あるいは意味の連鎖などを使って、元来のイメージをつかむ喜びです。

これは「探る楽しみ」、あるいは「発見する楽しみ」と言い換えることができます。

この2つの喜びのほかに、もう一つ、語源を勉強する楽しみがあります。

それは「語彙を増やす楽しみ」です。

古くは森鴎外が『ヰタ・セクスアリス』で医学用語を覚える際の語源の効用を説いていますし、

江藤淳の『漱石とその時代』や川島幸希の『英語教師 夏目漱石』には、夏目漱石も東大で教えるときは語源を重視した授業を行ったということが書かれています。



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高校時代、「市街地の開発、町づくり」のことを urban development と言うのだと知ったとき、覚えるのに苦労していた suburb(郊外)のことを、ああそうか、あの単語は sub- + urb、つまり「下」「副」を示す sub-(cf. submarine, subway, subtitle)と「市街地、町、都会」の意味の urb(cf. urban, urbane)とが結びついたものだったのか、そうだったのかと大いに納得したものでした。

それまでの私は、「郊外」にあたる英語は「s, u, b, u, r, b」という具合に、ただやみくもに暗記していたのです。

これを機に、綴りを記憶する際の労力が半減し、英語という言語の背景にある文化のようなものに興味を抱くことになったのを今でも鮮明に覚えています。

英語は表意文字である漢字と異なり、わずか26文字がさまざまに組み合わされて単語が作られています。

この文字は表音文字であり意味がないため、ただ棒暗記で覚えたものは、すぐ忘れたり意味を混同したりしがちです。

しかし、理屈や経験をもって覚えたものの場合、忘れていても一度引き出せば、また思い出しやすくなります。あれはそんなことを実感する出来事でした。



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主としてこうした個人的経験から、石崎は、教科書や単語集などを通じて生徒たちの頭に単語が蓄積されたタイミングで、語形成(word formation)に注目することで、単語を整理整頓し、さらに語彙の増補を図る指導を行っています。

単語の整理整頓はいわばごちゃごちゃになった引き出しを整理するようなものですから、語形成に注目する学習の開始時期としては、学習者の頭の中にある程度単語のストックができた時点が効果的だと考えることができます。

そこで、そのような時期を見計らい、自作教材を用い、語根(root)と接辞(affix)を教え、意味を持った塊を記憶や類推の鍵として単語を覚える方法を紹介しています。

もちろん、英単語には構造があって複数のパーツが複合してできているとは言っても、分析することで、すべての単語の定義が判明したり、語義が類推できたりするわけではありません。


要するに、この語彙学習法は万能ではないのですね。


よって、何から何まで語形成の知識で片づけようとする姿勢は危険です。

しかし、語形成の知識からわかることも多いことは、石崎の体験からも言えます。

そこで、私は、取り扱う単語を厳選した上で、suburb を sub- + urb と分解することで覚えるように、a+b=cのような考え方で一見して現在の意味が生まれた背景に納得がいくように提示することを私は心がけています。

この自作教材は派生した単語数の多い、すなわち応用範囲の広いと思われる構成要素を見出しに掲げ、関連語をその下にリストアップし、いくつかの工夫を加えたもので、これまで多くの生徒から好評を得ています。


本校でも使用の時期が訪れたようです。


(追記1)

成田義光・長谷川存古・小谷晋一郎『講座・学校英文法の基礎 第一巻 発音・綴り・語形成』(研究社出版、1983年、pp.134-56)において複合語に関する詳述がなされており有益です。また、『上掲書』(p.203)では

生徒の英語学習のある段階で、既習の単語を用いて語形成の大略の説明を与えることは、将来の英語学習に有益であろう。英語の経験を重ねていくうちに自然に身についていくのが単語の知識であるが、その形式を明示的な形で示し、指導しておけば、その効率はより大になると考えるものである。

と述べています。


(追記2)

関連記事はこちら。

ことばへの興味を育む

語源を用いた語彙学習について


posted by 石崎 陽一 at 19:43 | Comment(0) | 語彙の学習・指導 | 更新情報をチェックする
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