2015年02月07日

「文法訳読に偏ることなく」


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昨年9月下旬に行われた英語教育の在り方に関する有識者会議(最終回)の議事録配付資料とともに公開されています。

配付資料の中には、前回までの議論を基に作成された「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告(案)〜グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言〜」と題する報告資料があり、これに基づきなされた議論を追うことができます。

さて、上の報告資料は「改革2.学校における指導と評価の改善」という項目における「中学校・高等学校における指導」という項で


中・高等学校では,英語の教科書の本文や,そこで取り上げられている題材や言語材料を,生徒が関心を持てるように指導すべきである。例えば,他教科での学習内容,学校生活における活動,地域行事,生徒の体験等と関連付けることで,文法訳読に偏ることなく,互いの考えや気持ちを英語で伝え合う言語活動を中心とする授業を構成することが可能になる。

このように,授業を実際のコミュニケーションの場面とする観点から,現在,高等学校では,授業を英語で行うことを基本としているところであり,中学校と高校の学びを円滑につなげる観点から,中学校においても,授業を英語で行うことを基本とすることが適当である。

その際,中・高等学校とも,その趣旨が「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため」であり,「生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮すること」を前提としていることを十分に理解することが重要である。



と述べられています。(下線は現筆者による。)

この記述について、大津由紀雄と松本茂の両委員との間で交わされたやりとりを書き留めておきます。


【大津委員】 (前略)つまりここで主張されていることは、文法訳読というものが英語教育にとってよろしくないものである、避けるべきものであるというような認識は全くなく、問題は、文法訳読に偏ってしまうというところに問題があるのだという理解でよろしいでしょうか。

【吉田座長】 じゃあ、榎本さん、どうぞ。

【榎本課長】 そう理解しております。


(中略)


【松本委員】 (前略)「文法訳読に偏ることなく」というのは、現行の学習指導要領の「英語で授業することを基本とする」ということから考えると、この説明ですと、文法訳読をやってはいけないということを、やっていいということになってしまうという解釈ができ、それはまずいのではないかなと思います。要するに、「英語の授業は英語で行うのを基本としますよ」と宣言しておきながら、「文法訳読でもいいですよ」と、ここで、先ほどの課長の御説明だと、認めるということは、ちょっと矛盾を起こさないかなと思い、御質問させていただきました。


【吉田座長】 これはいかがですか、事務局の方でその辺については。では室長、お願いします。

【圓入室長】 松本委員から御指摘いただいたのは、学習指導要領の書き方にも関わってくると思うのですが、そこはまた次の検討の中で整理をしていく必要があると思います。ここでの表現は、大津先生が先ほどおっしゃっておられましたけれども、実態として今授業の中でどのようになっているのかという課題の指摘がございまして、それを踏まえて書かせていただいたものでございますので、少し整理をしていく必要があると思っています。ただ、ここは授業を英語で行うことを基本としているという、(中略)、そこと矛盾しないような形で、もちろん言語活動をきちんと重視するということを表したいために、このような表現振りになっております。そのような理解のもとでどのようにすればいいのかという御意見をいただければと考えておりました。

【吉田座長】 はい、松本さん。

【松本委員】 コンテンツとして文法を教えることは一切問題ないと思うのですけれども、「文法訳読」と言うと、指導法をイメージしていると思います。その辺については御配慮いただければと思います。


【吉田座長】 それについては、議事録に残して、あと今後これを具体的にしていく段階で、検討させていただくということになるかなと思います。
 じゃあ大津さん、どうぞ。


【大津委員】 どうもそこに関する私の発言はやぶ蛇だったようですが、蛇を出した以上、もうちょっと松本さんのお考えを聞いておきたい。松本さんは日本における英語教育において、訳読――文法はちょっと置いておきましょう、ここは絶対必要だとおっしゃると思う――訳読というものは、なるべく避けるべきであるとお考えなのか、お考えであれば、それはなぜかということを教えてください。


【吉田座長】 松本さん、どうぞ。

【松本委員】 ここで個人的な英語教育観について話すのはいかがなものかと思いますけれども、私が申し上げているのは、国の方針がぶれないことをお願いしたいということです。現場が混乱してしまうので。その点だけです。個人的な学習として訳読をする必要性をすべて批判するわけではないですが、教室という場でみんなで訳読するという指導法は減らしていく方向で今まで現行の学習指導要領下では皆さん御努力されているので、それに対してストップをかけるようなことはしない方がいいのではないかということです。

【吉田座長】 ということですが、じゃあ大津さん、どうぞ。


【大津委員】 そうすると、要するに「偏ることなく」というのを、文字通り理解すれば、全くの問題のない御見解だというふうに理解できると思うのですが、それはいかがでしょうか。


【吉田座長】 松本さん。


【松本委員】 教室での指導ということであると、少なくとも今は避けるという方針であるということは間違いないと思います。

【吉田座長】 はい、大津さん。

【大津委員】 教室の中での訳読は避ける方針というのは、国の方針なのでしょうか。仮にそうだとすると、その根拠はどこにあるのでしょうか。

【松本委員】 私ですか。

【吉田座長】 はい、じゃあ松本さん、どうぞ。


【松本委員】 飽くまでも私は学習指導要領に書かれてあることについて説明しているつもりですので、私が説明してもよろしいのでしょうか。事務局の方で引き受けていただけますか。

【吉田座長】 事務局の方で、はい。今の学習指導要領の文言の問題で、また解釈の問題ですよね。その辺はいかがですか。


【圓入室長】 少し細かくなって恐縮ですが、学習指導要領、(中略)、御確認いただければと思います。(中略)高等学校の学習指導要領の解説、外国語編、英語編でございます。この43ページを御覧いただきたいのですが、授業は英語で行うことを基本とするということを、この解説の方で丁寧に書いてあるところでございます。ここも前に御説明いたしましたように、これは方針を変更するということではなくて、現行を維持するという説明をさせていただいておったかと思います。
 で、43ページの後段の方になります。ここに書いてありますのは、授業を英語で行うことを基本とするということは、英語による言語活動を行うことを授業の中心とするというように書いております。ですから、以前も御説明いたしましたけれども、全て英語だということを言っているわけではございません。ただ英語の科目の特質というのをここに書いておりますけれども、言語に関する技能そのものの習得を目的とするところであるが、しかしこのような技能習得のため必要となる英語を使用する機会は、生徒の日常生活において非常に限られているので、そのようなことを踏まえれば、英語に関する各科目の授業においては訳読や和文英訳、文法指導が中心とならないように留意し、生徒が英語に触れるとともに、英語でコミュニケーションを行う機会を充実することが必要と書いてございます。ここを解釈いただければということでございますので、多分先生方がおっしゃっていただくのは矛盾はないかと思います。


【吉田座長】 よろしいですかね。多分、ここの偏ることなくという解釈でよろしいのではないかなと私は思いますが。
 じゃあ大津委員、どうぞ。


【大津委員】 私がここにこだわっているのは、実際に教室で英語を教えられている先生方にとって、ここの部分というのはとても重要だと思うからなのです。で、今室長に読んでいただいた43ページの項目4の本文2段落目、下から2行目、「訳読や和文英訳、文法指導が中心とならないように留意し」という、ここがとても重要で、つまり一言も訳読というものを教室で行ってはいけないというようなことは書いていないという、ここのところは是非ここの場で確認しておきたいと思います。それでよろしいですよね。

【吉田座長】 はい、それでいいのではないかと思います。よろしいですか。
 はい、じゃあ石鍋委員。


【石鍋委員】 今の解説と同様の趣旨を、実は中学校などの現場でも伝えているところです。実際に文法訳読をやっている教員、いなくはありませんが、やはり発話で英語を多くしようという教員が増えている事実はあります。今の解説の43ページの一番下の段から、次のページに行くくだりなのですけれども、文法について説明することに偏っていた場合は、その在り方を改め、授業においてコミュニケーションを体験する言語活動を多く取り入れていく必要があると。
 中学校のように語彙数の少ない、特に中1ぐらいの非常に語彙数が少ないものを扱うときに、文法訳読とかそういったことをやると、英語を使う時間がなくなってしまうのですね。やはりそういったときほど、やはりきちんと英語を使ってやっていく。文法訳読が違う捉えをされると、中1の段階から非常に難しい状況に陥る。そんなような気がしていますので、やはりここの今の室長が説明していただいた部分をきちんと伝えていく、そのことが非常に重要になるのだろうなと思います。


【吉田座長】 じゃあ室長、どうぞ。


【圓入室長】 補足させていただきたいと思います。今御説明したところは高校の現行の学習指導要領の解説でございます。報告案の方につきましては、中学校、高校ではという形でまとめさせていただいております。つまり、こちらで先ほど申し上げましたけれども、今後どうするかということにおきましては、中学校についてもそのような方向で、更に専門的な中教審の場になると思いますけれども、議論を行っていただくということでまとめさせていただいております。以上でございます。



posted by 石崎 陽一 at 11:34 | Comment(0) | 教師論・学習指導・進路指導 | 更新情報をチェックする
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