2014年08月23日

言語学からの言語起源論追放の原因


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『月刊言語』の1986年1月号(大修館書店、pp.5-7)において、哲学者の 坂本百大 氏は、言語学からの言語起源論追放の原因を


哲学化と生物学化への恐怖とそれに対する拒絶


と見据え、次のように推測しておられます。


十八、九世紀を通じてようやく言語起源論が頂点にたっしたとき、一八六五年、突如として、フランス言語学会(Société de linguistique de Paris)は会則第二条において「言語起源論……に関する論文は一切受附けない」と宣言し、また、ダーウィンの進化論を契機にして、言語期限に関して新たな照明が当てられようとしていた一八七三年、イギリスの言語学会(Philological Society of London)会長アレキサンダー・エリスは「この種の話題は言語学プロパーの問題外のものであると確信する」と講演して、事実上、言語起源論を言語学から追放してしまった。(後略)

(中略)

言語起源の問題はすでに古代ギリシャの昔から哲学者(中略)の関心の中に見え隠れしていたらしい形跡が或る。

(中略)

(前略)十八世紀の中葉(中略)言語起源論は認識起源論の中に吸収され、再び哲学化への一途を辿ることになるのである。しかし、この傾向は当時興りつつあった、言語の実証研究の専門家達のプライドをかなり傷つけたのではなかろうか。

そこにダーウィンの進化論が現れる。進化論は、人間の言語は動物言語と連続し、また、それは発声器官や大脳の機能の連続的進化の結果であるという視点を衝撃的に提示し、ここで言語学は生物学の中に席巻されかねない趨勢となったのである。

このような一般的傾向を阻止するべく、前記のパリ、ロンドンの言語学会がこぞって、言語起源論を締め出して言語学の正統を守ろうとしたものだろう。ここで、言語学の正統とは、たとえば、エリスによれば、「現実の言語の形態、展開、変化を研究すること」とされる。




posted by 石崎 陽一 at 11:49 | Comment(0) | 最近読んだ本からの気づき | 更新情報をチェックする
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