2014年07月11日

be susceptible to の解釈について


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生徒から受けた質問と私の回答を記しておきます。


−−−−−−


北海道大学の入試問題(2012年2月実施)に次の一節があります。


We often hear about the need to find alternative energy sources in order to protect our planet from the harmful effects of climate change. Wind, wave and solar energy are all possible sources, but most of the electricity produced from non-fossil fuel sources comes from nuclear power. Nuclear energy may be 'clean', that is, it does not produce as much carbon dioxide or other greenhouse gases as fossil fuel energy plants, but it is not a permanent energy solution. Like coal and oil, the amount of uranium on earth is limited, and nuclear energy may only be a viable source of energy for the next 100 years. The effects of nuclear energy production, however, are more long-lasting, and potentially more problematic, than any damage that has resulted or could result from fossil fuel-induced climate change: even though building design and technology have improved, nuclear power plants are still susceptible to accidents that can damage whole regions, even countries; they also produce waste that remains harmful to the biosphere for centuries.


下線部の意味を、

「今もなお、原子力発電所は地域全体、いや国全体に損害を与える可能性のある事故を引き起こしかねない」

と捉えました。

しかし、よくよく考えてみますと、be susceptible to はある英英辞典によれば be easily influenced by と定義されており、そうだとすると、因果関係が逆になるのではないでしょうか。

ただ、その場合、「事故の影響を受けやすい」では誤訳に近い気がするのです。

何しろ、主語たる原発はまだ事故を引き起こしていないのですから。

それでも、accidents that can damage whole regions, even countries に関して近隣ないし隣国の原発から生じる事故を想定したり、津波や(これは考えにくいかもしれませんが)地震といった災害も accidents のなかに入ってくると考えれば、be easily influenced by という解釈も成り立つのかなと迷った次第です。

(accident 自体、「偶然の出来事」ということから「不慮の災難、事故、災害」の語義が出ています。)

この解釈について、先生はどう思われますか?

susceptible は語源的には *takable といった感じですよね?

ですから「こうむりやすい、うけやすい」は分かりやすいのですが、「引き起こす」は正反対の気がするのです。

それでも、英辞郎などでも

be susceptible to bleeding around the brain
(脳の周りに出血を起こしやすい)

be susceptible to error
(誤差が生じやすい)

a region susceptible to large-scale military competition
(大規模な軍事競争が生じやすい地域)


のような用例が見つかりますし、この辺りをどう理解したらいいのやら…です。

疑問の所在はお伝えすることができましたでしょうか。

下線部の解釈と accidents that damage whole regions, even countries の具体例についてご助言ください。

よろしくお願いします。


−−−−−−


下線部を試訳すると、

「原子力発電所は、いまだに事故が起こることもありえる類のものである。ひとたび事故が起きたら、発電所のある地域一体、あるいは国全体が被害を受けることさえありえるのだ」

という感じでしょうか。

ここでは

● 関係代名詞にその先行詞を代入し、別文として訳出する

● 無生物主語を副詞節のように訳出する


という翻訳の手法を用いました。

さて、susceptible を OED で引きますと、

capable of taking, receiving, being affected by, or undergoing something capable of undergoing, admitting of(some action or process)

とあります。

susceptible to accidents
= capable of undergoing accidents


と解すれば、「事故が起きる」という解釈でよいかと思います。


−−−−−−


…質問の意図はわかるのですが、susceptible to の意味内容を考える際に、やや日本語訳に引きずられているように私には思われます。

挙げられていた英辞郎の例文を考えても、A is susceptible to B のAとBの関係が、狭義の因果関係に縛られるとは考えにくいでしょう。

単にAが何らかの形でBの影響を受けるというだけの内容であれば、原発は当然事故の影響を受けるものです。

「AがBの影響を受ける」というのは、「Aに関しては、Bという事態が起こりうる」という意味に解して差支えないと思います。

Nuclear power plants are not susceptible to accidents.

とあったとすれば、事故の影響を受けない原発ですが、それ即ち事故が起こらなくなった原発でしょう。

ただし、この意味内容を「原発は事故の影響を受ける・受けない」と訳してしまうと、日本語では英文の意図とズレてしまうので、「事故が起きる・起きない」と訳すべきかと思います。

ただ、これは単なる訳の問題です。

もう一つの可能性として挙げられていた解釈は、不可能だとは言いませんが、私にはずいぶん無理をした考え、ある種のこじつけのように思えてしまいます。

素直に解釈できる方法がある場合には、そちらを採用した方がいいのではないかな、と。

よって、be susceptible to accidents は、意味内容を取って「事故が起こる」という訳でよいと私も思います。

あなたの指摘の通り、「事故の影響を受ける」では、むしろ誤訳に近いでしょう。


−−−−−−


最後に、 accidents that can damage whole regions, even countries の具体例としては、ごくごく単純に福島県における原発事故が真っ先に頭に思い浮かびます。

whole regions の一例として福島県を挙げるとすれば、結果として日本全体がネガティブな影響を受けましたので、それが a country の一例であると考えられます。


(追記1)

なお、whole regions のように、無冠詞の「whole + 複数名詞」は、通例、「entire areas of + 単数名詞」の意味になります。

『ジーニアス英和辞典 第4版〔机上版〕』(大修館書店、2007年、p.2187)より類例を挙げます。

下線部は Entire areas of forest .... の意です。

Whole forests in North Africa were destroyed during the Roman times.
(北アフリカの森林の全領域がローマ時代に破壊された)


ちなみに、ここで all forests とすると「森林という森林は残らず」の意となってしまいます。


(追記2)

参考までに、以下に冒頭の英文の拙訳を付しておきます。


気候変動の悪影響から地球を守るため、代替エネルギー源を見つけることが必要だとちょくちょく耳にする。風力エネルギー、波力エネルギー、太陽エネルギーはみな有力源だが、非化石燃料源から生み出される電力の大部分は原子力によってもたらされている。原子力は「環境汚染を引き起こさない」、すなわち、化石燃料エネルギーによる発電所ほどは二酸化炭素やその他の温室効果ガスを排出しないが、エネルギー問題の恒久的な解決にはならない。石炭や石油と同様、地球上のウラン埋蔵量は限られており、原子力は、恐らく、今後100年間しか使用できないエネルギー源だろう。しかし、原子力エネルギーの生産がもたらす影響は、化石燃料による気候変動によって生じている、あるいは生じる可能性のある損害と比べ、長引き、多くの問題を引き起こす可能性がある。建築の設計・技術は進歩しているが、今もなお、原子力発電所は地域全体、いや国全体に損害を与える可能性のある事故を引き起こしかねないし、何世紀にもわたり生物圏に悪影響を及ぼすような廃棄物を生み出す。



posted by 石崎 陽一 at 00:50 | Comment(2) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
石崎先生

生徒の疑問解決に日々奮闘されていますね。
こちらも勉強になります。

さて今回のbe susceptible toですが、
私も気になって調べてみました。

susceptible to colds(風邪をひきやすい)
susceptible to pressure(プレッシャーに弱い)

などの例文を見つけました。

そこで、解釈の仕方で、
「to〜の影響を受けやすい」ともとれる一方、
「to〜の状態(状況)になりやすい」ともとれると
考えました。

となると、先生がご指摘の通り、
be susceptible to accidentsは
「事故という状態(状況)になりやすい」と
解釈できますので、
「事故を起こしやすい」と
考えてよいという結論に達しました。

いかがでしょうか。
Posted by katoo at 2014年07月11日 12:12
katooさま。拙ブログの閲覧、またコメントをありがとうございます。

>生徒の疑問解決に日々奮闘されていますね。

はい。知りたいと思ったときが学習のチャンスだと考えていますので、尋ねられた折りにはできる限りのことを施すつもりでおります。

さて、類例のご指摘深謝です。たしかに、OED の定義でも or で示されていましたね。

引き続きご愛顧のほどお願いいたします!
Posted by 石崎 陽一 at 2014年07月13日 10:07
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