2014年07月09日

代名詞の指示内容を追跡し、文意を把握する


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生徒から受けた質問と私の回答を記しておきます。


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北海道大学の入試問題(2012年2月実施)に次の一節があります。


In its 57-year history, the nuclear energy industry has so far generated a minimum of 300,000 tons of high-level nuclear waste. In order to be safe, this waste must be kept away from living creatures for at least 100,000 years. How do we dispose of this material safely? An example from Finland demonstrates some of the problems we face. The Finnish government is currently building a deep geological repository, a 5km-long tunnel that winds its way down 400m into the bedrock to a network of storage vaults. The location is called 'Onkalo'. It will be ready to store waste in 2020, and then sealed in 2120. The Finnish government intends that Onkalo will remain closed for 100,000 years.

That's a difficult prospect for architects. How do you design something that's meant to last for such a long time? In 100,000 years, there will be little or no trace of our present civilization. Some of the oldest buildings on earth, the Egyptian pyramids, have been around only for about 3,000 years. Onkalo presents a difficult conceptual problem for humans: anatomically modern humans have been in existence for around 200,000 years, but think how different the first humans would have been. How would you communicate with them? How could you make them understand the world in which you live? What will humans be like in 100,000 years?

Since the material to be stored is so dangerous, the designers of Onkalo ― and all nuclear nations that must build these structures, at great expense ― have to think about these issues. How can we prevent humans from trying to excavate the site in the future, causing massive damage to their species and their environment? The designers could leave a warning sign, something like 'This is a very dangerous place. Stay away. Do not try to enter.' But how can we communicate with humans so far in the future? Which language would we use? English? Chinese? It's probable that neither of these languages will exist in the year 102012. Language itself might have become obsolete by that time. How about using a picture? If so, what would it be?



下線部の人称代名詞 them の指示内容は何だと思われますか?


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前出の複数名詞 the first humans だと思います。

試訳すると

「もし初期の人類が目の前にいたとして、その人たちとどのように意思の疎通を図ったらよいのだろう? その人たちに現代の世界を理解させることなど、どうすればできるというのだろうか?」

という感じでしょうか。

them の指示内容は the first humans であり、それが仮定法の条件節に相当すると考えます。

仮定法過去ですから、「そういった初期の人類がもし現在にいたとしたら」という意味に解しました。

仮定法過去完了にしないのは、「私たちが過去に行って、そういった人類と直面したら」という想定ではなく、「彼らが現在にいたとしたら」という想定だからかと思われます。

ここは単純に10万年という時を隔てたコミュニケーションの難しさを説いている箇所でしょう。

「20万年前の初期の人類が現在にいたとして、どのようにすれば我々は彼らと意思の疎通を図れるというのだろうか? 彼らに現在の世界を理解させることなど、どうすればできるだろうか?」

という文は、要は「そんなことはできない」という含みの修辞疑問文です。

そう解すれば、次のパラグラフの内容にスッとつながります。初期の人類が現在にいたとすれば、当然彼らは現在の世界を理解しなければならなくなります。

そのとき彼らに理解させるのは現代の人類である我々ですが、その際の二者間のコミュニケーションはほとんど不可能である。

それ(膨大な時を隔てたコミュニケーションの難しさ)を言いたいだけだと思います。

「同様に、10万年後の人類に放射能廃棄物処理場の危険性を理解させることなどできるわけもない」

後続するパラグラフからも、それが筆者のメッセージであることは明らかです。


(追記1)

参考までに、以下に冒頭の英文の拙訳を付しておきます。

57年の歴史のなかで、原子力エネルギー産業は、これまでのところ、少なくとも30万トンの高レベル放射性廃棄物を生み出している。危険を避けるために、少なくとも10万年間、こうした廃棄物を生物から隔離しておく必要がある。このような物質を、どのようにして安全に処理するというのか。フィンランドの一例から、われわれの直面している問題のいくつかが浮き彫りになっている。フィンランド政府は、現在、深地層処分場を建設中であるが、これは5qにわたる地下道で、蛇行しながら岩盤の中を400b下っていき、網のように枝分かれして存在する保管庫へと至るものである。この場所は「オンカロ」と呼ばれている。2020年には廃棄物を保管できる状態になり、その後、2120年に閉鎖されることになる。フィンランド政府はオンカロを閉鎖したままにする意向である。

これは建築家にとって厳しい未来図だ。そんなにも長きにわたって存続する必要のあるものを、どのようにして設計するというのか。10万年後、現在の文明の痕跡は全くと言ってよいほど残っていないだろう。この世で最も古い建造物の一端であるエジプトのピラミッドもできてたった3,000年ほどしか経っていない。オンカロは、人類にとって、やっかいな、概念上の問題を提起している。解剖学的には現生人類が誕生して20万年ほどだが、初期の人類がどれだけ異なっていたか、思いを巡らせてもらいたい。彼らとどうやって意思の疎通を図るだろうか。どうやったら彼らに皆さんが生きている世界をわかってもらうことができるだろうか。10万年後、人類はどんなふうになっているだろう。

保管される物質が極めて危険であるため、オンカロの設計者は − そして莫大な費用をかけてこうした建造物を建設することが求められるあらゆる原子力保有国は − 今述べた諸問題について考えていく必要がある。人類が、将来、この場所を発掘しようとして、人類およびその生活環境に甚大な被害をもたらしてしまうのを、どうやったら阻止することができるだろうか。警告標識、すなわち「とても危険な場所です。近づかないでください。中に入ろうとしないこと」といった類いのものを残しておくことなら設計者ができそうだ。しかし、どうやったらそんなに遠い未来の人類と意思の疎通が図れるというのだろうか。どちらの言語を使う? 英語? それとも中国語? どちらの言語も102012年には存在していない可能性が高い。その頃には言語そのものが使われていなくなってしまっている可能性もある。絵を使うのはどうか? だとしたら、それはどんなものになるだろう?



(追記2)

某社の音声CDでは、the year 102012 を one hundred two thousand twelve と読んでいました。



posted by 石崎 陽一 at 00:22 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
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