2014年04月03日

天の川と銀河と牛乳


The_Milky_Way.jpg
(retrieved from:http://p.tl/mhow


晴れた夜空で、乳白色に淡く光り、川の流れのように見える無数の星の集まりのことを「天の川」と呼んでいます。

その様がミルクを流したように見えるからでしょうか、

英語では the Milky Way と言いまして、ドイツ語でも die Milchstraß と表していますが、

天の川の漢語的表現は「銀河」ですので、

日本や中国では「銀色」と形容し、西欧では「乳白色」と形容しているのが私には興味深く思えます。



lactation.jpg
(retrieved from:http://p.tl/GTf3


英語の Milky Way も、ドイツ語の Milchstraß も、ともにラテン語の via lactea の直訳とされています。

ラテン語では、ふつう、形容詞は名詞の後ろから修飾するのですけれど、

この、milky にあたる lactea は milk の意の lāc という語の変化形です。

ちなみに、このラテン語 lāc からは

lactation(授乳、哺乳), lacteal(乳状の), lactic(乳の、乳酸を生成する), lactose(ラクトーゼ、乳糖), lactase(ラクターゼ、乳糖分解酵素), lactobacillus(乳酸菌), lactoprotein(乳タンパク質), lactescene(乳化)

などが派生しています。



galaxy.jpg
(retrieved from:http://p.tl/Tcyz


さて、the Milky Way galaxy は「天の川銀河」のことで、太陽系が属する「銀河系」を表します。

実は、この galaxy も「牛乳」の意のギリシャ語 gála に由来しているのです。

gála からは

galactic(乳の;銀河の), galactose(ガラクトース), galactite(乳石), galactin(ガラクチン), galactophore(乳管), apogalactism(離乳)

などの語が出ています。


(追記1)

印欧語族と乳について、風間喜代三『ことばの生活誌−インド・ヨーロッパ文化の原像へ−』(平凡社選書、1987年、pp.93-6)で興味深い論考が展開されています。それによると、ギリシャ語 gála とラテン語 lāc は同じ語根の語だと考えられるようです。また、96頁において、1958年刊行の参考文献を挙げ、

一説によれば、この「乳」はさらに東にのびてくる。それは中国語の酪 lâk < kłak で、これがあまりに似ているところから、トルコ語経由で中国語に借用されたのではないかとも推測されている。

としています。

これは山中襄太『日本語源の史的究明』(校倉書房、1978年、p.222)でも指摘されています。


(追記2)

関連記事はこちら


(追記3)

ラテックス採液.jpg
(retrieved from:http://p.tl/u1di

写真はラテックス採取の様子を示しています。

ラテックスとは植物から得られる乳状の樹液のことです。

刃物で樹皮に傷を入れ、傷口からにじみ出た白い乳液状のラテックスをカップに受けて採取。

写っているラテックスは3時間程度でたまったものだそうです。

マレーシアでは、このようにしてゴム樹からゴム液を採集していています。

このラテックス、英語で latex ですが、ラテン語にも同一綴りの latex という語があり、

laticifer(ラテックスを含む植物細胞、乳管), laticiferous(ラテックスを含む、乳液を出す)

などの関連語があります。


(追記4)

本記事の執筆にあたり、以下の文献を参照しました。

『明鏡国語辞典 第二版』(大修館書店、2010年)
『旺文社 詳解国語辞典』(旺文社、1985年)
『英語語源辞典(縮刷版)』(研究社、1999年)


posted by 石崎 陽一 at 08:25 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする
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