2014年03月29日

近いほうが効果が強い


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G.Lakoff and M.Johnson, Metaphors We Live By(University of Chicago Press, 1980)は、

英語には

「近いほうが効果が強い」

という論理が働いていると主張しています。


If the meaning of form A affects the meaning of form B, then, the CLOSER form A is to form B, the STRONGER will be the EFFECT of the meaniing of A on the meaning of B.(p.129)
(Aの形態の意味がBの形態の意味に影響を与えているなら、Aの形態がBの形態に近ければ近いほど、Aの意味がBの意味に与える影響はそれだけよけいに強くなる)


このことを、いくつかの例で見てみましょう。


−−−−−−


1.I think it won't rain tomorrow.

2.I don't think it will rain tomorrow.



この場合、2は否定語移動(negative transportation)の例であり、n't という否定語は、理屈の上では think よりも rain を否定しているので、1とほぼ同義です。

しかし、2では否定語が rain から遠いので否定の意味が弱いのに対して、1では近いので否定の意味が強くなります。


−−−−−−


3.Tom is not happy.

4.Tom is unhappy.



この場合も、4のほうが3よりも意味が強いのは、独立した1語である not よりも、否定の接頭辞 un- が happy に近いためです。


Unhappy means sad, while not happy is open to the interpretation of being neutral − neither happy nor sad, but in between.(p.130)
(unhappy は sad の意味であるが、not happy は happy でも sad でもない中間的な状態であると解釈できる)


−−−−−−


5.I found that the chair was comfortable.

6.I found the chair comfortable.



この場合、6では I が the chair に近いので、直接的な体験(direct experience)に基づいて、つまり、自分で座ってみて、座り心地がよいことを確かめたことがわかるのに対して、

5ではそれを間接的に(indirectly)、たとえば、人から聞いたり、つぶさに調べたりして、知ったことがわかります。言い換えれば、判断の根拠が間接的であるような場合です。

なお、100人のネイティブ・スピーカーを対象に行ったアンケート結果をまとめた田中茂範『データに見る 現代英語表現・構文の使い方』(アルク、1990年、pp.358-9)にこれを裏付ける調査結果が示されています。


−−−−−−


以上のような現象はすべて


Closeness indicates the strength of the effect.


という論理で統一的に説明することができるというのが Lacoff and Johnson の説です。


posted by 石崎 陽一 at 18:44 | Comment(2) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
石崎先生

こんにちは。
今日の記事も、とても興味深いですね。

1と2の文も、
単純に「英語では否定語を前に持ってくる」なんて
言われますが、
ちゃんと意味が違うのですよね。

また、5と6の文はどう違うのか、
ともすれば「書き換えなさい」みたいな
問題になっていたりすることもありますが、
イコールではないのですね。

やはり、表現方法が違うのは
意味が違うからなんですよね。

単純に「どちらでもよい」で
片づけないように
教える側も気をつけたいですね。


Posted by katoo at 2014年03月29日 20:18
katooさま。いつもありがとうございます。2の表現が好まれるのは丁寧さの原理(politeness principle)に従って、否定の意味の弱い表現、つまり間接的な表現が選ばれるからだとも考えられます。語順が変わればその語順に固有の意味があることを、然るべき段階で、然るべき方法によって、生徒に伝えていきたいものだと私も考えています。
Posted by 石崎 陽一 at 2014年03月29日 20:40
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