2013年06月04日

Canterbury という地名の語源


DSCN0431.JPG



写真は旅行で訪れたカンタベリー大聖堂です。


近くでバザーがやっており、賑わいを見せていたのを覚えています。



DSCN0425s.jpg



この一角に古本を扱っているテントがあり、

Eilert Ekwall, The Concise Oxford Dictionary of English Place-names(4th edition;Oxford:Clarendon Press, 1960)

を安価で購入しました。

出典・語形などが詳細に示され、「英国地名辞典の基本図書」(『英語固有名詞語源辞典』(研究社、2011年、p.xv)とされている一書です。



Ekwall.JPG



いま、この Ekwall の地名辞典で Canterbury の語源を調べると、


Cantwarabury (754年)


が一番古い出典として記されています。

そして、その意味は


The BURG (=fort or town) of the Cantwara (=the people of Kent)


つまり「ケントの人々の町」です。(『上掲書』p.85)

これはちょうどアメリカ植民者が Kansa という部族の名前をとってその町を Kansas City と呼んだのと似ていますね。



Canterbury.JPG
(クリックすると拡大します)


(追記1)

なお、Cantwarabury において wara は wer (=man) の複数・属格であり、

wer は現代英語の world や werwolf(人狼、狼人間)の下線部に生き残っています。

また、Cantwarabury の後半要素の基になった -burg の部分については、

渡部昇一「古英詩の都市イメージの消失」(『国語のイデオロギー』(中央公論社、1977年)所収(pp.252-3))に詳述があります。


(追記2)

『英語固有名詞語源辞典』(研究社、2011年、p.151)によると、Kansa は部族名で、原義は「南風の人たち」です。


(追記3)

長崎や博多など、江戸時代に中国人が集団居住していた町のことを唐人町と言いますが、ネーミングの仕方は canterbury と同じですね。


(追記4)

中島文雄『英語学研究室』(研究社、1961年、pp.26-7)より引きます。(漢字は新字体に、仮名は現代仮名遣いに改めてあります。)

いうまでもなく -bury は OE. burg の Dative の byrig の発達である。地名は æt Cantwarabyrig のように Dative で用いられることが多かったので、古い屈折をよく保存した南部方言において -bury が一般化したのは偶然でないと考えられる。古くは前置詞を伴ったままの地名が Nominative と感じられ、Bath のことを æt Baðum(Dative pural の形)と呼ぶようなことがおこなわれた。(中略)ドイツの Baden も本来は Dative plural である。


posted by 石崎 陽一 at 23:44 | Comment(2) | 語源の話 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
昔、地名のCanterburryで卒論を書いたことがあって、久しぶりにたまたまPCで検索をしていました。
このページの発信者を見て、さらにビックリ!
あの石崎さん!ラジオ講座のコラムのファンなんです!
しかも、私にとって懐かしいEkwallの本ではないですかぁ。思わずうれしいくてコメントを書かせていただいています。

ついでながら、私の恩師も渡部昇一先生の門下生であります。
Posted by パンダ at 2015年06月28日 16:16
パンダさま。コメントありがとうございます。Ekwall の辞典、内容はかなり専門的ですが、語学的(語源的)に興味深い地名が、山や河川名なども含め、収められていて、座右に置き、時に楽しんでおります。英文法道具箱もご愛顧に感謝いたします。引き続きよろしくお願いいたします。
Posted by 石崎 陽一 at 2015年07月07日 21:25
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