2013年05月06日

a few について(その1)


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CROWN PLUS(level 3)の第10課(p.144)に次の一節があります。(下線は現筆者による。)


The Semper Augustus ('Always Blessed') tulip, for example, has creamy-white petals, highlighted by bright red flares. Around 1625, the Amsterdam man who owned all the bulbs then available−just twelve bulbs−was offered 3,000 guilders for a single bulb. We can't say accurately how much 3,000 guilders would be in modern money, but it was a lot, perhaps about two hundred thousand U.S. dollars. When the famous painter Rembrandt painted his Night Watch a few years later, he was paid about half this amount. So was one tulip bulb worth two Night Watches? The owner of the bulb thought it was worth more. He refused to sell.


西洋美術史を繙けば、のちに『夜警』と名づけられる絵画の傑作をレンブラントが完成させたのは1642年のことですので、

下線部は1625年からおよそ17年後を指していることになります。

よって、ここは、a few years later を「十数年後」と訳出すべき箇所なのですね。

これは a few を「数〜」といった訳語で理解していると奇妙に思えますが、

江川泰一郎『英文法解説』(改訂三版;金子書房、1991年、p.109)を参照して記せば、

a few が具体的にどれくらいの数を表すかは、ある文脈において話者が考える「少数」だから、文脈を離れて一般的には決められない

のですから、ごく自然な用例と言うことができます。



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また、a few にまつわる話としては、他に、如上の英文中における a few years later のように、

複数形の名詞が後続しているにも関わらず、なぜ不定冠詞の a が付いているのか

という疑問があります。

この疑問に対しては、江川泰一郎『英文法解説』(初版;金子書房、1953年、p.106)が、次のような、簡にして要を得た解説を与えています。


A few の冠詞は一般の不定冠詞と趣を異にし、“some or about” の意味で、古代英語以来 approximate estimate を示すために数量を示す語の前に使われていたものの名残である。現在では、a few, a little, a great many など、わずかな例が残つているにすぎない。


なお、この解説は1964年の改訂新版、1991年(現行)の改訂三版からは削除されています。

古い版の重要性を示す一例と言えるでしょう。


(追記1)

a few が具体的にどれくらいの数を表すかについて、江川泰一郎『英文法解説』(改訂三版;金子書房、1991年、p.109)は

Only a few people are perfectly bilingual.
(2カ国語を完全に使える人はほんのわずかである)

ともなると、具体的な数字は不明というほかはない


と述べていて、適切な用例をもって語らしめるその手腕に唸らされます。


(追記2)

『英語語法大事典・第4集』(大修館書店、1995年、pp.204-6)には a few がいろいろな数に用いられた実例を盛り込み詳述がなされています。



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もっと何か重要な話もあろうに、何を好んでこんなゴミゴミした特殊な事を取り上げたのか?と思う人もあるでしょうが、語学というものはそんなものではありません。語学は要するに特殊な知識の集積で、個々の特殊な知識を除いた一般知識なんてものは、学力が進むにつれて、その馬鹿馬鹿しさはだんだんとわかって来ます。学力の最後の段階は、むしろ「個々の特殊な知識を如何に多く、且つ刻明に、且つ自信を以て蓄えているか」ということによって優劣が決するのだ、ということを銘記して勉強しましょう。

人生のありとあらゆる隅々、否、時とすると、ありもせずあらゆりもせぬ隅々まで、一応全部楊子の先でつつき廻すこと−これを称して語学と云うのです。


『関口存男生誕100周年記念著作集
ドイツ語学篇 10 中級講話 趣味のドイツ語』
(三修社、1994年、p.40)



過去なくして現代はあらず、現代の英語を明らかにしようとするには、しばしば過去の英語を説かなければならない。否、厳密にいうならば過去の英語から由来変遷の跡をたどらずに、現代英語の真相をは握しようとするのは無理である。

細江逸記『英文法汎論 新版』(篠崎書林、1971年、p.13)



posted by 石崎 陽一 at 09:25 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
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