2013年01月19日

【連載】現代標準英語における二重否定の使用回避を促した要因について(その6)



二重否定の使用回避に及ぼした文法家の影響に対する評価


クノレックは前回の記事で述べたように、内的な要因、つまり発話者の抑制によってその使用回避を説明している。一方で外的な要因、すなわち言語外の規制に関しては、調査結果から次のように述べている。

... die Grammatiker erst dann der doppelten Verneinung ihre Beachtung schenken, als sie in der Schriftsprache und zum allergrößen Teile, wenn auch noch nicht ganz, in der gebildeten Umgangssprache verschwunden war. Ihr Aussterben kann daher nicht auf das Eingreifen der Sprachmeister zurückgeführt werden.

……二重否定に文法家が注意を払うようになったのは、文章語において、そしてまた、仮にまだ完全にではなかったにせよ、大部分は教養人たちの話しことばにおいて消滅してからのことである。それ故、二重否定の消失は文法家の介入に帰することはできないのである。


女史によると、1711年にはグリーンウッド(James Greenwood, d.1737)が先駆けて二重否定に反対しているし、1750年にはグレィ(Z. Grey)がこの件に言及している。

また1755年に出たヂョンソン大博士(Dr. Samuel Johnson, 1709-84)の英語辞書ではまだ「あまり文法的ではない」(not very grammatically)としながらも二重否定が強調に使われることが認められているという。

そして1762年になってようやくラウスが「英語においては2つの否定語は互いに打ち消し合い、肯定と等価となる」(Two negatives in English destroy one another, or are equivalent to an Affermative.)と初めて明確に断じ、断固として排斥したことに言及している。

しかしながら、上述のようにこのときにはすでに消滅しつつあったのだから、それ故に、文法家の果たした役割は認められない、という見解を示しているのである。文法書に明示された規則の影響が二重否定の消滅に関わったことはありえない(kann ... nicht)との結論だ。

しかし、なるほどクノレックの指摘するように二重否定の使用に関して消滅へと向かう傾向が既に生じていたのだとしても、その消失にとどめを刺したのは、第1回の記事でも述べたように、はじめて規則に明文化して世に示したラウスであったという見方は全く成り立たないのであろうか。

文典出版当時の社会情勢をはじめとして全体に貫かれた執筆方針や、彼自身の社会的・宗教的地位が読者に与える影響力を勘案したとき、現筆者はこのような見通しを抱かざるを得ないのだ。

後続する各回の記事でそれぞれについて順次、考察していくことにする。


(追記1)

言語外の規制に関するクノレックの分析は Knorrek(p.31)より引いた。

(追記2)

文法家による二重否定の取り扱いの歴史に関する記述は Knorrek(Ibid.)による以下の記述に基づいている。

Der erste, der den Kampf gegen die doppelte Negation aufnahm, war Greenwood(1711) in seinem‘Essay towards a Practical English Grammar’, und dann ... Grey in seiner ‘Free and Familiar Epistle to W.W.’(1750). Johnson, der seine grammatischen Betrachtungen aus der Sprache von Sidney bis zu den Dichtern der Restauration schöpfte..., fügte in seinem Dictionary(1755) bei Neither hinzu:‘Sometimes at the end of a sentence it follows as a negative;and often, though not very grammatially, yet emotionally, after another negation’. Er belegt seine Behauptung mit einem Zitat aus Bacon und einem aus Locke. Eine ahnlich milde Bemerkung finden wir noch bei Nor: ‘two negatives are sometimes joined, but ill’(ein Beispiel aus Shakespeare). Lowth(1767)stellt bereits fest...:‘Two Negatives in English destroy one another, or are equivalent to an Affirmative’ und führt Sätze aus Chaucer, Shakespeare und Milton an als examples of the contrary.

(この項続く)



posted by 石崎 陽一 at 11:45 | Comment(0) | 連載 | 更新情報をチェックする
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