2012年12月16日

『データで読む 英米人名大百科』(南雲堂、1987年)


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ある日本人の名から、ある程度、その人の生まれた時代や世相を連想することができます。

名には流行があることを、私たちは経験的に知っているからです。

では、英米人の first name についてはどうでしょうか。

例えば、Edward はどんなイメージでしょう。

Barbara は?

こうした英米人の first name から連想するものは多くなさそうです。

レズリー・アラン・ダンクリング著・中村匡克訳『データで読む 英米人名大百科』(南雲堂、1987年)は、

英語を母語とする人々の first name が

「過去と現在においていかに使われたか」(p.11)

を統計的に処理することにより、first name が内包する時代的・文化的背景を解き明かそうとするものです。

スタンフォード大学をはじめ、119校の公的機関の協力を得て、現実に使用されている膨大な数の名前を収集、

その使用頻度を横軸に置き、歴史的・地理的要因を縦軸に置いて、その相関関係がさまざまな角度から調査・検討されています。


まず、first name の歴史的変遷の記述に先立ち、

姓名一般に関する社会学的・心理学的な側面から

first name の意義、姓(surname)、肩書き名(title)、中間名(middle name)、愛情名(love name)、あだ名(nickname)などについて述べられたのち、

Norman Conquest(1066年)が Name Conquest でもあったことが示されます。

ノルマン人の名前が急速に英語の名前に取って代わったのですね。

この頃は名前はまだ1つしか付けられていないのですが、中世の終わりになると、人口増加と相まって、2つ目の名前として姓(surname)が登場します。

supername という原義の通り、姓(surname)の大部分は first name から派生。

例えば Richard という名から実に110の姓が生まれ、John から95、Robert から90、William から65の姓が生じたのですが、

他方で、後年、姓から first name が生じるという場合も起こった。

それから、ある国で革命など顕著な出来事が起こると、そこから生じる first name も多くなるとして

清教徒革命や王政復古、名誉革命の生じた17世紀における first name について語られたり

18世紀以降は Betty や Nancy といった愛称(pet name)が独立した名前として女子に付けられるようになったと述べられたり。

ことほど左様にして、first name の歴史を跡づけながら、英語圏で、どの時代にどのような first name が用いられたかが実証的に示されるのです。

その中で、例えば、Mandi, Bobbi, Toni, Terri などの名前が流行するに至った次第なども興味深く語られています。

英米人の名前の在り方を吟味することにより、英米文化の一端に触れることができる。

本書は first name に関する情報、逸話が豊富に収録された好著です。


posted by 石崎 陽一 at 19:33 | Comment(0) | 本の紹介 | 更新情報をチェックする
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