2012年12月01日

collocation について(その1)


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何で読んだか定かではありませんが、以前、コピーライターの方が斬新な表現を入手するのになさっているある方法を紹介されていたことがありました。

それは、一方に形容詞だけを書いたカードの束を、もう一方に名詞だけを書いたカードの束を積んでおき、それぞれの束から1枚ずつ無作為に抜き出しては組み合わせを確かめる。

こうすることで、例えば、香水のキャッチコピーを考える際

「まぁるいむらさき」

のような、普通ではなかなか生み出せない言い回しを生み出すことができる。

そういった内容でした。


なるほど、「丸い」という語は「円い」とも書くように、通例

丸い月、地球は丸い、背中が丸い

など、円(球)の形をしている様子を形容するのに使われます。

よって、角が取れた感じも表し、

丸い感じの人柄、争いを丸く収める

などの言い方ができます。

ですから、カードを使ってランダムな組み合わせを生じさせない限り、頭で捻り出そうとしても、紫という色に丸いという形容詞が思い浮かぶことは難しいのでしょう。


語と語との間のこうした結びつきについて考える際には、上記のようなある種の共起制限のほかに、collocation という概念が有用です。

これも何で知ったか今となっては曖昧なのですが、山田和男氏がどこかで次のようにお書きになっていたのが印象的でした。

氏は日本語の将棋と碁を例におとりになり、

将棋の場合は「指す」、碁の場合は「打つ」という動詞を使うのが日本語の約束ごとである

といった式の、簡にして要を得たやり方で、collocation とは何たるかを述べておられたのです。

collocation を覚えることの重要性は、将棋を打ったり、碁を指したりしないため、というご説明もストンと胸に落ちました。

爾来、勝俣先生の英和活用大辞典をはじめ、木塚晴夫編『動詞+名詞 英語コロケーション辞典』(ジャパンタイムズ、1995年)、塚本倫久『プログレッシブ英語コロケーション辞典』(小学館、2012年)などを座右に置いています。


日本語では「見物する」「散歩する」「訪問する」のように、名詞に「する」をつけることによって、簡単に動詞が作れますが、英語の場合はどうでしょうか? 日本語の「する」にあたる do をつけて、「見物する」は do the sights が可能ですが、「散歩する」を do a walk、「訪問する」を do a visit とは言えません。それぞれ take[have]a walk、make[pay]a visit としなければなりません。このように、英語の動詞と名詞との間には特別な「相性」があるのです。


と同書(p.B)は述べていますが、

英語らしい英語を話したり書いたりするためには、ある語とある語の結びつきを正しく学んでいくことが不可欠なのですね。


(追記1)

本記事における「丸い」という語の定義と用例は『明解国語辞典 第六版』(三省堂、2005年、p.1413)に拠っています。


(追記2)

八木克正『斎藤さんの英和中辞典 − 響きあう日本語と英語を求めて』(岩波書店、2016年、p.16)では次のように区別しています。

コロケーションは習慣的な語の結合(例:A pig oinks./A horse neighs./A dog barks./A lion roars. など)、成句は単語の結合が本来の意味を保ちながら、新たな意味を発展させたもの(例:look into は「のぞき込む」、転じて「調べる」、Rumor has it that ...「うわさでは」など)、イディオムは単語の結合が固定化し、構成する語の本来の意味とは違う意味で使われるもの(例:spill the beans の「秘密をもらす」、kick the bucket の「死ぬ」など、習慣的に確立した意味で使われる)である。は、日常生活の戒め、教訓などを短文で表現したものである。斎藤の熟語はこれらすべてを含んでいる。


(追記3)

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posted by 石崎 陽一 at 00:05 | Comment(0) | 日々の授業 | 更新情報をチェックする
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