2012年09月15日

英語に残る12進法、20進法の痕跡


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英語の場合には13のところで10を表す数詞 -teen が現れますが、

加藤良作『数詞って何だろう』(ダイヤモンド社、1996年、p.100)によりますと、

これは南西アジアのメソポタミア北部を中心とした古代帝国アッシリア(Assyria)の12進法(duodecimal system)に由来するという説があるとのこと。

つまり、11, 12と13以上の構成に差があるのは、12進法の痕跡というわけです。

日本ではほぼ完全な10進法がとられているため、10歳以上を「10代」と呼びますが、12進法の名残りを強くとどめる英語圏では、13歳以上が12歳以下と区別され teenager と呼ばれる由。

12進法と言えば、英国では 12 pence が 1 shilling だった時代がありましたし、12個で1ダース、12ダースで1グロスという単位は今でも使われています。1年も12か月です。


また、英語には局部的に20進法(vigesimal system)の構成の数詞も含まれています。

すなわち、特に20を表す語として俗に score が用いられ、40, 60 をそれぞれ two score, three score ということがあります。(このとき score は複数形にしません。)


(追記1)

『上掲書』(p.101)によると、完成された12進法の言語にアイヌ語が挙げられるそうです。片手の五本指から5進法(quinary system)、両手で10進法(decimal system)、それに両足指が加わって20進法が生まれたということは想像に難くありません。

(追記2)

片手で1から12まで数えるやり方について、内林政夫『数の民族誌』(八坂書房、1999年、pp.33-4)より引きます。

右手を開いて、親指だけを折って伏せる。たっている4本指をながめてみると、各指は2つの関節によって3区分されている。いままであまり気にしなかったことである。1本の指に3区分あるから4本で12となる。かんたん。それをかぞえるには、まず親指をうごかして小指のさきにふれる。1である。小指を下へさがって2、小指のつけ根が3、薬指の頭にふれて4というぐあいに順に親指でさわってゆくと、人さし指の頭が10、そのつけ根にきて12でおわる。この作業が1回おわったとき、左手のにぎりこぶしから1本指をたてる。右手の作業を2回、3回とくりかえすたびに左手の指をたててゆくと、左手の指がぜんぶ開いたところで12×5(5×12)すなわち六十進法につながってゆく。

なお、60進法は、円周を360度とし、1日を24時間、1時間が60分、そして1分を60秒と分けるなどの諸点において見られます。

(追記3)

英語の12の語源は「指で10まで数えて2つ残っている」(two left ➜ twelve)であり、11の語源は「指で10まで数えて1つ残っている」で、日本語の「与一」という名前の語源かとされる「余一」と比較されよう、と寺澤芳雄 編『英語語源辞典(縮刷版)』(研究社、1999年、pp.421, 1474)は述べています。

(追記4)

イギリス通貨が十進法に踏み切った点に関して、泉井久之助『印欧語における数の現象』(大修館書店、1978年、pp.215-6)より引用します。

近代生活における一般イギリス人にとって、不規則で古い十二進法と二十進法の混用が意識における混乱を招きやすく、遂に溷濁して来たことが響いている。のみならずそれは非国際的である。けれども10は数理的にいって、はんぱな数値である。現に円周を十等分することは、幾何学的に、なかなかむずかしい。けれども六等分することは容易である。その円の半径をもって円周を区切っていけば、正確に六等分になる。これは容易に十二等分できる。それは方位の天測にも便利である。その他、2, 3, 4, 6で割れる点からも12の方がヨリ合目的的な数にちがいない。しかし昔から人間の手足に10本の指があるかぎり、〈10〉は「人間的に自然な」数である。暦日、歴月、時(じ)・分(ふん)に残る十二進法と六十進法の合理的な根拠はいかにも深い。しかしこれさえ、いつかは改革が強行される日が来ないとは限らない。現に秒以下の計り方は十進法である。

(追記5)

藤原保明『言葉をさかのぼる−歴史に閉ざされた英語と日本語の世界−』(開拓社、2010年、p.154)より備忘のため書き留めておきます。

13(thirteen)以降の -teen は「加算(足し算)の10」を表し、13は「10足す3」という意味である。一方、twenty, thirty, forty などの -ty は「乗法(掛け算)の10」を表し、「2掛ける10」。「3掛ける10」などとなる。それゆえ、日本語の「に・じゅう」、「さん・じゅう」などの場合の「じゅう」と同じことである。日本語では加算の場合には「じゅう」を前に置き、乗法の場合には後に置くが、英語では加算と乗法の「じゅう」を語形で区別し、その代わり、加算の -teen も乗法の -ty も後に置く。

(追記6)

河合茂『英文法概論 復刻版』(明倫出版、1988年、p.297)に記述があります。

(追記7)

1週間は7日間ですから7進法、鉛筆1ダースは12本、1年は12ヶ月ですから12進法、1日は24時間ですから24進法、1分は60秒、1時間は60分ですから60進法が用いられています。

(追記8)

オーストラリアのヨーク岬とパプアニューギニアの間にあるとレス海峡諸島の原住民は、両手だけでなく、肘や肩、胸や足首、膝、腰など、全身を使って33まで数える手段を有しているそうです。

中世ヨーロッパにおいては、両手の指を使って9999まで数え上げる方法があったと言います。

森田真生『数学する身体』(新潮社、2015年)に限られた身体で少しでも多くの数を捉えようとする上のような事例が挙げられていて注意を引かれました。


posted by 石崎 陽一 at 12:15 | Comment(2) | 興味をもったこと | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
参考になりました
Posted by 岡崎 at 2013年12月11日 09:28
岡崎様。はじめまして。コメント深謝です。お役に立てたようで何よりでございます。今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
Posted by 石崎 陽一 at 2013年12月13日 00:51
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