2012年08月25日

文法の定着について考える


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今からおよそ50年前、すでに、小川芳男先生は『これからの英語教育』(国土社、1965年)において、次のように提言されておられます。


文法は単なる理論を教えても無意味であって、文法の具体的な実践としての作文がなくては文法は自分のものにならない。作文を書くときは文法の力をかりて書くと共に、文法を習ったときには必ずその実践として作文を書いてみることである。(p.146)


以前「文法のゴールは作文に」という記事にも書いたことですが、
石崎は

英語はもとより、独語と古英語、羅語の文法の学習を作文で行い、
作文が文法の定着に有益であることを身を以て実感しています。

そして、例文(お気に入りの言い回し)を徹底的に暗記することで力をつけました。

したがいまして、小川先生のおっしゃる


結局英語の構文を覚えることが、すなわち文法だという考え方を持つことである。(p.162)

もっとわれわれの日常生活に使えるような、身近な例文を持ってこなくてはならぬ。そういう例文を絶えず暗記することによってその文を覚える。文を覚えることは同時に文法を消化することである。そういった生きた日常に使える例文を与えることが、文法を教える場合に必要である。(p.162)


という意見に同意します。

ですから、『ユメブン1』(アルク、2012年)の執筆に際しては、如上の提案・意見を具体化するものを強くイメージした次第です。


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『ユメブン1』で扱われている文法事項は精選され、学習項目数自体は絞られているのですが、

それぞれの学習項目ごとに豊富な例文が配されています。

網羅性よりも使用頻度を重視し、重要項目を反復練習させたいという思いから、

同じポイントを例文を変えて繰り返し学習できるようになっているわけです。

『ユメブン1』では穴埋めから入り、語形変化、整序、誤文訂正、部分作文、ディクテーション(音声の書取)というプロセスを経てゴールの作文に無理なくつながっていきます。

この過程でルールとして頭で知っているレベルから瞬時に正しく引き出して使いこなせる技術として身につけることができるよう設計されています。

さらに、『ユメブン』シリーズの例文は、具体的なイメージを思い浮かべられるような例文に仕上がっていますので、

如上のステップを踏んでいくことにより、文法の定着と平行して単語力も増強できる仕組みになっているのです。

ですから、『ユメブン1』には全20ユニットで約 2,000 例文が収録されていますから、

ひと通り学習を済ませた学習者の方には、

「裏メニュー」として

UNIT 1 から UNIT 20 までの全例文を日本語から英語に再生できるまで仕上げる

ことを提案しています。

『ユメブン』を骨の髄までしゃぶり尽くし、「骨太」の基礎力を養っていただきたいと思います(^-^)


学習者の側としては、技術としての英語はいくら説明をきいても力はつかないということである。そして教授者の側としては、十分説明すれば、自分で納得がゆくから生徒も納得したと錯覚を起こし易いということである。これと同じことは学習者の側にもいえることである。詳しい説明をきくとわかったような気がするのである。(p.214)


小川先生のこのご指摘もまた、けだし、至言です。


英文法は発信と理解のためのツール。英語で正しく読み、書き、話し、聞くための技術です。

技術を頭で理解しているだけでは、その目的を果たすことはできませんよね。

水泳の技術などを思い浮かべていただければ直ちに了解されることと思います。

ですから、その学習で大切なのは「使って覚える」ことです。

実際に使えば知識が活性化し、印象が強く忘れにくくなるのです。


快晴の西東京から石崎がお送りしました。

それでは、また。


(追記)

若林俊輔・伊藤克敏・森住衛・北市陽一 共編『英語教育指導ライブラリーC 学校英語再考−文法・語法編−』(三省堂、1984年、pp.4-5)より備忘のため書き留めておきます。

何も本格的に比較文化、英語史、対照言語学の論を展開する必要はないでしょうが、ある程度学習者の知的好奇心を満足させるような説明をしてやることが、ことばの仕組みやそれを話す人々の考え方に興味を持たせるきっかけになるのではないでしょうか。従って学習文法はある程度説明文法的な要素を持つ必要があると思われます。英語の規則をただ頭に詰め込むことによって英語をうまく操る機械人間をつくることが英語教育の目標であるかのように考えられています。そういったいわば英語機械人間は、機械的な試験問題は上手に解くことができるでしょうが、真に生きたことばとしての英語を味わうことはできないでしょう。学ぶ対象がどういう性質のものかをしっかり認識した上で、それを言語活動を通して習慣化するという、いわゆる認知−習慣理論(cognitive-habit theory)こそ正しい学習過程でありましょう。


posted by 石崎 陽一 at 11:28 | Comment(0) | 最近読んだ本からの気づき | 更新情報をチェックする
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