2012年07月27日

q の次に u がくる歴史的理由


P4244928.JPG


『特製版 英文法シリーズ 第一集』(研究社、1959年、p.105)より備忘のために書き留めておきます。(漢字は新字体に改めてあります。)


q:ノルマン人の征服後、アングロ・ノルマン写字生によって輸入されたものであるが、輸入されたのは q と言うより、qu と言う方が適当であろう。即ち、q は u と結びつき、qu という形で(ラテン語、フランス語よりの借用語に用いられたのはもちろん)、OE の cw にとって代わったのである。たとえば OE の cwic は ME で quik(=alive)となる。この改革はまったく不必要なものであったのであるが、フランス系写字生が、自分に親しい綴字法に従ったのは無理もないことである。現代英語の綴り字で、非常に稀な場合を除くかぎり、q の次には必ず u が来るという習慣は、ここに由来する。


(追記1)

ME quik は現代英語の quicksilver(水銀)や成句 the quick and the dead(生者と死者)の中にこの語の原義が残っています。なるほど、quicksilver は「生きている銀」が原義なのですね。実感が湧きます。あと、quicksand(流砂), quick wine(発泡酒)にも見えますね。また、昔は quickstock と言えば livestock(家畜類)でした。なお、爪の下の感覚の鋭いところは quick(生身)であり、cut or stung to the quick は「人を深く傷つける」ことを指しています。

(追記2)

q は必ず qu という綴りで現れるのですが、語末では(grotesque のように)-que で発音は[-k]となります。

(追記3)

上記引用における略語に関して『大修館英語学事典』(大修館書店、1983年)や『研究社英語学辞典』(研究社、1940年)、『新英文法辞典』(三省堂、1965年)などを参照しつつ簡単なコメントを以下に付しておきます。

OE:古英語。Old Englishの略。文献に伝わる最古の英語は7世紀末のもので、その頃からノルマン征服(the Norman Conquest, 1066年)の後1100年頃までの英語を指します。

ME:中英語。Middle Englishの略。1100年頃から1500年頃までの英語を指します。

(追記4)

河合茂『英文法概論 復刻版』(明倫出版、1988年)の附録(p.40)に記述があります。


posted by 石崎 陽一 at 22:50 | Comment(0) | アルファベットの歴史 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
ページトップへ戻る