澄むか濁るかについて調べていて、興味深い指摘に出会いました。
「日本醫事新報」(3011号、p.122)という雑誌に掲載された、
岡島光治先生(現・藤田保健衛生大学名誉教授)の随想です。
以下に転載させていただきます。
Sieboldは百何十年前かに長崎へ来、本格的な西洋医学をわが国へはじめてもたらした、日本の医学の大先輩である。同時に帰国後、わが国の文物を欧州へ紹介した大人文学者でもある。(中略)ドイツ語の教科書に従えば濁るのが本当であるが、Sieboldに関しては濁らない書き方がしてある書物が多い。
勤務先の大先輩・斉藤信教授(ドイツ語担当、米子医専や名古屋市大の教授を歴任)は、Sieboldの研究で高名であるので、ある時、「濁る」か「濁らない」かを伺ってみた。即座に教示があり、彼はオランダ東インド会社から派遣された医官であるが生地はドイツ南部のビュルツブルグ。その地方の方言的発音として、彼自身は濁らずに名乗っていた(より厳密には「スィーボルト」)。その証拠がいくつも残っている由。そう言えば、電機会社のSiemensも、戦前に本社がベルリンであった頃は、「ジーメンス」と濁っていたようであるが、戦後、ミュンヘン(南独バイエルン州の首府)に本拠地が移ってからは、ドイツ人が「シーメンス」と濁らずに発音している。
(追記)
ちなみに、「日本醫事新報」はたいていの病院がとっている、
いわばお医者さんの業界誌だそうです。
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