2011年01月19日

2011年センター試験・英語(筆記)に関する雑感


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朝からすごい冷え込みでしたね。しかし出がけに車のフロントガラスは凍ってませんでした。寒いだけでなく乾燥が続いています。


受験シーズンも本格化。こちらも風邪、インフルエンザなど十分に気をつけたいと思います。


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今回はセンター試験・英語(筆記)を実際に解いてみて感じたことを何点か記します。


まず1点目。第1問、発音・強勢のセクションについてです。


強音節と弱音節の母音を比べさせたり、couchやmonarchなど必ずしも頻度の高くない単語も散見されたりと、今回はどうやらずいぶんと志の低い方々が作問を担当されたと感じます。


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問2

今回一番大きな疑問を感じたのがこの小問でした。

その理由を書きます。

現代英語において、強勢の来る音節に生じる母音字は、原則として、2つずつの読み方が対応します。

短音と長音です。

「短い読み方」(短音)は概略ローマ字読みに近い音、「長い読み方」(長音)はその文字の名前を発音します。それゆえ、「アルファベット読み」とか「文字読み」と呼ばれることもあります。

BとCに関しては〈a〉に第一強勢が置かれていますので、原則として、[æ]という短音と[ei]という長音の2通りの可能性がありますが、ここはmanage, passionの2語とも〈a〉を[æ]と読むことを知っていなければなりません。

この点に異論はないでしょう。

B、Cが消え、問題は@とAです。

現代英語において、強勢の置かれない音節(弱音節)では、母音は弱化して曖昧母音か弱母音の[i],[u]となる(か脱落する)のでした。

この知識は2009年のセンター試験でも問われています。

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過去問でこの問題を解き、現代英語において、

強勢の置かれない音節(弱音節)では、母音は弱化して曖昧母音か弱母音の[i],[u]となる(か脱落する)ことが多い

という知識を学習した受験生は、今回大いに当惑したことと思います。

@のformatにおける〈a〉にもAのinstanceにおける〈a〉にも第1強勢がこないからです。

(いわゆる「予想問題集」の何冊かにもこの知識を用いて解く問題が収録されていましたのでこの知識をもっていた人は少なからずいたはずです。)


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結局私はどうアプローチしたかと言えば、

Aのinstanceについては「名詞語尾“-ance”の〈a〉が[æ]になることはないよな…」という勘に基づいて一応正答はしましたが、センターの問題作成部会の方々がこの小問を通じて受験生に伝えたいメッセージをつかめないでいます。

元同僚で音声学を専攻され『英語発音指導マニュアル』(北星堂、2009年)の執筆者のお一人でもあり、現在は大学で教鞭を執っておられる方も同様の疑問と感想を抱かれているそうです。

現代英語において、強勢の置かれない音節(弱音節)では、母音は弱化して曖昧母音か弱母音の[i],[u]となる(か脱落する)ことが多い

という知識を受験生が絶対視することに対する警告なのでしょうか。

音声学の知識があり、発音・アクセント問題について関心が高い者でもテスティングポイントをはっきりつかめない問題を受験生に出題するのはいかがなものかと思います。


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もう一題。


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問1

Aのcouch「ソファー、診療台」ですが、受験生にとっては馴染みの薄い単語だと思います。

実際、「現時点では最も信頼性の高い語彙リスト」とされる「JACET8000」では、couchはレベル6、「英語専門外の大学生やビジネスパーソン」が目指すべき語彙の範疇に入っています。

英検で言うと準1級レベルに相当します。

かつて、ソファーに座ってだらだらとテレビばかり見ている人のことを指して「カウチポテト族」(a couch potato)と言っていましたが、今の受験生でこの表現を知っている人は多くないでしょう。

そして、直前のboastの残像が尾を引いてcoachと間違えた受験生が結構いたと思われます。

なぜこのような低頻度のものを出題するのか疑問に思いました。

ちなみに、『JACAT8000英単語』(桐原書店、2005年、p.9)にはレベル6以降の学習者に対して次のようなアドバイスが書かれています。

リーディングでは、英語の新聞や雑誌などの時事英語に慣れ親しむようにしてください。(中略)さらに、インターネット上の海外の新聞にも積極的に挑戦してください。リスニングでは、映画や海外のニュースを継続して聞くようにしてください。

これがこの問1を通じての問題作成部会のメッセージなのでしょうか?

ちなみに、この問1、問2とも、筆記試験の平均点が9割弱の集団ですら3割から4割の正答率だったとのデータがあるようです。


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今日はあともう一つ。

今回、第6問ではパラグラフをグループ分けする問題がなくなり、各パラグラフの主旨を示した英文を本文の順序に並べかえる問題が出題されました。


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上智大学などでは昔から出題されてきた形式です。

ただ、この形式だと本文の流れが完全に把握できていなくても、選択肢を見る目を養うことで正解できてしまうのですね。

選択肢を見ますと、最後が(f)で揃っています。

出だしは(b)か(d)かなのでとりあえず(b)で始まるか検討します。

いきなり“rodents”の生存の理由を述べても困るので(d)始まりが決定。BとCに絞ります。

次にBとCの並び方を眺めると(c)→(e)か(e)→(c)かを調べれば決定できることがわかります。(c)と(e)に対応するであろう箇所を本文中でチェックし(c)→(e)はあり得ないのでCに決まり。

文章をまとまりとしてとらえ、その内容を把握する力を見る問題ですが、この方法で解くと実は断片的理解のまま結構短時間で正解を出すことができてしまいます。

あと、今回のような情報提供型のパッセージですと、当然ながら、どうしても常識や教養といった英語力以前の部分が読解の成否に関わってしまいますよね。

まぁ実際の読書に際してはそうした情報なども援用しながら当然読み進めていくわけですが、こと英語力を測定する試験であれば、以前のような、そうした内容スキーマに影響されにくい物語や小説の読解を求める出題に戻した方がよいと思います。

(追記1)

母音字の読み方に関する記述に際しては成田圭市『英語の綴りと発音 「混沌」へのアプローチ』(三恵社、2009年、pp.69ff.)を参照しました。なお、弱母音の[i]という表記についてですが、このブログの仕様上、使用できる発音記号が非常に限られていますので便宜的に[i]を使用しています。

(追記2)

第1問の問2に関しては某予備校の「解説講義」なる映像授業を見ますと何やら怪しげな「規則」が紹介されていますが、是非の即断は控えたいと思います。


posted by 石崎 陽一 at 03:57 | Comment(4) | 今日思った疑問 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。

センター試験の第1問、
私も解きながら同様の疑問を持ちました。

メーリスのほうに少し書かせていただきましたが、
単語の難度が上がり、
受験生が入試対策として覚える単語、というより
英語の「日常語」が多く出題されていたように
思います。

それにしてもformatのaの発音や、
couch(実は私はこれをcoachと見間違えました)、
monarchなどはちょっと…という気がしますね。

本校でも「第1問で落としたぁ〜」という
生徒が少なくなかったです。

出題者に意図を訊いてみたいところですね。
Posted by kapoon at 2011年01月19日 08:01
kapoonさま。いつもありがとうございます。第1問の問1、問2は平均点調整のために設けられた問なのではと勘ぐりたくなります(-_-) 実に、作成部会の報告書の発表が待たれますよね。 
Posted by 石崎 陽一 at 2011年01月19日 21:07
いつも栄養たっぷりな記事を有難うございます!

発音問題について、
丁寧、且つ明解に解説してくださり、
パクパクと読みながら、
モリモリと栄養が満ちていくのを感じました。
couchは、確かに若い学生にとって馴染みないでしょうね。
個人的には、ostrichに?ってなりました。
そして、ostrich eggを掲載する、
石崎シェフのレパートリーに脱帽です!

また美味しい記事を心待ちにしております♪



Posted by jiantai at 2011年01月19日 23:14
jiantaiさま。コメント多謝です。また貴ブログで当ブログをご紹介いただき、こちらもありがとうございます。あれはロンドンのハロッズで撮ったものです。食品売り場でパシャパシャカメラ撮影なんて、きっと周りには奇特な東洋人に写ったでしょうね^^;
Posted by 石崎 陽一 at 2011年01月22日 22:40
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