2010年11月28日

精読の醍醐味を堪能して(その4)


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Dursley夫妻はその住んでいる所から判断するに、大金持ちではないがそこそこのお金持ちのようです。


夫妻の苗字と社会的ステータスの紹介の後に、この夫妻の性格が描かれます。

Mr and Mrs Dursley, of number four, Privet Drive, were proud to say that they were perfectly normal, thank you very much.

Dursley夫妻は“were proud to say”「胸を張って次のように言った」とあって、“they were perfectly normal, thank you very much”と続きます。


この“they”は直接話法なら“we are”となるところですから、ここは、私たちは“perfectly normal, thank you very much”と「胸を張って言った」という場面ということになります。


“perfectly normal, thank you very much”という語句の真意はいかがなものでしょうか、と久保田先生は我々に問いかけます。


ふつう、自分たちのことを胸を張って人に「まとも」と言うでしょうか。


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恐らく、言わないでしょう。まともかどうかは人が判断することであって自分から口にするのは恥ずかしい。


だから、もし胸を張って私はまともですと言う人がいたら、たぶんその人はまともでないでしょう。


これはお酒を呑んだ人が「オレは酔ってない」と言っていたらその人は相当酔っていて、「酔ったかな」と言う人は酔っていないのと同じではないか。


久保田先生はユーモアを交えながら話を進められます。


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さらに、normalという形容詞の前にperfectlyという副詞がついていることにも要注意です。


英和辞典には掲載されていませんが、COBUILDによれば、

You can use perfectly to emphasize an adjective or adverb, especially when you think the person you are talking to might doubt what you are saying.
とあります。


つまり、相手がこちらの言うことに疑念を抱いているらしいと感じられるときにnormalやgoodなどプラスの評価を表す形容詞を強調してそれを打ち消そうとする。


疑念を持っている相手に対して反論をするときの言い方なのですね。日本語で言えば「どこから見ても、正真正銘、〜ですよ」というニュアンスです。


ですから、ここは「私たちのこと、隣近所の皆さん方normalと思っていないでしょうが、とんでもない、私たちはいたってまともです、そんなことありませんよ」くらいの意味で、単純にnormalというのを強調しているわけではないことに注意が必要です。


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このperfectlyという副詞とある意味係り結びになっているのが“thank you very much”というフレーズです。


これは「ありがとうございます」ではありません。COBUILDには

You use thank you or thank you very much in order to say firmly that you do not want someone's help or to tell them that you do not like the way thay they are behaving towards you.
とあり、“thank you very much”という表現が不快感の表明に使われることがあると書かれています。


その根拠はmuchという副詞にあります。


周知の通り、muchはふつう否定文で使い肯定文では使いません。したがって、ときどき肯定文で出てきたとき要注意です。


本当は否定文で出てくるのにそれが肯定文で出てきたらどうやって解釈するか、と言えば、やはり否定的な意味で解釈する。


たとえ形が肯定であっても否定でしか使わない表現が出ているわけなので否定で解釈する、というわけです。


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“Thank you very much.”


海外旅行でバスや電車に乗ったとき、お年寄りに席を譲る場面で、こちらが善意で席を譲ったときにお年寄りの中にはこう言う方がいらっしゃる。


日本語で言うと「余計なことをするな」という感じでしょうか。muchが出ているので否定的なニュアンスで受け取れます。


ことほどさように、“perfectly normal, thank you very much”とDursley夫妻が口にしたとて決して相手に感謝しているわけではなく、

むしろ「私たちに変なことを言うな」「失礼なこと言わないでください、私たちはまともなんですから」くらいの含みを感じとらねばなりません。


ですからこの言い方は相手に対するある種の敵対的な物言いであり、Dursley夫妻の性格(の悪さ)を端的に描写している表現と言えます。


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“Thank you very much.”はこのように相手に嫌悪感をもっているときの表現にも使われますし、なかなか日本語にしにくいフレーズです。


例えば飛行機の機内アナウンスの最後に“Thank you very much.”とあれば「失礼いたしました」くらいのニュアンスでしょうし、いずれにしてもことばとしては注意しなければいけない表現です。


またお礼を言う場合も注意が必要です。


ネーティブスピーカーはそう頻繁に“Thank you very much.”と口にしません。では本当に感謝している場合、どこに否定的なニュアンスがあるかというと、「まさかそこまでしていただけるとは思いませんでした」という感じなのですね。


ですから“Thank you very much.”は自分の期待していた以上のことを相手がしてくれたときに使う表現であり、店員さんがお釣りをくれたくらいでは言わないのです。


もし言ったとすると、「へぇこのお店ではお釣りくれるんですか」という含みが伝わることになります。


posted by 石崎 陽一 at 10:38 | Comment(0) | 最近参加したセミナーからの気づき | 更新情報をチェックする
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