2010年11月15日

精読の醍醐味を堪能して(その1)


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昨日は千葉大学言語教育センター主催の公開講座に参加。


住まいから東京を横断、2時間ほどかかりますのでちょっとした遠足気分で出かけました。


天気も良かったですしね(^-^)


千葉大に着いてみると、キャンパス全体が模擬試験の受験会場になっていたようで、休日にもかかわらずにぎわいを見せてました。


早めに着きましたので構内を少し散歩。紅葉が見頃でしたよ。


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この講座は同センター教授の久保田正人先生と一緒に英文学の名作を原文で読むという趣旨のもので、

4作品の名場面を精読し新訳を与えるという試みでしたが、

知識をどのように作品理解に活かすかを目の当たりにし、久々に知的興奮を禁じ得ませんでした(^-^)


久しぶりに味読の醍醐味を堪能させていただきました。


久保田先生は安井稔先生の学統の方であることを後で知り、大いに納得をした次第です。


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名作と言われる作品はやはり出だしで読者を引きつけるということで

まずは世界64ヶ国語に翻訳され、聖書、毛沢東語録についで世界第3位の売り上げを誇る『ハリーポッター』シリーズから

第1巻Harry Potter and the Philosopher's Stoneの第1章、本当の出だし部分を精読しました。


次はその最初のパラグラフです。

Harry Potter and the Philosopher's Stone

CHAPTER ONE

THE BOY WHO LIVED

Mr and Mrs Dursley, of number four, Privet Drive, were proud to say that they were perfectly normal, thank you very much. They were the last people you'd expect to be involved in anything strange or mysterious, because they just didn't hold with such nonsense.

精読を進めるにあたり、久保田先生のご指摘で私の関心を引いた点をほんの数点、書き留めておきたいと思います。


1.Harry Potter and the Philosopher's Stoneの邦訳は『ハリーポッターと賢者の石』だが、これでよいか?


2.“THE BOY WHO LIVED”というチャプター・タイトルは何を含意するか? 動詞liveの語法からアプローチできないか?


3.本文の書き出しに“Mr and Mrs Dursley, of number four, Privet Drive”とある。“number four, Privet Drive”という番地から何を連想するか?


4.“perfectly normal, thank you very much”という語句の真意は?


5.“the last people you'd expect to be involved in anything strange or mysterious”という部分における“the last〜”を教える際どう説明するか?


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中でも上の1の観点については非常に興味深かったです。久保田先生のご説明をまとめると次のようになります。


『ハリーポッター』シリーズのタイトルはこの1巻から第7巻まで首尾一貫して“A and B”の形になっていますが、

タイトルに“A and B”とあるときは単純な足し算ではないのですね。


タイトルが“A and B”の形式をしている場合、andの左側、すなわちAが中心です。


Aがテーマを表し、Bはそのテーマをどういう視点から見るかを表します。


ですから、タイトルが“A and B”の形式をしている場合、「Bを通してみたA」「BをめぐるA」というような意味合いで解釈すべきです。


よって、Harry Potter and the Philosopher's Stoneというタイトルの意味するところは

「賢者の石をめぐるハリーポッターの物語」ということになります。
(「賢者の石」とは「不老不死の薬」を表すイディオムです。)


ですから、D.H.LawrenceのSons and LoversやJane AustenのPride and Prejudiceの邦題はそれぞれ『息子と恋人』『高慢と偏見』となっていますが、これでは表層的な理解に留まってしまうことになります。


…万事、ハスキーボイスの名調子に乗ってこんな具合に精読作業が進んでいきます。


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あと、5の観点については、私は生徒に教える際、いつも次のように説明していました。


「うそをつかなそうな人」を英語で“the last person to tell a lie”と表現する場合があります。これはうそをつきそうな人を一人ずつ思い浮かべていったときに「Aくんでしょ、Bくんでしょ、Cさんでしょ…」と指折り数えていって最後に残る人っていうのは一番うそをつかなそうな人ですね。ですから“the last person to tell a lie”という表現には否定語は含まれていませんが「うそをつかなそうな人」の意味になります。


基本的には私のこの説明と変わりはないのですが、昨日の久保田先生のご示唆はlastとfinalとを対比して教えるというものでした。


なるほど、finalは足し算でlastは引き算か…。


finalは「完成一歩手前」のプラスイメージなのに対し、lastはカウントダウンが進んで「なくなる一歩手前」というマイナスイメージを持つ。


ここから前述の私の説明に結びつく。


ある語のイメージを探るのにその語の類義語や反意語を視野に入れて検討するとよりイメージが明確になりわかりやすいですね。


この他、ルイス・キャロル、エミリー・ブロンテ、シェイクスピアの作品の名場面を同様に味読していきました。


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文学は言語の芸術ですので、言語を正しく理解しないと文学を味わうことはできません。


如上の『ハリーポッター』の例を通じて私たち参加者は「原文をきちんと読むとここまでわかる」ということを体感させていただくことができました。


実に大きな収穫ありの講座でした。


posted by 石崎 陽一 at 22:36 | Comment(2) | 最近参加したセミナーからの気づき | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
4.のThank you very muchの下りの講釈が非常に気になります(笑)。博多にはない知的な刺激を,このブログを通して戴いております。非常に感謝しております。お忙しいでしょうが,読者も楽しみにしております(笑)。宜敷お願い致します。
Posted by 田中 十督 at 2010年11月16日 07:42
十督さん

お忙しいなかいつもありがとうございます^^
これを励みにまたがんばります。
2〜4については項目ごとに順次まとめていこうと思います。
いましばらくお待ちいただければと思います。
Posted by 石崎 陽一 at 2010年11月16日 22:23
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