2017年09月12日

場面に合った構文の選択を


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いわゆる There is 構文は、聞き手に見えているものを指して使うことはできません。


例を挙げますと、木の上の鳥が、話し手には見え、聞き手には見えていないとき、話し手は


There is a bird in the tree.


と言うことができます。


しかし、会話する2人が鳥かごの鳥を見ながら話すとき、


There is a bird in the cage.


とは言えません。


たとえば、こうしたことを知らずに、聴衆に見えている図表を前に There is 構文を使ったらどうなるでしょうか。

発表の内容を理解してもらう以前に、英語のミスで信用を失う可能性すらあるのですね。


指導者としては、場面に合った構文の選択ができるよう、学習者に伝えていく心がけが大切だと思われます。


(追記1)

関連記事はこちら。

提示の there 構文


(追記2)

Google Books Ngram Viewer を用いることで、数百年前から今日までの書籍に現れる単語(2語以上ならそのフレーズ)の流行り廃りを時系列の折れ線グラフで見ることができます。

(関連記事はこちらをクリック。)

bird in the tree / on the tree の2つの言い方を Google Books Ngram Viewer にかけてみた結果が次の画面です。


bird_in_the_tree_bird_vs_bird_on_the_tree.JPG
(クリックすると拡大します。)



posted by 石崎 陽一 at 19:43 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年09月10日

ラテン語の名詞 gressus(=walk, step)にまつわる英語


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(retrieved from:https://goo.gl/Lt3vyk



医療の「進歩」「前進」などという場合の

「進歩」「前進」

を、英語では progress と言います。


この progress という語は

pro-(前)+ gress(進(み)、歩(み))

という造りでできています。

この「歩(み)、進(み)」を表す語幹 gress はラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))に由来します。


ラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))にまつわる語としては、他にも

ad-(〜に向かって)> ag- + gress

から

aggress(侵出する、侵略する、攻撃する)

という語が、


con-(共に)+ gress

から

congress([揃って行く]大会議、学術会議)

という語が、


dis-(離れて)> di- + gress

から

digress(横道にそれる)

という語が、

それぞれ生まれています。


今回は英語の名詞 walk, step にあたるラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))にまつわる英単語を紹介しました。


(追記)

上記の aggress(攻撃する)から

aggressive(攻撃的な)

が生まれています。


posted by 石崎 陽一 at 12:24 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

ラテン語の動詞 gradī(=to walk, step)にまつわる英語(その1)


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(retrieved from:https://goo.gl/JxCqVZ



前回の記事では英語の名詞 walk, step にあたるラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))にまつわる英単語を紹介しました。

今回は英語の動詞 to walk, step にあたるラテン語の動詞 gradī にまつわる英単語を紹介します。

grade(段(階)、(等)級、階級、学年、地位、程度、度(合)、傾斜度、勾配)

一歩一歩進む、段階を踏む、その「段階、程度」が原義です。

gradual(段階的な、(傾斜の)緩やかな)

grade(段階)+ -al(形容詞語尾)という造りです。

なお、副詞形 gradually は文字通り step by step、つまり「段々に、徐々に」の意。


gradual.png
(retrieved from:https://goo.gl/Ydxye9

gradation(グラデーション;段階的な変化)


絵画などで色や明るさなどを段階的に変化させること(技法)を「グラデーション」と呼んでいます。

ちなみに、gradation は

連続的な変化や推移、発展の「段階」

の意や、

序列や格差、強度などの「等級、度合」

の意、また、

温度計などの「目盛り」

の意も有しています。


gradation.png
(retrieved from:https://goo.gl/rgmvKV

graduate(卒業する)

学年を踏んで進んで行って「卒業する」の意。


graduation.png
(retrieved from:https://goo.gl/DwZEmL


なお、前述のように、基部である grade には「傾斜度」の意があります。関連して「傾斜度を測る」の原義から「目盛りを付ける」の意も出ており、その名詞形が graduator(分度器)です。

この線で graduation と言えば「(付けられた)目盛り」の意も表します。


centigrade(百分度の、摂氏の)

centi-(百分の一)+grade(度)という造り。「水の氷点と沸点の間を100等分した尺度の」の意です。

degrade(階級が下がる、退化する)

de-(下に)+grade(進む)という造りです。

retrograde(後退する)

retro-(後方)+grade(進む)という造りです。

degree(段階、(等)級、程度、[角度・温度などの]度)

grade の変形 gree に de-(下に)が付いた造りです。

よって、step down が原義で、古くは「階段の一段」を意味していました。

上記のように degree はいろいろな意味に用いられますが、

いずれも一つの段階とか階級を示す意味で、柔道や剣道の段などもみな degree です。


posted by 石崎 陽一 at 11:13 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

ラテン語の動詞 gradī(=to walk, step)、にまつわる英語(その2)


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(retrieved from:https://goo.gl/iBf9zU



前回は英語の動詞 to walk, step にあたるラテン語の動詞 gradī にまつわる英単語をいくつか紹介しましたが、
今回は科学英語、なかでも生物学の世界から、digitigrade と plantigrade の二つを紹介します。


digitigrade は犬、猫、馬など、かかとをつけずに足指で歩く「指行性の、趾行性の」の意。

趾行は「しこう」と読みます。

digiti- は「指、足指」(finger, toe)を表すラテン語 digitus の派生形。


plantigrade は熊、人など、地面に足の裏の全面をつけて歩く「蹠行性の;偏平足の」の意。

蹠行は「しょこう」と読みます。

planti- は「足の裏」(sole)を表すラテン語 planta の派生形。


posted by 石崎 陽一 at 11:04 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

英語とドイツ語の関係がわかる一例


Berg.png
(retrieved from:https://goo.gl/Re5DCe


「山」は英語では mountain ですが、ドイツ語では Berg と言います。

ところが、「氷」になると iceberg となり、

英語とドイツ語の関係が明らかになります。



iceberg.jpg
(retrieved from:https://goo.gl/tPpeY8


すなわち、ドイツ語でも Eisberg なのでして、

iceberg という現代英語の berg は hill(丘), barrow(塚)の意で、

ドイツ語の一方言だった時代の古い英語が残存しているのですね。



barrow.jpg
(retrieved from:https://goo.gl/CPjPzy


なお、「山」を表すドイツ語 Berg は「城」を表すドイツ語 Burg とも同根で、

ともに「高い」を表す印欧語根 *bhergh-(高い)に遡るとされます。

本エントリーに掲げた複数枚の写真から聳え立つイメージの共通性が看取されましたでしょうか。



Burg.jpg
(retrieved from:https://goo.gl/SgBJv1


(追記1)

参考文献はこちら。

● 『英語語源辞典(縮刷版)』(研究社、1999年、p.683)
● 下宮忠雄『ドイツ語語源小辞典』(同学社、1993年、pp.14-5)


(追記2)

関連記事はこちら。

英語の語彙を構成する本来語と借用語の比率について


posted by 石崎 陽一 at 10:23 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2017年09月09日

英語の時制は二つか?


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時間関係を表す動詞の活用形を時制と呼んでいます。


英語には

現在時制(現在形=非過去形)



過去時制(過去形)

の二つしかなく、

未来時制なるものはない。


英語にあるのは、「未来時制」ではなく、

代用的・迂言的な「未来表現」

である

とされるのが一般的です。



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一方、大塚高信『英文法論考 − 批判と實踐』(研究社、1952年、pp.76-7)は

文法上の形態を屈折語尾に限ることは間違いで、

will, shall は形式語と見て、英語に未来時制があると考えることも可能である

という趣旨のことを述べています。


イェスペルセン(Otto Jespersen, 1860-1943)は have や be に過去分詞、現在分詞のついた完了形、進行形を(名称はともかくとして)認めているのだから、

同じ筆法で will, shall のついた動詞形を未来時制と呼んで悪い理由はないとの旨を記しています。


以上、備忘のため書き留めておきます。


posted by 石崎 陽一 at 22:38 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

Instant Online Puzzle-Maker


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ワードサーチパズルやクロスワードパズルの作成が簡単にできるウェブサイトをご紹介します。

同僚の先生から教えていただきました。

Instant Online Puzzle-Maker


posted by 石崎 陽一 at 11:55 | Comment(0) | 愛用の(学習用)サイト | 更新情報をチェックする

2017年08月27日

田尻悟郎先生の語順一覧表のこと


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2003年、島嶼の学校に勤めていたとき、

NHK教育テレビの「わくわく授業 わたしの教え方」という番組で

田尻悟郎先生の授業が取り上げられている回を見ました。


当時は習熟度や興味関心に大きな幅のある生徒たちを担当しており、

参考になる点がたくさん含まれていました。


語順一覧表もそのひとつです。


番組を記録した『わくわく授業 − わたしの教え方@ 田尻悟郎先生の英語@』(2008年) というDVDの一場面より紹介します。


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(クリックすると拡大します)


この語順表をプラケースに入れ、下敷き代わりにしばらく各自で折に触れ使わせてみましたところ、

英語で表現するときはいずれかの語順にあてはめてみよう、というシンプルな仕掛けが、

習熟度別クラス編成で最も習熟度の高くない普通科の生徒たち、そして、英語に対する興味関心の高いとは言えない農林家政科の生徒たちにも効果てきめんなのでした。

その効果がどれだけ印象的だったかは今でも鮮明に思い出せることからもわかります。

思うに「できる!」というプチ達成感を積み重ねていきやすかったのでしょう。

知りたい、できるようになりたいという気持ちは、当然ですが、どの生徒も有しているのだということを改めて実感したのでした。



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なお、この語順表は、のちに、『自己表現お助けブック ― 英語がわかる!』(教育出版)に収録されました(初版2008年、 pp.5-7;改訂版2009年、pp.4-5)。

2011年にDHCより出版された『英文法 これが最後のやり直し!』にも採録されています(p.39)。

また、英語指導の部屋【田尻悟郎のWebsite Workshop】というウェブサイトでは

4大語順表と各語順表
語順表中学用
語順表高校用
語順表英語版

がダウンロードできます。


(追記1)

2003年に行われた「英語教育 “6WayStreet” 1回限定ライブ at 筑駒」を収録したDVDがあります。

(現在は販売を終了しているようです。)

その中で、ご発表の最後、田尻先生は

すべて人からもらったものを自分なりにアレンジして自分の目の前の生徒に合わせた授業を心がけています。皆さんも自分なりに咀嚼されて、自分の生徒さんなりの授業に作り替えてください(45分9秒〜45分20秒)

と仰っています。

わたしもそれ以来、このことを心がけて今に至ります。

今さらながら田尻先生から受けている影響も大きいと思い起こした次第です。


(追記2)

神戸学校 − 神戸発未来へ「経験と言葉の贈り物」と題するウェブサイトに田尻先生のご講演が文字化されて掲載されています。

こんな先生に出会いたかった! 〜豊かな人生を送るために子どもたちに伝えること〜


posted by 石崎 陽一 at 10:36 | Comment(0) | 日々の授業 | 更新情報をチェックする

2017年08月24日

神話と自然哲学の関係


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来週から始まる夏期講習会で1989年に実施された京都大学(法B)の入学試験問題の英文を扱います。

出典は François Jacob, The Possible and the Actual(1982)の Myth and Science と題する章の一節です。

予習の一環に神話と自然哲学の関係について以下にまとめました。

自然哲学は神話の批判として生まれた、というのが肝です。

主な参考書に次の2冊を使用しました。

● R.G.コリングウッド著/平林康之・大沼忠弘 訳『自然の観念』(みすず書房、1974年)

● 伊東俊太郎『文明における科学』(勁草書房、1976年)



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人間は生まれながらにして真理を知りたいという根源的な欲求を持っています。

「この世界とは何なのか」
「世界はどのように生じたのか」

「人間とは何なのか」
「人間はどのように生きるべきなのか」


こうした問いに対する答えを知りたいという欲求に最初に応えたのが、神話です。


なかでも有名な神話のひとつがギリシャ神話です。

ゼウスという最高神とそれ以外の神々の働きと結びつきによって、世界の在り方や人間の生き方が説明されました。


このように、

物事は神々の働きによってもたらされるという考え方(神話的世界観)

が古代ギリシャの人々を支配していました。


ところが、そんな中、そうした神話による説明では満足できない人たちが現れます。


それが哲学者です。


(なお、「哲学」というと何やら難しそうですが、とにかく真理を知りたいということで、自らに問い、答えを求めて考え続けるその過程、プロセスのことを哲学と呼んでいます。)


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今からおよそ2500年前、ヨーロッパで最初の哲学者たちが登場しました。

紀元前6世紀頃(日本では縄文時代の頃)、最初に出てきた哲学者たちは自然を考察しました。

初期の哲学者たちは自然を考察する自然哲学者だったのですね。

彼らは既存の神話をもちださず、つまり、神(々)を前提とせず、

自らの観察と思索によって、この世界を読み解こうとしました。

神に代わる万物の根源は何か

を古代ギリシャの自然哲学者たちは考えたわけです。


(追記)

ちなみに、この「根源」を古代ギリシャの自然哲学ではアルケー(ἀρχή:arkhḗ)と呼んでいました。

現代英語では archaeology(考古学)や archaic(初期の;古代の;古風な、旧式の;古語の、懐古的な)という語に残っています。

「根源」➜「初期」➜「古」という連想が働いたのでしょう。


posted by 石崎 陽一 at 12:28 | Comment(0) | 日々の授業 | 更新情報をチェックする

2017年08月08日

強調効果を生み出す − 語順の転倒


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日本語は、「が」や「を」といった助詞があるおかげで、単語の配列はかなり自由です。

例えば、

「その熊がその男性を襲ったんだ」



「襲ったんだよ、その男性を、その熊が」

などと語順を変えて言うことが可能です。


一方、英語には助詞がありません。

正しく意味を伝えるためには、単語の配列(語順)が大切になります。

The bear attacked the man.

という文を

Attacked the man the bear.

と言っても意味をなしませんし、

The man attacked the bear.

とすると、意味が全く逆になってしまいます。

「その熊が(the bear)」「襲った(attacked)」のように、英語では

主語の次に述語動詞を置く

のが普通の語順であり、この

普通の語順を変えるのは、決まった場合に限られる

のですね。



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私たちになじみ深いのは、疑問文をつくるときでしょう。


The bus was late. → Was the bus late?

The bus came late. → Did the bus come late?



こんなふうに、普通の語順が疑問文の語順になることを

語順の転倒

と呼んでいますが、実は、この語順の転倒は疑問文をつくるとき以外にも起こります。

次の例をご覧ください。


(1)I never dreamed of that.

(2)Never did I dream of that.


どちらも「今までそのことは夢にも思わなかった」という意味を表しています。

しかし、(2)は、never という否定語で文が切り出されているため、続く部分に語順の転倒が生じています

(2)の下線部が疑問文でもないのに疑問文の語順になっているのは、それが理由です。

別の例を見てみましょう。

「not only A but(also)B」(AだけでなくBも)という表現が使われています。


(3)The bus was late as usual. It not only came late, but today it broke down.

(4)The bus was late as usual. Not only did it come late, but today it broke down.


双方とも「バスはいつもどおり遅れた。遅れて来ただけでなく、今日は故障もしたんだよ」という内容を伝えています。

ところが、(4)では、(3)の文中にある not only という否定語句が文頭に出され、それに伴い、語順が転倒しているのがわかります。

このように、疑問文ではないのに語順の転倒が生じている場合、混乱しやすく、意味をとりにくくなるので、注意が必要です。

しかし、そもそも、なぜ、正常な語順をあえて変えるのでしょうか?



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それは、(3)〜(4)の例の場合、not only で文を始め、後続する部分に(疑問文でもないのに)語順の転倒を起こすことで、

not が否定するのは only なのだ

ということを明確にするためです。

そうやって

どの部分が否定の対象になっているか

をはっきりと示し、聞き手の注意を引きつけているわけです。

結果として、

文全体に強調効果を生み出す

ことにつながるのですね。


なお、「not only A but(also)B」(AだけでなくBも)という表現は、話し手がAよりもBのほうに重きを置いているときに用いる言い方です。

Aには話し手が「言うまでもないこと」として挙げる例が、Bに話し手が言わんとする内容がそれぞれ盛り込まれることまで押さえておくと、英文における情報の軽重や流れを的確にとらえることができるでしょう。


それでは、また。


(追記)

「語順の転倒」は「倒置」とも呼ばれます。


posted by 石崎 陽一 at 12:20 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする
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