2017年11月05日

冗語的な as の用法について


IMG_1134.jpg



2013年に行われた大阪医科大学の入学試験(英語)に次の一節があります。


Right from an early age, even before they can talk, people find that helping others is inherently rewarding, and they learn to be sensitive to who is helpful and who is not. Regions of the brain activated by helping are the same as those activated when people process other pleasurable rewards.

Anyone who assumes that babies are just little egoists who enter the world needing to be socialized so that they can learn to care about others is overlooking other tendencies as species-typical. Humans are born predisposed to care how they relate to others.



読者の方から下線部の構造についてご質問をいただきました。

以下に私なりの説明を記したいと思います。


続きを読む
posted by 石崎 陽一 at 15:07 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年11月03日

サンスクリット語と日本語、英語の意外な関係


sdqh1194.jpg


サンスクリット語とは?


サンスクリット語は古代インドで用いられた文章語です。

古代文明の発祥地として高い文化を享受していたインドは、殷文明を誇った中国の民族と昔から通商などを通じての交流がありました。

仏教もまたインドから中国に伝えられたものです。

したがって、中国語にはサンスクリット語の外来語が豊富にみられます。

日本語とサンスクリット語の関係は?


サンスクリット語は、日本では梵語と呼ばれることが多く、大体は中国を経由して日本語に入っています。

仏教関係の言葉が圧倒的に多いです。

日本語に入ったサンスクリット語の例は?


ここでは主として今でもよく使われている梵語起源の日本語を挙げましょう。

難読と思われる語には読み仮名を添えます。


閼伽、阿闍梨(アジャリ)、痘痕(アバタ)、阿弥陀、韋駄天、優曇華(ウドンゲ)、盂蘭盆、閻魔、和尚、伽藍、瓦、袈裟、金毘羅(コンピラ)、三昧、支那、釈迦、娑婆、舎利、刹那、禅、卒塔婆、荼毘(ダビ)、陀羅尼(ダラニ)、達磨、塔、奈落、涅槃(ネハン)、鉢、般若、仏陀、菩薩、菩提、曼荼羅、夜叉(ヤシャ)などなど


中には日常用語として使われているものもあり、仏教文化がどれだけ国民の各層にしみこんだかを物語っているものと考えられます。

サンスクリット語と現代英語との関係は?


実は、寺や僧に金品を寄付する人を指す「檀那、旦那」もサンスクリット語に由来すると言います。

「檀那、旦那」という日本語は、もとを正せば、「布施」を表す dāna(原義は「与えること」)から来ているとのこと。

ところが、中国や日本では、「檀那、旦那」というと、「布施を与える人、施主、仏教の後援者」を指す言葉になりました。

(ちなみに、「布施をする人」を意味するサンスクリット語は dāna-pati です。pati は「主」を表します。)

そして、この dāna(与えること)はさらに「与える」を表す語根 dā にさかのぼります。

この語根 dā からは現代英語の donate(寄付する、寄贈する), donor(臓器提供者)などが生まれています。

公共の機関などに金品を「与える」のを donate と、臓器を「与える」人を donor と、英語では呼び慣わすに至っているわけですね。

また、文法用語の dative(与格)や、綴りは少し異なりますが「寄付する」の意の endow [indau] も同根です。


(追記1)

横井忠男『外来語と外国語』(現代ジャーナリズム出版会、1973年、p.10)より引いておきます。

梵語すなわちサンスクリットは、東洋系の言葉のように思われがちですが、実施兄は、ギリシャ語・ラテン語や大部分の近代ヨーロッパ語と同じく、印欧語族の一派に属し、比較言語学上非常に重要な位置を占めています。


(追記2)

新村出『外来語の話』(教育出版、1976年、p.67)より引いておきます。

漢訳仏経を経て日本に入ってきた印度の古語が非常に多いことは、今さら言う必要もないくらいで、その数量は、おびただしきに上り、その性質も、極めて重要な価値を持っているものが多いのである。(中略)梵語の「梵」というのも、これは印度全般の名称のように使われてきているが、実は「婆羅門」すなわち Brāhman を音訳したものであって、印度の婆羅門種族のみを指したものであった。それを「梵天」などと称して尊称としていたから、本来はそういう狭い意味であったものが、広く古代印度の敬称のように発展してしまったのである。


(追記3)

その他、本記事を執筆するのに以下の文献を参照しました。

中村元 編『仏教語源散策』
(東書選書、1977年、pp.193-4)

田中建彦『外来語とは何か』
(鳥影社、2002年、pp.162-4)

新村出『外来語の話』
(教育出版、1976年、pp.72-3)

楳垣実『日本外来語の研究』
(研究社、1963年、pp.42, 45)


(追記4)

関連記事はこちら。

東西の類似


posted by 石崎 陽一 at 12:26 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

The time will come soon when か The time will soon come when か


The_time_will_soon_come_when.PNG
(クリックすると拡大します)


posted by 石崎 陽一 at 00:17 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年09月12日

場面に合った構文の選択を


sdqh1040.jpg



いわゆる There is 構文は、聞き手に見えているものを指して使うことはできません。


例を挙げますと、木の上の鳥が、話し手には見え、聞き手には見えていないとき、話し手は


There is a bird in the tree.


と言うことができます。


しかし、会話する2人が鳥かごの鳥を見ながら話すとき、


There is a bird in the cage.


とは言えません。


たとえば、こうしたことを知らずに、聴衆に見えている図表を前に There is 構文を使ったらどうなるでしょうか。

発表の内容を理解してもらう以前に、英語のミスで信用を失う可能性すらあるのですね。


指導者としては、場面に合った構文の選択ができるよう、学習者に伝えていく心がけが大切だと思われます。


(追記1)

関連記事はこちら。

提示の there 構文


(追記2)

Google Books Ngram Viewer を用いることで、数百年前から今日までの書籍に現れる単語(2語以上ならそのフレーズ)の流行り廃りを時系列の折れ線グラフで見ることができます。

(関連記事はこちらをクリック。)

bird in the tree / on the tree の2つの言い方を Google Books Ngram Viewer にかけてみた結果が次の画面です。


bird_in_the_tree_bird_vs_bird_on_the_tree.JPG
(クリックすると拡大します。)



posted by 石崎 陽一 at 19:43 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

2017年09月10日

ラテン語の名詞 gressus(=walk, step)にまつわる英語


progress.png
(retrieved from:https://goo.gl/Lt3vyk



医療の「進歩」「前進」などという場合の

「進歩」「前進」

を、英語では progress と言います。


この progress という語は

pro-(前)+ gress(進(み)、歩(み))

という造りでできています。

この「歩(み)、進(み)」を表す語幹 gress はラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))に由来します。


ラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))にまつわる語としては、他にも

ad-(〜に向かって)> ag- + gress

から

aggress(侵出する、侵略する、攻撃する)

という語が、


con-(共に)+ gress

から

congress([揃って行く]大会議、学術会議)

という語が、


dis-(離れて)> di- + gress

から

digress(横道にそれる)

という語が、

それぞれ生まれています。


今回は英語の名詞 walk, step にあたるラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))にまつわる英単語を紹介しました。


(追記)

上記の aggress(攻撃する)から

aggressive(攻撃的な)

が生まれています。


posted by 石崎 陽一 at 12:24 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

ラテン語の動詞 gradī(=to walk, step)にまつわる英語(その1)


grade.jpg
(retrieved from:https://goo.gl/JxCqVZ



前回の記事では英語の名詞 walk, step にあたるラテン語の名詞 gressus(歩(み)、進(み))にまつわる英単語を紹介しました。

今回は英語の動詞 to walk, step にあたるラテン語の動詞 gradī にまつわる英単語を紹介します。

grade(段(階)、(等)級、階級、学年、地位、程度、度(合)、傾斜度、勾配)

一歩一歩進む、段階を踏む、その「段階、程度」が原義です。

gradual(段階的な、(傾斜の)緩やかな)

grade(段階)+ -al(形容詞語尾)という造りです。

なお、副詞形 gradually は文字通り step by step、つまり「段々に、徐々に」の意。


gradual.png
(retrieved from:https://goo.gl/Ydxye9

gradation(グラデーション;段階的な変化)


絵画などで色や明るさなどを段階的に変化させること(技法)を「グラデーション」と呼んでいます。

ちなみに、gradation は

連続的な変化や推移、発展の「段階」

の意や、

序列や格差、強度などの「等級、度合」

の意、また、

温度計などの「目盛り」

の意も有しています。


gradation.png
(retrieved from:https://goo.gl/rgmvKV

graduate(卒業する)

学年を踏んで進んで行って「卒業する」の意。


graduation.png
(retrieved from:https://goo.gl/DwZEmL


なお、前述のように、基部である grade には「傾斜度」の意があります。関連して「傾斜度を測る」の原義から「目盛りを付ける」の意も出ており、その名詞形が graduator(分度器)です。

この線で graduation と言えば「(付けられた)目盛り」の意も表します。


centigrade(百分度の、摂氏の)

centi-(百分の一)+grade(度)という造り。「水の氷点と沸点の間を100等分した尺度の」の意です。

degrade(階級が下がる、退化する)

de-(下に)+grade(進む)という造りです。

retrograde(後退する)

retro-(後方)+grade(進む)という造りです。

degree(段階、(等)級、程度、[角度・温度などの]度)

grade の変形 gree に de-(下に)が付いた造りです。

よって、step down が原義で、古くは「階段の一段」を意味していました。

上記のように degree はいろいろな意味に用いられますが、

いずれも一つの段階とか階級を示す意味で、柔道や剣道の段などもみな degree です。


posted by 石崎 陽一 at 11:13 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

ラテン語の動詞 gradī(=to walk, step)、にまつわる英語(その2)


digitigrade_plantigrade.gif
(retrieved from:https://goo.gl/iBf9zU



前回は英語の動詞 to walk, step にあたるラテン語の動詞 gradī にまつわる英単語をいくつか紹介しましたが、
今回は科学英語、なかでも生物学の世界から、digitigrade と plantigrade の二つを紹介します。


digitigrade は犬、猫、馬など、かかとをつけずに足指で歩く「指行性の、趾行性の」の意。

趾行は「しこう」と読みます。

digiti- は「指、足指」(finger, toe)を表すラテン語 digitus の派生形。


plantigrade は熊、人など、地面に足の裏の全面をつけて歩く「蹠行性の;偏平足の」の意。

蹠行は「しょこう」と読みます。

planti- は「足の裏」(sole)を表すラテン語 planta の派生形。


posted by 石崎 陽一 at 11:04 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

英語とドイツ語の関係がわかる一例


Berg.png
(retrieved from:https://goo.gl/Re5DCe


「山」は英語では mountain ですが、ドイツ語では Berg と言います。

ところが、「氷」になると iceberg となり、

英語とドイツ語の関係が明らかになります。



iceberg.jpg
(retrieved from:https://goo.gl/tPpeY8


すなわち、ドイツ語でも Eisberg なのでして、

iceberg という現代英語の berg は hill(丘), barrow(塚)の意で、

ドイツ語の一方言だった時代の古い英語が残存しているのですね。



barrow.jpg
(retrieved from:https://goo.gl/CPjPzy


なお、「山」を表すドイツ語 Berg は「城」を表すドイツ語 Burg とも同根で、

ともに「高い」を表す印欧語根 *bhergh-(高い)に遡るとされます。

本エントリーに掲げた複数枚の写真から聳え立つイメージの共通性が看取されましたでしょうか。



Burg.jpg
(retrieved from:https://goo.gl/SgBJv1


(追記1)

参考文献はこちら。

● 『英語語源辞典(縮刷版)』(研究社、1999年、p.683)
● 下宮忠雄『ドイツ語語源小辞典』(同学社、1993年、pp.14-5)


(追記2)

関連記事はこちら。

英語の語彙を構成する本来語と借用語の比率について


posted by 石崎 陽一 at 10:23 | Comment(0) | 語源の話 | 更新情報をチェックする

2017年09月09日

英語の時制は二つか?


sdqh0688.jpg



時間関係を表す動詞の活用形を時制と呼んでいます。


英語には

現在時制(現在形=非過去形)



過去時制(過去形)

の二つしかなく、

未来時制なるものはない。


英語にあるのは、「未来時制」ではなく、

代用的・迂言的な「未来表現」

である

とされるのが一般的です。



xt2a6113.jpg



一方、大塚高信『英文法論考 − 批判と實踐』(研究社、1952年、pp.76-7)は

文法上の形態を屈折語尾に限ることは間違いで、

will, shall は形式語と見て、英語に未来時制があると考えることも可能である

という趣旨のことを述べています。


イェスペルセン(Otto Jespersen, 1860-1943)は have や be に過去分詞、現在分詞のついた完了形、進行形を(名称はともかくとして)認めているのだから、

同じ筆法で will, shall のついた動詞形を未来時制と呼んで悪い理由はないとの旨を記しています。


以上、備忘のため書き留めておきます。


posted by 石崎 陽一 at 22:38 | Comment(0) | 文法・語法ノート | 更新情報をチェックする

Instant Online Puzzle-Maker


IMG_1098.jpg



ワードサーチパズルやクロスワードパズルの作成が簡単にできるウェブサイトをご紹介します。

同僚の先生から教えていただきました。

Instant Online Puzzle-Maker


posted by 石崎 陽一 at 11:55 | Comment(0) | 愛用の(学習用)サイト | 更新情報をチェックする
ページトップへ戻る